山形の門脇将軍率いるWHAT EVER FILMの2nd アルバム”フミシメテススメ”レビュー!

WHAT EVER FILM

山形を拠点に活動するWHAT EVER FILM。15年以上の活動暦を誇り、昨年の春にREDSHEER、forget me not、kmkmsらとともに4wayスプリット“confidence”をリリースしたことも記憶に新しい。その勢いに乗る形で、同じく昨年の大晦日に世に放ったのが、本作“フミシメテススメ”だ。単独音源としては、実に12年半ぶりになるとのこと。

本作を聴いてまず思い出したのが、SHELLAC~SLINTといったバンドたちだ。金属の破片をこすり合わせるような、キリキリと耳にささる刺々しいギター、聴き手を煙に巻く変拍子と曲構成。それらをなんともジメっとした不穏な空気とともに振り撒く様は、たしかにポスト~マスロックの先駆け達を思い起こさせる。そこにDCハードコアやジャンクの要素も加えることで、加速度を追加。激情~カオティック・ハードコアとして紹介されることの多い彼らだが、影響源をまとめあげて突き詰めていった結果、激情系とシンパシーのあるスタイルにたどり着いたのでは、と感じる。メタル度はほぼゼロだが、その代わり文学的でありつつ、マッドな理系の佇まいが不気味なのだ。

ポスト・ジャンクといった趣の「ターゲット」「最乱れ」でスタートする本作。ねじくれたリフとリズムで、耳と頭を締め付けにかかるようだが、そのねじれのすき間から情緒的なメロディが見え隠れする瞬間も。「#6」ではサックスを導入し、持ち前の不穏さにムード歌謡的な雰囲気も付加する、懐の深さを見せ付ける。かと思えば、キャッチーさを押し出し、比較的優しい目つきな「シサ」に驚かされるだろう。「自明の理」は、けだるいアルペジオからじわじわと沸騰していく、彼らを象徴するような曲だ。ラストの「ケンイ」では、躁鬱を行き来しながら、ノイズにまみれて収束していく。

冒頭から、不気味さだのヤバそうな感じだのと繰り返しているが、アルバム全体を通して貫かれている混沌としたサウンドの向こう側には、たしかな温かみがある。そのどうしてもにじみ出てしまう温かみにこそ、彼らなりのエモさを感じたし、だからこそ何度も再生してしまうのだ。ライヴだと、また違った印象を抱きそうだ。あまり頻繁にはなさそうだが、ぜひ観てみたい。

ちなみに本作は300枚限定のアナログレコードという形態でリリースされている。もちろん収録曲をMP3で入手できるダウンロードコード付属だ。すでにリリースから3ヶ月が経とうとしており、在庫も減っていく一方と思われるので、気になっている方は今のうちにチェックされたし。

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