本多スーサイド(VIVIAN BOYS)× TSUNEGLAM SAM(YOUNG PARISIAN)対談!

VIVIAN BOYS YOUNG PARISIAN

「ヤングパリジャンはアートにいかないのはなぜ?」

H : さっき思ったんだけど、プラスチックス好きなのはわかるけど、プラスチックスってのはインテリがやってるハイブロウなバンドでしょ? はっきりいってアートバンドで「大衆にはわかるまい」っていうバンドじゃん。大衆蔑視的なバンドというか。でも、ヤングパリジャンはそっちには完全にいかないじゃん。そうなんないのはなんでなの?
T : うーーーーん

YOUNG PARISIAN写真:小野由希子

H : でも、プラスチックスよりやや大衆的な要素のある80’sの……例えば、ちわきまゆみとかそういう要素は出すでしょ。それはねらってるとこなの?
T : いや、ねらってはないですね
H : ああいうプラスチックス的なアートの世界には絶対にいかないよね
T : まずそこまでアーティスティックな人間でもインテリでもないってのもあるし、でも、憧れはありますけどね。それは音楽本体よりも外側で包み込む時に使ってるつもりです
H : プラスティックスとかヒカシューってさ、中学生にはわかんないでしょ? でも、ヤングパリジャンは中学生にも理解出来る要素を出す。そこはそういう要素もなきゃいけないってことを考えてやってんのかなと
T : うーん……そこはやっぱりプラスチックス好きうんぬん以前にT.Rexなんじゃないですかね
H : あ、そっか
T : いくらプラスチックスは好きつっても、音楽の根幹としては絶対的にT.Rexとかゲイリー・グリッターの方が影響をうけてるんで。ティラノザウルス・レックスの頃は違うかもしれないけど、マーク・ボランは大衆蔑視じゃないでしょ? ポップスターだし
H : そうだね
T : あれは子供が聴いてもわかるもので、マーク・ボランって晩年になればなるほど歌詞がシンプルになってって子供が歌ってもおかしくないものになっていくじゃないですか。坂本慎太郎さんもそうですけど、そういうものに憧れますよね。バブルガミーなものも含め。でも、それだけじゃ満足できないから、楽曲だけじゃなくてセンス的な部分での大衆蔑視はあるのかもしれません。「どうせわかる人いないだろう」みたいな。例えば以前AAから出たシングルとかその最たるもんですよ。ただね、普段聴いてる音楽はビートルズやボウイ……全く大衆的なもんですね。話はちょっと違うけど、私が忌み嫌ってるモノはなにかというと「メジャー的なモノ」なんですよ
H : でも、メジャーなことは好きでしょ?
T : そう、ボウイもメジャーですし、メインストリームやポップスターは大好きなんですけど、メジャー的な価値観が嫌。アンダーグラウンドシーンでパンクとかパワーポップなふりして、実は単なるJ-Popでしかないようなのってあるじゃないですか、ああいうのがもう許せなくて
H : それは事故みたいなもんなんじゃないの? もしくは狙ってるか
T : でも、だったらパンクとかパワーポップのふりはしないでよ、と思うんです。で、そんなことを思った時に日本で一番かっこよく世界にも通用してて、メジャー的価値観に対抗しうるものは何か? と考えたら、やっぱハードコアパンクとノイズなんですよ。で、その力を借りてやってみようと思ったのが前回のAAのシングルですね
H : でもね、そういうのより俺たちの方がメジャーと対極にいるかもよ。というのはノイズとかハードコアはほんとにメジャーじゃないしまがまがしい音楽ではあるけどけど、そのカテゴリーはちゃんとあるじゃん
T : あぁ、ブラックメタルだってメジャーですもんね
H : 俺たちはもっとノンカテゴリーな世界にいるよね
T : まぁ、日本にグラムのシーンなんてないし、なんか一応ガレージパンクのなかに組み込まれてたりするけどあきらかに浮いてますからね。2バンドとも
H : そういう場合のガレージパンクって生々しいロックですよって意味くらいしかないでしょ? そういう意味で言われてるんだったらうれしいけど。だから俺たちはホームレスなんだよ
T : じゃあこれホームレスのSPLITですかね(笑)
H : 故郷がない
松田 : マリオ監督とかノブさん(DADDY-O-NOV)がかっこいいと思ってるから、そこには入ってはいいるけども
T : でも、うちは当然だけどヴィヴィアンもよくよく考えたらその枠組みに入ってるのはおかしいんですよね。だってヴェルヴェット・アンダーグラウンドがサイケとかガレージのコンピに入ってないしジャックスはGSの枠にはいないですもんね。そこは目指してるし、共通点なのかも
H : だからそういうのって……なかなか売れないよね
T : ですね。まぁ、売れることを拒否は全くしてないんですけどね
H : もちろん。ぜんぜん売れたほうがいいにきまってる。でも、“ヒューマンじゃないもの”が売れるってことが日本に起きないかぎりはダメでしょ
T : 歌詞だったり物語性が重要視されますもんね。そういうのひかれないもんなぁ……。やっぱアート作品を作りたいって気持ちではいますよ
H : でも、やんないじゃん? それはなんかわかるんだよね。俺もジョイ・ディヴィジョンとか好きだけど、ぜったいああいうのやるつもりないし、やってもうまくいかないから。やっぱそういうアートくさいシリアスなものをやることに照れがあってね。性格的なものがあるのかもしれない
T : わかります。私も性格的にそうなりきれないですね。ただなにをやるにしても、やっぱバンドのキャラ、コンセプトからはズレないようには極力気をつけてはいます。だから反戦メッセージにしてもMake Tea Not War にかけて“Make up Not War”っていうスローガンにして、あくまでヤングパリジャン的コンセプトの範疇からは外れずにやってます
H : そこはそうじゃないとだめだよ。そこからはずれたら敗北宣言だよ。思想にのっとられたらダメ
T : 乗っ取られかねないくらいに世の中不満だらけですけどね(笑)
H : それはもう個人でやるべきだよね
T : そうですね、そこはもうそうしてます
松田 : ではそろそろまとめに
T : 今回、SPLITってのはもちろん光栄ですけど、ヴィヴィアンは久々の音源なんでそれが聴けたのがファンとして単純にうれしかったですね。松田さんにはとても感謝してます
松田 : ヤングパリジャンは今後インディーズのすごいレーベル全部から出してほしいですね
T : 意外なとこから出してびっくりさせたいです。もちろん“縁”ありきですけど個人的な夢はless than TVからのリリースです。ホントにあそこはリスペクトしてます
H : 僕からは、今後ヤングパリジャンがアート的なものをやるかどうかが気になるね。アートスピリットを爆発させて、もう大衆から離れたものをやるのかどうかっていう
T : いや、実はすっごいやりたいことはあるんでいずれやるかもです。ただ、アートな方向に安易にいかないことの方が過激だとは思いますね
H : それはそうだよね、アートになったらアートってとこに安住しちゃうからね
T : 逆にヴィヴィアンはそっちにいってみたいとかはないんですか?
H : うーん……ないね。そういうのよりやっぱナオナオが歌ってる方がいいですからね
T : あぁ、それはもうそうですよね。今、ふと思いましたがそういうアートとポピュラリティの絶妙なバランスってロキシー・ミュージックなのかもしれませんね
H : あれはもう奇跡だよ!!
T : ちゃんとポップの中にアヴァンギャルド性があって
H : ロキシーの初期ってもう完全にアートなんだよね。リキテンシュタインの絵みたいにおしゃれな鑑賞物としても楽しめる完全なアート。ただ、曲は人懐っこいとこもあるから売れたんだろうけど、あれが売れたってのはすごいことだよ
T : じゃあそこをお互いめざしましょう!

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