LIVEAGE的視点で考えるNu-Metal対談 -後編-

ハードコア、ヒップホップ、メタル、オルタナティヴほか様々な要素を内包し、ビッグヒットを連発しつつも、どのシーンにも属さず萎んでいった「Nu-Metal/ニューメタル」。この歴史的に見ても特異な点の多いジャンルを再考する対談、いよいよ後編です。前編はこちらから。
前編では、ニューメタルの改めての定義と当時の空気感を振り返りつつ、その影響力について考察しました。後編となる今回は、ニューメタルのサウンドの特徴、なぜ急速に消えていったのか、そして現在についてを語っていきます。参加者は前回に引き続き、以下の通り。

Masayoshi Onodera:プログレッシヴ・メタルコアバンド、Arise in Stabilityのギターと作曲担当。2020年、9年ぶりのフルアルバム『犀礼/Dose Again』をリリースした。
Kyohei:arbusおよびcatrinaのヴォーカル担当。GLASSJAWのダリル・パルンボ(vo)とスニーカーをこよなく愛する男。昨年のDEFTONES対談にも参加。
Fujita:同じくarbusのギター担当。ほかインストバンドLUODAでも活動。Twitterで生み出したハッシュタグ「#Numetalあるある」が話題を集めた。
MOCHI:なんだかんだ音楽の入り口だったニューメタルが魂の居場所な気がするLIVEAGE編集長。

MOCHI「前編でも、ニューメタルはメタルといいつつ、伝統的なメタルからは完全に外れた存在という話がありました。音やギターリフの面ではPANTERAやHELMET、ほかにもヒップホップとクロスオーヴァーしたニューヨーク・ハードコアの影響が強い気がするので、実際、特段メタルのパーセンテージが高いわけではないですよね」

Fujita「LINKIN PARKのリフからは、ものすごくHELMETのペイジ・ハミルトン(vo,g)を感じますね。特に『HYBRID THEORY』のリフとか不協和音の使い方とかは、ものすごくHELMETの『MEANTIME』(92年)や『BETTY』(94年)によく似ていると思っています。ペイジ・ハミルトンは本当にリフメイカーで、BLACK SABBATHとジャズを混ぜたような、よくわからないリフを弾いているんですけど、それをうまいこと利用しているなって思いますね」

MOCHI「そこにヒップホップやレゲエ、インダストリアル等の影響を混ぜたのが、ニューメタルの雛型になっているのかな」

Onodera「KORNやLIMP BIZKITって、今聴くとギターの弾き方がトラックメイカーぽいところがあるんですよね。歪んだ音のリフを重要視するのではなく、ラップをいかに生えさせるかっていう音作りをしているみたいな。そういった手法では、ウェス・ボーランド(g/LIMP BIZKIT)ほどの人もほかにそうそういなかったなって思います。KORNも変なコーラスをかけたリードとか、ヒップホップのトラックをギターで表現したらこうなるっていう発想だけど、ウェスのほうがより洗練させた形でやっていましたね」

MOCHI「従来のバンドとは、ギターへの取り組み方とかがそもそも違うということですよね。そこが理解されなかったから、伝統的なメタルからの視線は厳しかったのかも」

Onodera「普通にかっこいいギターを弾こうと思ったら、出てこない発想のリフばっかりなんですよね。だから、それまでは普通にメタルをやっていた人がニューメタルに触発されたとしても、そのレベルに到達できないんじゃないかな」

Fujita「そういった意味では、やっぱりニューメタルのギタリストのなかではウェスが頭一つ抜けているなって感じしますね。今に至るまでギターソロ的なものをほぼ弾かないとか、一貫した姿勢を感じます。やらせれば、どんなプレイも絶対にできるだけの実力はあるのに」

Onodera「俺はLINKIN PARKが一番すごいと思う。テクニックとしてではなくて、ニューメタルをメインストリームに押し上げるアレンジ力があったというか。ちゃんとコード感があるし、歌を乗せることが前提になった曲になっていると思います。そういう意味では、さっきも話したトラックメイカー的な感覚に近いところもあるんですけど、コーダル(和音主体)なんですよね」

Kyohei「実際『HYBRID THERY』ほど、アルバム通して一気に聞けるアルバムもそうそうないですよね。本当に捨て曲がないし」

Fujita「たしかに、全曲ピアノで弾いたとしてもいい曲として聴けるものになっていると思いますね」

Onodera「1stなのにあの音質ですからね。相当お金使ったんだろうなって思うし、LIMPに続くバンドとして、ここで一気に売れさせようみたいな野心がレコード会社にあって、そこにハマるバンドを探していたんですかね」

Kyohei「日本でも宣伝には相当金を使ったなって感じですよね。CDショップの試聴機でも店のど真ん中で、でっかいポップといっしょに入っていたし。それがめちゃめちゃ記憶に残っているんですよ。チェスター(・ベニントン/vo)が腕のタトゥーを見せている写真が貼り付けてあって、“いかつい兄ちゃんのバンドやな”と思って聞いてみたら、1曲目ですぐレジに持っていきました(笑)。そこから学校で広めまくるっていう」

Fujita「僕もそういえば、友達にMDを貸してもらった記憶がありますよ」

Kyohei「それまではマジで名前も何も知らなかったですからね。それでいきなり“Papercut”を聴いたときのインパクトって、やっぱり相当衝撃ですよ(笑)」

Fujita「PVもよく覚えています。ハエがめっちゃいっぱい飛んでいるやつ(笑)。今見ると昔のCGやなって感じですけど」

MOCHI「歌詞も等身大でしたよね。KORNはトラウマで、LIMPはイキり散らかしていて、LINKIN PARKは等身大みたいな(笑)」

Fujita「たしかにティーンエイジャーの悩みが投影されているというか、十代の心に響くものでしたよね」

MOCHI「でもこれだけ天下を取るバンドをいくつも輩出したのに、ジャンルとして急速に萎んでいきますよね」

Onodera「イギリスのReading and Leeds Festivalに2003年に行ったんですけど、その頃にはもう時代の流れが、ニューメタルからスクリーモとかメタルコアに移り変わろうとしていましたね。その日メインステージの最初にFINCHが出ていたし、会場で配っていたサンプラーに、まだデビュー前のFUNERAL FOR A FRIENDが入っていて、それを聞いてこれはやばいなと思った記憶があります」

MOCHI「LIMPからウェスが抜けて、新しいギタリストを加入させて作った『RESULTS MAY VARY』(2003年)で大ゴケした時期ですよね。LINKIN PARKもこの年に出した『METEORA』を最後にニューメタルから路線変更して、2005年にはKORNからヘッド(g)が脱退して音楽性の模索を始めるし、シーンのトップに立つバンドが次々と変わっていった。その少し前からスクリーモとかとちょっと違う流れで、HOOBASTANKやLOSTPROPHETSみたいなより歌を重視するバンドが出てきてはいましたけど、結局ニューメタルを引っ張るまでにはならなかったし」

Kyohei「あと、スクリーモの前にDrive-Thru Recordsが話題になりましたよね。あれでDASHBOARD CONFESSIONALとかALLiSTAR、NEW FOUND GLORY、MIDTOWNみたいなポップなバンドが一気に出てきて、そのなかにFINCHがいた感じで」

Fujita「そのころにMESTとかもいましたよね。そういうポップなバンドたちと、ニューメタルの残党がかぶるときが好きでいろいろ聴きましたよ。ADEMAとか、B級のバンドがいっぱいいて(笑)。ほかにもSALIVAとかTAPROOTとかも最高でしたね」

Kyohei「PAPA ROACHなんかも、アメリカではもうロックスターっていう感じのバンドになりましたよね」

Fujita「たしかに今ではラップメタルとかじゃなくて、もはやスタジアムロックに近いですもんね。DISTURBEDやGODSMACKなんかもそうですけど」

MOCHI「ブームが終わってから、生き残るためにアメリカ人にウケる音に変化していったバンドは多かったですね。イコール、日本ではウケない音。だから日本と欧米で人気の差が開いて、来日もできなくなっちゃった」

Onodera「ニューメタルが終わってスクリーモやメタルコアが出てくる流れには、商業的になりすぎたニューメタルへの飽きもあったと思うんですよ。例えばLIMPは元HOUSE OF PAINのDJリーサルがいたし、ちゃんとヒップホップカルチャーへの理解があったけど、ニューメタル全体でヒップホップカルチャーを継承していたかというと、そうではなかったですよね。ある意味土台となるカルチャーがないのがよかった部分もあったかもしれないけど、そのカルチャーのなさがダサいみたいな感じになっていった側面もあると思うんですよ」

MOCHI「土台がなかったものの次に、土台があるものが来たということなんですかね。結局ヒップホップにもメタルにもなりきれなかったし、そのまま多くのバンドがニューメタルのスタイルを捨てるか、TOOLを目指してプログレ化するけど失敗するみたいな感じで終わっていったし。ある意味その節操のなさから、一度ジャンルとして死ぬのは必然だったのかもしれないですね」

Onodera「僕がなぜスクリーモやメタルコアがかっこいいと思えたかというと、ちゃんと根っこはハードコア・パンクの精神があるからなんですよね。例えばTHURSDAYはニュージャージー周辺のハードコアシーンから出てきたバンドだし、メタルコアも音こそ北欧のメロデスだけど、ニュースクール・ハードコアから出てきたもので、モッシュとかにもハードコアのマナーがちゃんとある。そこが一気に流れがシフトする、重要なポイントだったのかなって思います。僕はその転換点を見て、新しく出てきた音楽をかっこいいと思ったし、それで今バンドをやっているので、そういう印象が強いのかもしれないですね」

Fujita「そういう意味では、最近の若い子の間でニューメタルってどういう風に見えるんですかね。ラップしているバンドとかいるのかな」

MOCHI「LIMPって、ジョージ・マイケルやプリンスをカヴァーしていましたよね。そういうベタなポップスに目配せする感覚が、後のスクリーモがR&Bみたいな歌を取り入れるとか、そういうところにつながるのかなって気もしますね。メタルや地下の激しい音楽と、チャートインするようなポップスを同じ目線で聴いて取り入れる感覚が育まれたんだと思います」

Onodera「今はニューメタルコアっていうスタイルが出てきていますよね。ニューメタルのテンポ感を取り入れつつ、そこにブレイクダウンも挟み込んでいく感じで。ほかにもヒップホップ方面ではトラップメタルがあるし。そういう現代的なミクスチャー感覚も、ニューメタルがベースになっているんじゃないかな」

MOCHI「KORNもSkrillexほか、ダブステップ系のミュージシャンと全曲コラボして『THE PATH OF TOTALITY』を作りましたからね。で、SkrillexはもともとFROM FIRST TO LASTのヴォーカルだし…今最前線にいる世代の人たちが、最初にギターが歪んだ音楽を聴いたのが、KORNやLIMPだったのかも。僕らがB’zを聴くみたいな感覚で(笑)」

Kyohei「そっち方面だとTALLAHがよかったな。最近聴いた新しいバンドのなかではお!って思いましたね」

Fujita「あのマイク・ポートノイ(元DREAM THEATER/ds)の息子がドラムを叩いているバンドですね。名前は読みにくいけど面白いバンドだと思います」

MOCHI「このヴォーカルが“俺はジョナサン・デイヴィスになりてえんじゃ!”を一切隠さないでワギャワギャ言っているのがすごいですよね(笑)。それとTETRARCHなんかは、Onoderaさんが言っていたKORNっぽいコーラスがかかったリードギターを取り入れていて、2004年ころのRoadrunnerにいそうな感じ。ほかにも少し前ですけど、Crystal LakeがLIMPの“Rollin”をカヴァーしたのは、時代の流れが来る直前にうまいことやったなって思います」

Onodera「たしかに、ニューメタルリバイバルみたいなものをいち早くつかんで、先をいった感じですよね。YD(g)くんは俺の一個下だから思いっきり世代のはずだし、さすがだと思います」

MOCHI「あれを聴いて、今の最先端の音楽と、ラップというか早口で言葉をまくしたてるヴォーカルと、タメのきいた跳ねるようなリズムってこんなに相性がいいんだなって思いましたね」

Fujita「たしかに、Crystal Lakeの最近の曲は、もうメタルとかそういう概念を超えていますからね。リフも含めてものすごくバウンシーだし」

MOCHI「若い子には逆に新鮮なんですかね。でも僕らも高校生の時、音としては北欧のメロデスとそう変わらないメタルコアを“最先端だ!”って興奮して聴いていたのと同じで、時代が一周して新しい世代に届いているような気がします」

Onodera「ニューメタルのテンポ感が、ノリのよさやわかりやすさを出しやすいのもあったのかもしれないです。Djentも、わりとニューメタル的な流れがちょっとあったのかなって思います。僕の中で、MONUMENTSの『GNOSIS』(2013年)なんかは、初めて聴いたときSEVENDUSTみたいだなって思ったし。Djentと言われているバンドって発端はMESHUGGAHだけど、あそこまで難解なことはやっていなくて、みんなリズミックでノリやすいんですよね。だから2010年ころにDjentが出てきた頃から、ニューメタルのリバイバルの波はきていたのかも」

Fujita「たしかに、今考えると、ニューメタルって商業の流れに乗りやすかったですよね。スラッシュメタルとか、ああいうビートだと絶対無理じゃないですか。やっぱりマスに訴えかけるテンポ感があるのかなって思います」

MOCHI「BRING ME THE HORIZONなんかもLININ PARKに影響を受けているし、なんならいまだにパクってるって言われますからね(笑)。今一番売れているバンドのひとつがニューメタルから影響を受けているっていうのも、リバイバルに一役買っているのかな。あのトラックの作り方とか、ヒップホップやポップスの取り入れ方とか、洗練されたミクスチャーのやり方を踏襲していると思うし、そういうバンドが多方面で出ているように思います」

Kyohei「さっきの2バンドもそうだけど、ニューメタルに影響を受けたシーンがだんだん根付きだしているのは間違いなくありますよね。あとVEINなんかももっとハードコアよりだけど、ニューメタルの雰囲気を出しているし。時代はまた繰り返すっていうことなのかなって思いますね」

Fujita「僕はOnoderaさんがさっき言っていた、カルチャーがないっていうのが好きで。土台がないまま、歴史の中に埋もれていったのがなんとも趣深いというか…カルチャーにもなり切れなくて、ラップメタルのフォロワーとして生きていたバンドが徒花のようにいて、それがなんとも趣深くて好きだなって思います」

MOCHI「ニューメタルって、メタルからはじかれて、ハードコアでもないしヒップホップでもないって結局なんなんだろうって思っていたんですけど、Onoderaさんの言うカルチャーとしての土台の有無がすごく重要な視点だと思います。でもたしかにジャンルとしては一度死んだとはいえ、天下を取ったバンドをあれだけ排出したんだし、今となってはニューメタルそのものがカルチャーになりかけているのかな。過去、ほかにもニューウェイヴやNWOBHM、ポストロックみたいに“次世代”を意味するジャンル名が形骸化していった歴史はありますし、ニューメタルも今ではまったく新しくないけど、そういうものとして定着したのかなって感じですね」

Fujita「あとツイッターで僕が作ったハッシュタグ“#Numetalあるある”を使ってほしいです(笑)。今日はそれだけ言いに来ました(笑)」

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