入場無料の都市型フェス〈THE M/ALL〉を実現させたオークラ氏にインタビュー (後編)

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オークラ氏のインタビュー前編はこちら

インタビュー・文:ローリングクレイドル・ハシモト

――音楽ライブのラインナップをふりかえると、ほかのフェスではなかなかお目にかかれないアーティストも数多く出演されていて、独自色がかなり出ていたかと思います。出演者を編成する上で、方針などはありましたか。

オークラ「基本的には、社会へコミットすることに臆さず活動していたり、感覚的にそういった空気を共有していると思えるミュージシャンを中心にお声がけさせていただいたと思います。ブッキングは奥田君とムニ君という、20代前半のメンバーが中心になってやっていたので、彼らの好みやネットワークが反映されていますね。ラップミュージックは陰鬱とした絶望感のある今の世界を“最もラジカルに言語化しているジャンル”だと思います。社会的メッセージを内包したコンシャスラップもフラットに聴ける耳を持った若い世代にとっては、最も身近にあるリアルなカルチャーなんだと思います。なので、必然的にHIP HOP勢が多めだったかもしれません」

――オークラさんの好みはあまり編成に反映されなかった感じでしょうか?

オークラ「そうですね。でも、〈odd eyes〉と〈MOMENT JOON〉さんは、ボクがメンバーにプッシュしました。あと〈DYGL〉のメンバーとは〈Ykiki Beat〉の頃から繋がりがあって、そういう流れもなんとなくあったりします」

矢田「odd eyesもオークラさんなんですね。odd eyesのメンバーとはよく連絡を取ったりするのですか?」

オークラ「いえいえ、全然そんなことはなく、このイベントで初めてご挨拶しました。でも、ライブは何回か観ていて、ヴォーカルのシュウト君の風貌やツイッターなどの狂気に満ちたアウトプットには密かに注目していました(笑)」

矢田「たしかにストレンジですよね(笑)」

オークラ「前半にもお話しましたが、〈THE M/ALL〉は新しいカルチャーを作るというコンセプトで立ち上げたので、その主役はなるべく若い世代であるべきだと考えていました。オファーしたアーティストが次々に決まっていくなかで、自分が〈12XU〉という看板を背負って実行委員に入ってる以上、『パンク/ハードコアというカルチャーを若い世代にもっと知ってもらいたい、灯火を絶やしてはいけない』という使命感に駆られたんですよね(笑)。でも、ハードコアバンドで20代となると、〈odd eyes〉や〈MILK〉など非常に少ないんですよね。若手と思っていたバンドも、気がついたらみんな30越えていて…」

矢田「ボクは40を越えてますが、今年ユースクールバンドを結成しました(笑)」

オークラ「そうなんですね! いいですね!!! あとは、WWWのステージを意識したときにodd eyesは相性が良さそうだなと思いました。一筋縄ではいかないオリジナリティと、それでいてハードコアを聴き慣れていない人にも馴染みやすい感覚もあって…」

矢田「シュウト君の歌のセンスはかなり独特ですから」

オークラ「彼のヴォーカルスタイルや詞の世界、ギターの質感もめちゃくちゃかっこいいですよね。ハードコアの影響だけでなく、ポストパンクやジャンクなどの影響も感じます」

矢田「本当に、たくさん音楽を聴いてきたのがわかります」

オークラ「ハードコアの文脈における彼らの先進性や、唯一性の高い表現をとにかく体験してもらいたいという思いがありましたね。後ろに出番を控えた〈DYGL〉のファンが、“間違えてodd eyesに出会ってしまった”みたいな奇跡が起きたら素敵だなと、密かに期待してました(笑)」

オークラ

矢田「唯一性でいくと、敢えてベテランのクラストバンドを編成にブチ込んでみようとは思わなかったですか?」

オークラ「それもいいですよね(笑)。でも、そういう無邪気な提案は、とてもじゃないですができなかったですね(笑)。もし“新しいカルチャーを作る”というコンセプトでなければ、パンク/ハードコアシーンにはかっこいいバンドはたくさんいるので、ジャンルや世代に関係なくプッシュしていたかもしれません」

――分かります。フェスの編成って、実行委員同士の強い思い入れが交錯しがちなので、空気を読まないと、エライことになりますよね(笑)。

オークラ「そうなんですよ。コンセプトから逸脱してしまうと、変な空気になってしまいがちなので(笑)。でも唯一、世代を意識せずに呼ぼうとしていたのが、故ECDさんでした。〈THE M/ALL〉開催に至る文脈的にも、ECDさんは外せない人物というか、やはり出てもらいたかったですね」

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