20年目にして、次なる境地へ。暗闇の先にたどり着いたMONOの新しい姿に迫る。

――昨年7月に、東京でenvyとの2マンで現体制のMONOを初めて観たとき、音が炸裂する瞬間の爆発力が強くなり、それによって繊細なパートとの対比も明確になったように思いました。Gotoさんとしては、Dahmさんが加入してバンドの音、メンバー間の関係性についてどんな変化を実感していますか?

Goto「Dahmが加わったことで、バンドのサウンドそのものが変化した。Dahmのドラムは音がとにかくラウドで、僕のギターが聞こえなくなる時があるくらいだよ。Tamaki(b,key)やYoda(g)との相性も本当に素晴らしいし、一緒に演奏するのがとても楽しい。新しいアルバムの曲は、Dahmに会う前に書いたものがほとんどだったけど、まるでDahmの登場を待っていたかのように感じたよ。求めていたサウンドそのものになった。この躍動感、生命感、力強さは彼抜きでは絶対に考えられなかったね」

――新作『Nowhere now here』は、バンドにとって結成20周年に、初のメンバーチェンジを経てリリースする10枚目のアルバムとなります。Gotoさんのなかで、今回の制作にあたってそういった節目のトピックへの意気込みやプレッシャーはありましたか?

Goto「20周年、10枚目というのは、もう何年も前から意識していた事だった。まさかこんな形で迎えるなんて想像はしていなかったけどね。この先MONOを続けていく上で、大きなテコ入れが必要な時期だったんだ。見えない大きな力が働いたと思えるくらいだよ。今が、これまでのバンド活動でベストだと心から感じるし、とても楽しいし、何より強い自信がある。チャプターが変わったとしか言いようがないね」

――新作を聴いたときの第一印象として、いつになくセンチメンタルな感覚を覚えました。それが以前よりもコンパクトな楽曲で表現がなされていて、MONOの根幹はそのままに、新しい方法論と融合しているイメージです。結果的に、MONOが30年、40年と続いていくための新しい指標になったのではないでしょうか?

Goto「この『Nowhere, Now Here』は、バンドが新しいチャプターに向かうにあたって、様々なトラブルと向き合った過程をすべて音楽に残したものとなった。さっきも言った様に、バンドは生まれ変わるか、活動を休止するか。そのどちらかを決断しなければいけないタイミングを迎えていたからね。先がまったく見えず“どこにも、何もない(Nowhere)”と感じた暗闇からの再生、そして夜明けを迎え、新しいチャプターを迎えたいという感情を、“今、ここに(Now Here)”至るまでのストーリーを残したんだ。だから、これまでの作品とは全く違うエネルギーに満ち溢れていると思う。“Nowhere”という言葉を真ん中で区切ると“Now Here”になるよね。そのたったひとつのスペースに“愛”や“ポジティブな感情”を注ぎ込むだけで、すべてを変えられると表現したいと考えた。ずっと心の底にあった違和感や嫌悪感、怒りとともに闇をさまよいながら、希望や光を目指し、もがき、自分と向き合い、戦い、ラストの“Vanishing, Vanishing Maybe”で、過去への決別をするまでのストーリーを描いたんだ」

――今回も、レコーディングはスティーヴ・アルビニが手掛けていますね。彼とは一時期離れていましたが、やはり自分たちのやっていることを封じ込めるには、彼の腕が必要ということでしょうか?

Goto「ドラマー脱退をオフィシャルにアナウンスした後、真っ先にメールをくれたのがスティーヴだった。“バンドは大丈夫か?また君たちに会えるのを楽しみにしているよ”ってね。“僕たちは新しいドラマーを入れて、新しいアルバムを近々録音するつもり。とても楽しみだ”って返事をした。その後、2018年の7月にシカゴの彼のスタジオ(Electrical Audio)に行って、“新しいアルバムは、NIRVANAの『IN UTERO』(1993年)みたいなサウンドにしたい”ってリクエストしたんだ。スティーヴとの17年の付き合いのなかで、彼に“○○のようなサウンドにしたい”と言ったのは初めてだったけど、彼は僕が何を言いたいのか、すぐに理解してくれたよ。MONOはDahmを迎えて生まれ変わったし、これまで以上にヘヴィで、ロックで、エモーショナルな新しいサウンドを求めていたことをね。音楽的にも、サウンドに関しても、また一つ自分たちの理想とする表現に近づけた気がしている。スティーヴは、世界でもっともMONOのことを理解してくれている、大切な友人でありパートナーだ。この先もずっと、彼とアルバムを作り続けたいと思っているよ」

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