20年目にして、次なる境地へ。暗闇の先にたどり着いたMONOの新しい姿に迫る。

Interview by MOCHI
photo by Chigi Kanbe

インストゥルメンタル/ポストロックのひとつの「基準」として認識されるほどの存在感を放つMONO。最初は自分たちをほぼ無視していた世界を、暴力的な轟音と、繊細なメロディを両立させたそのサウンドで唸らせて彼らは、たしかに日本から世界に誇るべきバンドだし、スタイルは違えど、そのマインドはまさにハードコアだ。そんなMONOも、結成からはや20周年。重要な節目にリリースする通算10枚目の新作『Nowhere Now here』は、初のメンバーチェンジのみならず、バンドが様々な問題を乗り越えた末の「変わらないもの」と「変わったもの」を詰め込み、新たな一歩を踏み出したアルバムだ。ここ数年、バンドに何があったのか、そして新作がいかにして生まれたのか、Takaakira ‘Taka’ Goto(g)にインタビュー。新作リリースと直後の日本ツアー、そして新体制での船出が待ちきれないようで、メールながら、グイグイとこちらに迫るような熱量の答えを返してくれた。

MONO
――2017年の12月、オリジナルメンバーのドラマーが突然脱退する形で、MONOにとって初めてのメンバーチェンジという事態がありました。その後新しいメンバーを見つけてのライヴ活動再開、アルバム制作等、バンドの建て直して前への進むのは、かなり大変なことだったのではないでしょうか?

Goto「実は2017年は、日本のマネジメント、レーベルとのトラブルや契約解除、同時期にドラマーの脱退があって、バンドは本当に疲れ切っていたし、一歩も動けないような状態だった。本当に暗闇に入ってしまって先が見えなくなってしまったし、普通のバンドだったらここで解散するくらいのムードだったね。だけど“夜明けの前が一番暗いに違いない”と思いながら、一つずつ、メンバーや世界中のパートナーの助けを借りて解決していったよ。2018年には新ドラマーのDahm(ダーム)を迎えて、すぐに上海と台湾でのAfter Hours Festivalと、ロンドンでTHE CUREのロバート・スミス(vo)主催のMeltdown Festivalに出演した。特にMeltdownはMY BLOODY VALENTINE、NINE INCH NAILS、MOGWAI、DEFTONESなど素晴らしいバンドばかりだったし、しかも僕たちはNINE INCH NAILSと同じ日の同じ時間に、隣の会場でのライヴだったからかなりのプレッシャーがあったけれども、セットリストをほとんど新曲で組んだ。僕たちは、新しいチャプターにいると自覚していたし、過去を振り返ることなく、ただ前に進みたかったからね。結果、新体制のMONOにとって、とても素晴らしいスタートになったよ。今はバンドが生まれ変わったような、新鮮で力強いエネルギーに包まれているんだ。やっとあるべき姿になれた感じがする。20年もひとつのバンドをやっていれば、当然いろいろな問題も起きてくるよね。でも僕はいつも“逆境の時こそ、人生がわかるときだ”と感じる。MONOはいつも流れに逆らって泳ぐことで強くなってきたし、どんな人生を夢見るかは自分で決めることで、何よりも大切で価値があるからね」

――今お話しにも出た、新しいドラマーのDahmさんのプロフィールと、MONO加入に至った経緯を教えてください。

Goto「彼は元々、アメリカのルイビル(ケンタッキー州)で、The Phantom Family Haloというソロプロジェクトをやりながら、ボニー・プリンス・ビリーやSLINT、SHIPPING NEWSのレコーディングやツアーに参加していたんだ。9年前にニューヨークに移ってからは、リディア・ランチやマーティン・ビシの作品とか、WATTER(OM、GRAILS、SLINTのメンバーによるバンド)のツアーでドラムをプレイしていたよ。2017年の12月に、ニューヨークにある僕たちのレーベルTemporary Residenceのオーナー、ジェレミー・ディヴァインにドラマーの脱退の件を伝えて、誰か良い人がいたら紹介してほしいと相談したら、すぐにDahmを推薦してくれたんだ。その後、MONOの新曲2曲のデモをDahmに渡して、2018年の2月に、東京でいっしょにスタジオに入ってみることにした。で、実際にDahmと会って話をしたら、アメリカでMONOのライヴを何度も見てきたファンだったそうで、曲にも詳しくて何かもがスムーズだった。まるで事前に全部準備されていたかのようだったね」

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