YER’s エリュウの だからソリあげて、その後むき狂う vol5

Eyuu Sasaki

1.
僕のひいおばあちゃん タヨは、もの凄く長生きをして100を10近く超えた所で、その生を終えた。80歳になって初めて海外旅行に行くなど活動的な人だった。小学生だった僕は会うと「江戸時代生まれの人と話をした事があるか?」という質問をぶつけるのが好きだった。江戸時代が1603年―1868年であるから、今から思えば当然なのだが、彼女は決まって「ある」と力強く頷いて、何かを思い出すように虚空を見つめていた。
その後に続く言葉はあまり聞かれなかったのだけれど、ある時だけ、その虚空に向けられた視線をゆっくりTVに移し、はっと気づいたように画面を指さしながら「これは、あんたの父さんか?」と聞いてきた。指さす方を見ると、そこには「X」の5名が映っていた。「BLUE BLOOD」を出した頃のXだったと思う。5名のうち誰を言っているのかよく分からないが、100も生きると非常に標準的な中年の男も、「My face is covered with blood」と歌う妖艶な男も大差なくなるのだろう。

「ちゃうよ(違うよ)」と僕は答えた。

タヨは「ほうか(そうか)」と頷く。

おそらく僕が、「X」の誰かや、もしくは「X」総体を父親だと答えても、
「ほうか(そうか)」と頷いていただろうと思う。だって、そんな事は全く大差ないのだ。

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