「人を喜ばせるために音楽を作りたい」。ソロとして歩き始めたVelladonが語る、未来への決意。

――ソロ活動開始を発表した当日に、アルバム『Forbidden Colors』とEP『Demons-EP』をリリースされました。それから1ヶ月足らずで『Black Metal Demo』、『Love Letter From a Distance』をリリースしています。しかも7曲、70分におよぶボーナストラックや、45分の睡眠導入音源などの購入者特典もあります。かなりのハイペースですよね。

Velladon:『Forbidden Colors』、『Demons-EP』、『Black Metal Demo』はアイデアが溢れている状態で作った作品でした。作曲からマスタリングまでのおよそ1ヶ月、短いようで長かったです。僕は1曲作るのに、基本的には2日以上かけません。イマジネーションをすぐに形にしないと、鮮烈な気持ちが消えたり、見失ったりしてしまうからです。早いときはセッティングから2時間で、マスタリングまで完成させることもあります。

――作曲はもちろん、レコーディングもすべてVelladonさんひとりでやられているんでしょうか?

Velladon:全ての作曲、アレンジ、演奏、レコーディング、ミックス、マスタリングを、ひとりでやっています。『Forbidden Colors』だけは、ジェイムス・プロトキン(KHANATEほか)がマスタリングをしてくれました。

――曲作りに2日はかけないとのことですが、曲を書く時には、ある程度方向性や表現したいことを決めてから着手するんでしょうか?

Velladon:色んなきっかけで、頭の中で音楽が流れるのですが、それを具現化するということがほとんどです。例えば街で美しいひとを見かけたとき、犬と触れ合ったとき、怒り狂っている人を見かけたとき、素晴らしい映画や詩に触れたとき、美味しい食事をとったとき、古い友人と再会したとき、悪夢を見たとき…。イメージが固まった状態でスタジオに入り、たまたま最初に目に入った楽器を手にすることもあれば、この曲の主役はピアノだ!ギターだ!と決めてから、曲作りに入ることもあります。また、新しい楽器や機材を買って、そのサウンドからイマジネーションを得て、曲を作りはじめるということもよくあります。
いずれにしても、楽器やコンピュータを触り続けて、音色やハーモニーに没入しながら制作を進めていくということに変わりはありません。

――他人といっしょに活動していると、思わぬ化学反応が生まれることもあれば、逆に制限になってしまうことも多いと思います。ソロになってから、作曲方法等に変化はありましたか?

Velladon:自分にしか読めない譜面で、アンサンブルを独自の方法論で成立させることが可能になったことと、楽器や機材の選択に制約がなくなったことが大きな変化です。主題となるメロディすら消え去って、音楽が自由になった瞬間が何度もありましたね。また楽曲を構成する各要素について、じっくりと考えられるようになりました。“Face/顔”という楽曲は、160種類の楽器を用いて制作したのですが…すべて自分が作って演奏したパートなので、160通りの主観が僕の中に存在していました。それぞれが異なる主張をしているので、全ての視点のバランスをとり、統合することが必要でした。それが成功したとき、音楽に対する自分の精神がはじめて本格的な意識に至った、という感覚がありました。
でも、コラボやセッションは積極的にやりたいです。いままで気づいていなかった、自分のなかにある魔法を呼び覚ましてくれるような人が大好きです。そして、コラボによって自分自身が変容し、それまでの僕の発言や行動と矛盾していくことが容易に想像できます(笑)。でも矛盾の発生はさほど大きな問題ではなく、むしろ、楽しみです。自分自身の内なる無知を知り、克服することにもつながるからです。

――どの形態の活動・作曲でも共通している“自分らしさ”として、どのようなことが挙げられますか?

Velladon:僕の作る楽曲には、明確でシンプルなテーマと、ドラマ性があります。特に意図していなくとも楽曲がドラマ性を帯びるのは、僕の個性なのかなと思います。
ただ、テーマやドラマ性を事細かに解説して、聴者の心象風景を決定してしまうようなことは、あまりしたくありません。「聴者の解釈」を大事にしたいからです。それは、制作者と聴者の間の、唯一の音楽的なコミュニケーション手段で、それによってようやく作品が完成すると僕は思っています。音楽やアートにおいては、作品を受け取った人の解釈によって、制作者の想像を超えることがしばしば起こります。僕はそのことを期待しています。

――音源のタイトルを見ると「Forbidden Colors/禁じられた色彩」「Song for the Pussy Whipped/虐げられたものたちへ捧げるうた」「Shadowy Past/忌々しい過去」といったものが並びます。これらはやはり、ご自身の過去に対するものなのでしょうか?

Velladon:これらのネガティブな言葉は全て、自分自身の苦しみに自発的に立ち向かうためのものです。少年時代からの数々の地獄は、僕を廃人や殺人者に変えていたかもしれません。僕の悲観主義との戦いは、現実世界と向き合うために必要不可欠なものでした。
「Forbidden Colors/禁じられた色彩」というモノクロームなタイトルは、最初は永山則夫の『私の花』のような世界観に加え、『どろろ』の百鬼丸のように、困難を乗り越えながら失ったものを取り戻していくイメージでした。ですが、ヴィンセント・ギャロがカラフルで、でもシンプルで、ちょっぴり切ない気持ちにさせる…とても映画的なロゴを描いてくれました。「君は色を既に取り戻していたのだから、暗い感情にとらわれ過ぎなくていい」というメッセージを、彼のデザインから感じ取りました。その後、僕は全ての楽曲をアレンジし直しました。

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