入場無料の都市型フェス〈THE M/ALL〉を実現させたオークラ氏にインタビュー (前編)

THE M/ALL

ゼロから取り組んだ〈新しい場所創り〉。開催後に掴んだ手応えとは…!?

――当日の手応えに話が及んだので話題を変えますが、私は矢田さんとは違い、CAMPFIREのメッセージやコンセプトに惹かれて、当日足を運んだ一人です。なかでも、「なぜやるのか?」という問いに対するアンサーとして掲げてらっしゃった「アートを楽しむことの“その先”を体験できる場をつくりたい」というビジョンに惹かれたのですが、実際にフェスを開催してみて、来場者からその手応えはありましたか?

オークラ「“その先”という提示の仕方がハイコンテクストかなと少し案じていた部分もあったのですが、意外とそうでもなかったです。GALLERY Xで行われたトークセッションの例を出すと、ボクが登壇した後、『さっき話していたことについてもっと知りたいので、ちょっと教えてくれませんか』といった感じで、すぐに声を掛けられたりもしました。これはボクに限ったことではなくて、いろいろなトークセッションで同じような場面がいくつも見られたので、もっと知りたいとか、もっと深く考えたいという欲求はみんな普通にあるんだな、と思いましたね。普段は身近に感じていない社会的テーマでも、みんながみんな無関心なわけではなく、何かきっかけさえあれば、人ってやっぱり考え出したりするんですよね。観覧していた知人からも、『今はすごく頭が混乱してるけど、このテーマについてもっとよく考えてみたい』とか言われたりもしました。今まで社会運動にもコミットしたことのないような人たちや、ライブにもあまり行かなそうな人たちが足を運んでくれたのは正直嬉しかったです。そういった人たちからダイレクトなリアクションをいただけて、これは凄くやりがいがあるんじゃないか、やっていく意味があるんじゃないかと実感しました」

――もうひとつ、CAMPFIRE上の「なぜやるのか?」という問いに対するアンサーとして、〈どんな立場の人でもカルチャーを体験できる場を作りたい〉という目標を掲げてらっしゃいましたが、人種や年齢・ジェンダーを問わず、さらには格差社会におけるマジョリティ側の人たちなど、幅広い層に足を運んでもらえたという実感はございましたか?

オークラ「とにかく若いコが目立ちましたね。それも、普段クラブやライブハウスで遊びなれた感じのコではなく、ましてやデモで見かけるようなタイプでもない、そういった層に参加してもらえたのはすごく良かったですね。まぁ、一人ひとりにちゃんとヒアリングしたわけではないので、本当のところは分かりませんが、周りのスタッフからも同じような感想を聞きました」

――私は〈WWW〉と〈WWW X〉の会場で目撃したのですが、60代ぐらいの年配夫婦もいましたし、幼児を連れた子連れ夫婦も見かけました。あと、若い外国人グループも楽しそうに踊ってましたし、ハンディキャップのある方も来場されてました。

オークラ「そうでしたか! 年配のお客さんについては、もしかしたらクラウドファンディングで支援してくださった方かもしれませんね。2年前のドントラの時は“なんかいつもの面々”みたいな感触だったのですが、今回はいつもとは違ったフレッシュな空気を感じましたね」

――ドントラとの違いでいくと、今回は30時間ぶっ通しでタイムステーブルが組まれていました。運営する側としてはかなりタフだったと想像しますが、どのような意図で、このような長時間のタイムテーブルが組まれたのでしょうか。

オークラ「話したいテーマがたくさんあったので、『30時間くらいないと、きっと収まりきんないよね…』というのが最初にあったんだと思います。あとは“24時間テレビ的な感じ”で完全燃焼し、ボロボロな状態でカタルシスに向かっていくみたいな、そういうものを目指して…(笑)。ボク自身は『ホントにやんの?』みたいな感じでずっときちゃったのですが、もし2回目があるとしたら絶対にやりたくないです(笑)」

――実際に30時間ぶっ通しのフェスを行ってみて、完全燃焼できましたか?

オークラ「奥田君とか、30時間ほとんど寝ずにやってたメンバーは燃え尽きたと思います。ボクは体力的にキツくて、シレッと一旦家に帰りましたが(笑)」

――貴重なお話の数々、ありがとうございました。このあとは〈THE M/ALL〉のメインファクターであるライブアクトについて、振り返っていきたいと思います。後編もどうぞよろしくお願いします。

オークラ「こちらこそ、よろしくお願いします」

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