2024年3月Disc Review!

冬が終わり、年度も変わりました。春らしい気候がなさすぎる気がしますが、今年はやたらメタル方面の新譜が豊作なのでよしとします。

そろそろ今年もインタビューとかしていきたいですね。来日多くて平日案件が多いこととかも、どうするか考えておかないとと思っています。

■DARKEST HOUR『PERPETUAL I TERMINAL』

ワシントンDCのメロデスバンドの10作目。もともとハードコアシーンとリンクしつつのし上がってきたこともあって、メタルコアと紹介されることもあるバンドですね。今回は7年ぶり、メンバーチェンジと久々の来日を経てのリリースです。
前作がロウな音質でクラストな要素を取り入れた、野蛮でテンションの高さが目立っていたのに対し、今回はメロデス色が大幅に戻ってきています。一番近いのは『THE HUMAN ROMANCE』(2011年)でしょうか。北欧的なクサさのあるメロディをまき散らしながらスラッシーに刻みながらかっ飛ばしていく様は、Victoryに在籍していた全盛期を思い出させるスタイル。新加入のギタリストもたしかなテクニックだし、これまでの積み重ねてきたメロディの練度も素晴らしく、余裕というか風格を感じさせる作風ですね。
ただ長いキャリアゆえの安定感が、ちょっと地味というか、ここ一発!という破壊力のなさに繋がっているという、意地悪な言い方ができてしまう面もあるかなと。メロデス色が強い作風に戻ることで、Victory期の振り切れたテンションの高さがないと如実に感じられてしまう気がします。個人的にはこの円熟味を感じさせる雰囲気も好きですが、昔から追いかけてきた人の中には不満を持つ人もいるかもしれないですね。とはいえ7年ぶりとしては十分の内容だし、ライヴを観ると印象変わるのかも。昨年行けなかったので、また来てほしいです。

■JOB FOR A COWBOY『MOON HEALER』

アリゾナ出身のデスメタルバンドの5作目。正式な音源リリースは10年ぶりとなります。元々は強烈なブレイクダウンとピッグスクウィールを搭載したEP『DOOM』(2005年)でデスコアとしてデビューしたものの、アルバムでさっさとテクニカルなデスメタルにシフト。前作リリース後に単発ライヴ以外動きが見られなかったんですが、コロナ禍中に集結して制作に乗り出したみたいですね。
ハードコア色を一切排除して以降、持ち前のテクニックを生かしてプログレ・デス化していきましたが、今回も10年のブランクを一切感じさせない作風です。叙情性の入り込むすき間がないほど、細かく音を刻みつけながら目まぐるしく展開していく様は、NECROPHAGISTやGORGUTSの流れにあるタイプのプログレ・デスといったところ。露骨なフュージョンぽい場面やメロディはないものの、押し引きや各パートの絡みが緻密に計算されているので、そこまで聴き疲れすることなく一気に聴けます。8曲という一見少なそうな収録数も、食い足りなさと過剰摂取のちょうど微妙なところをついており、とにかく作りがうまいですね。あのバケモノじみたピッグスクウィールこそ聴けないものの、ヴォーカルの声色の使い分けも見事。休止期間もあってか見落とされがちですけど、もっと評価されてもバチは当たらない逸材だと思います。
ちょっと優等生過ぎる面もあるものの、DARKEST HOUR同様、久々のアルバムとしては十分の内容ですね。ただ日本のメーカーの、デスコア時期をなかったかのような扱いはどうかと思いますが。

■ABORTED『VAULT OF HORRORS』

ベルギー産デス/グラインドバンドの12作目。90年代中盤から活動している重鎮ですね。すでにベルギー出身のメンバーはスヴェン・ド・カルヴェ(vo)のみですが、なんやかんや一定の地位と人気をしっかりキープしているバンドという印象です。
ちょっと前のアルバムではブラックメタルの影響や、雰囲気重視なパートを取り入れたりもしていましたが、今回はとにかく攻撃力重視。ドカドカバシバシと、ブルータルながらキャッチーなリフの連打で、聴いていて否応なしにテンションがぶち上がるデスメタル作になっています。面白いのが、全曲でゲストヴォーカルを招いていること。SHADOW OF INTENT、FLESHGOD APOCALYPSE、DESPISED ICONほかのヴォーカルが参加しており、自然とスヴェンとの声の違いで曲のバリエーションが豊かになっています。またどれも後輩バンドばかりなせいか、スヴェンをはじめバンド側も負けん気十分で、音のテンションというか気合が違うんですよね。曲によっては、デスコアっぽいブレイクダウンも挿入されており、モダンでクリアな音質と相まって、30年近いキャリアの持ち主とは信じがたい、よい意味で重鎮感がない仕上がり。どこにもケチのつけようがないですね。
血気盛んなテンションも含めて、全曲ライヴ向きだと思います。ゲストヴォーカルのパートはどうするのかなとは思いますが、重鎮が後輩の手も借りつつ気を吐きまくっていて、うれしくなるアルバムです。

■NIGHT VERSES『EVERY SOUND HAS A COLOR IN THE VALLEY OF NIGHT』

カリフォルニアのポスト・ハードコアバンドのアルバム。昨年『Part 1』を、今年『Part 2』をリリースし、最終的に1枚になるという形式になっています。以前はヴォーカリストも在籍していましたが、現在はインスト主体です。
およそ5年の活動休止を経た今回は、『DISCIPLINE』の頃のKING CRIMSONをマスロック~ポスト・ハードコアに溶け込ませつつ、モダンなプログレ・メタルで固めたような作風。とはいえやたら技巧に走らず、アトモスフェリックで揺らめくようなパートも際立っているのが特徴ですね。音数こそ多いものの隙間があって風通しが良く、じっくり聴かせるドラマ性のある曲に組み立てられています。
面白いのが、ジャスティン・チャンセラー(TOOL)、AUTHOR&PUNISHER、ブランドン・ボイド(INCUBUS)、アンソニー・グリーン(SAOSIN、L.S.DUNES)といったゲスト陣。特にMVにもなったブランドン参加曲が、色気たっぷりの歌声と相まって、独特の浮遊感を演出。それ以外の全員もメタル由来の激しさではなく、静かで幻想的な側面を掘り下げており、アルバム全体の深みを増す手助けをしています。
プログレっぽいバンドが飽和しかけている中で、頭ひとつもふたつも抜けた内容ですね。引き出しというか、ここで提示したどの要素も伸ばしていける手の内の多さに、惚れ惚れするばかり。今年ベスト候補です。

<LINK>

DARKEST HOUR:https://twitter.com/darkesthourrock

JOB FOR A COWBOY:https://twitter.com/JFACMETAL

ABORTED:https://twitter.com/abortedmetal

NIGHT VERSES:https://twitter.com/NightVerses