なんかフェードアウト感もなく、いきなりスパっと夏が終わってびっくりしてます。例年だと9月いっぱいはわりと暑かったはずなのに、こうなるとちょっとさみしいですね(やたら雨多いし)。
相変わらず仕事は忙しいんですが、秋中盤には落ち着くだろう…が見えてきたのと、さすがにこれは取材したい案件があったりします。まぁ落ち着かない可能性もあるっちゃあるんですが。
というわけでいってみましょう。
■MADBALL『NOT YOUR KINGDOM』

ニューヨーク・ハードコア代表格バンドのひとつ、MADBALLの10作目。8年ぶりにして、長らくベーシストを務めたホヤが脱退し現体制となって初のリリースでもあります。
普遍のMADBALL節がきいたアルバムですね。ほんのりメタリックな硬質のリフと、手数は多くないけどタイトなリズム、スピーカーからツバが飛んできそうなフレディ・クリシエンの声と、やるべきこと、期待されていることが全部詰まっています。ただ作曲における中心人物だったホヤ不在のせいか、若干バランスが変わったような感じも。フレディによる「これまでで最も多様なアルバム」という言葉の通り、そこかしこに挑戦的な要素が見られます。冒頭こそこれぞMADBALLな硬質のグルーブを繰り出しているものの、2曲目でいきなりブラストビートを叩きこんできたかと思えば、3曲目はジャジーなインタールードと、なかなか驚かせてくれる仕立てになっています。もともと緩急の付け方がうまいバンドでしたが、箸休めでバラエティの豊かさを出しつつ、それでいて時代に流されるようなことがないのはさすが。フレディが指揮を取ればちゃんとMADABALLになるという、本質はなにも変わっていないことをしっかりアピールしたアルバムだと思います。
結成40周年が見えてきましたが、先日のSICK OF IT ALLのルーの訃報のこともあり、まだまだ頑張ってほしいところ。こういうバンドがいつまで気を吐けるかが、後々の基準になると思うので。
■CANCER BATS『GIVE ME DIRT』

カナダのハードコア・バンドの8作目。前作はギタリスト脱退を受けて3人体制で制作、その後新ギタリストが加入したので、現在のラインナップになって初めてのアルバムでもあります。
2006年デビューという時代背景もあってか、メタルコアやポストハードコア方面との共演が多く、紹介される際もその流れということが多かったんですが、実際は後期PANTERAやCORROSION OF CONFORMITYあたりの影響が強いんですよね。ほかにもBAT SABBATH名義でBLACK SABBATHのトリビュートをしたりと、同年代の他バンドよりもサザン~ブルース要素への解像度が高いのも特徴だと思います。EVERY TIME I DIEからカオティックさを抜いた感じとも言えるかも。
粘度が高く泥臭いグルーブを、ハードコア・パンク由来の機動力で繰り出す音楽性はデビュー時から一貫していて、今回もさすがの仕上がり。しかもCONVERGEのカート・バロウ(g)がエンジニアを担当していることもあってか、過去のアルバムと比べても、音が明らかにクリアかつ生々しくなっています。また豪快で野蛮というか、いかにも腕っぷしが強そう音ながら、悪そうな空気があんまりないのもポイント。生真面目さというか、なんかいい人ぽさが隠せてないんですよね。
とにかく死ぬほどツアーを重ねてきただけあって、ライヴの実力は相当なものだし、日本にもサマソニ含め何度か来ているんですが、やっぱり日本だと土っぽいグルーブの下地がないのか、なかなか広がらないんですよね。本来なら同郷のCOMEBACK KIDとかと並び称されてもいいくらいなのに。というわけで、確実に聴いてみてほしいバンド筆頭です。ぜひ。
■THE SMASHING PUMPKINS TRIBUTE『SENDING HEARTS TO ALL MY DEARIES』

スマパンのトリビュートアルバム。これまでも何枚かトリビュートアルバムがリリースされたことはありますが、今回はビリー・コーガン(vo,g)が自ら監修しているとのこと。3曲が被っているのがちょっと気になります(曲自体はいっぱいあるのに)が、まぁ本人らがいいならいいでしょう。
15組のアーティストが参加しているなか、知っているのは3組くらいしかいないんですが、スマパン、特に解散前が好きな自分としては十分に楽しめる内容ですね。特に驚くというか、ピタっとはまっているのが、TAME IMPALAの“Hummer”でしょう。ディストーションを一切排除し、かわりに多幸感と浮遊感を増幅したサイケデリックなアレンジが見事。ほかにもTHE MIDNIGHTやバーンズ・コートニー、アリス・グラス等大胆な独自解釈を加えたカバーが多く、メタル方面から唯一の参加バンドBETWEEN THE BURIED AND MEにいたっては、ブラストビートまでぶち込んでくる始末。それでもリスペクトがちゃんと伝わってくるし、とにかく原曲の強さと、改めてスマパンの個性とアクの強さ、懐の深さがよくわかる内容になっています。
スマパンは今年、初期作のプロデュースを担当したブッチ・ヴィグと久しぶりに新曲をレコーディングしたそう。こういう刺激を受けて、また次の展望が見えるといいですね…というか、これに新曲を入れてもよかったのでは。
■JUTES『CHIN UP, BEAUTIFUL』

カナダのソングライターによる(おそらく)6枚目のアルバム。エモラップから登場しつつ、オルタナ~ニューメタルに接近してきたアーティストで、2004年の前々作は「ヒップホップ方面からのDEFTONES解釈」を提示していてかなりよかったんですよね。取り上げられなかったですが、前作はそこからの脱却を図ろうとしているように見えました。
で今回。基本的にはここ2作の流れを汲んだ、ニューメタルやオルタナメタルと呼ばれる2000年代スタイルが主になっていますが、以前ほどDEFTONESはしていないです(12曲目は怒られそうなくらいDEFTONESですが)。音をより整理しつつ、少しだけヒップホップへの揺り戻しも感じられる曲は、BLINDSPOTTやPLEYMOあたりの、ニューメタルのムーブメント後期に頭角を現したバンドたちを思い出させるような手触りです。前々作でも思いましたが、いい意味でバンドサウンドにこだわり過ぎていないこともあってか、使う楽器や音に制約がないし、曲に必要な要素の選択もうまいんですよね。ポップさの塩梅が絶妙な歌メロも、少し線の細い声と合っているだけでなく、ニューメタルの次に盛り上がったポストハードコア等が好きな人にも受け入れられそう。トータルで隙がないアルバムを3年連続で出してくる制作意欲には恐れ入ります。
今回もさすがですが、このJUTES、検索してもあんまり情報が出てこないんですよね。年齢と、なぜか結婚相手の話題くらい。もうちょっとバックグラウンドが知りたいんですけど。
<LINK>
MADBALL:https://www.instagram.com/madballnyc/
CANCER BATS:https://www.cancerbats.com/
THE SMASHING PUMPKINS:https://x.com/SmashingPumpkin
JUTES:https://jutesmusic.com/

