入場無料の都市型フェス〈THE M/ALL〉を実現させたオークラ氏にインタビュー (前編)

THE M/ALL

元SEALDs・奥田愛基氏と共鳴してはじめた“MAKE ALL”への実践

――早くライブが観てみたいです! そんな本業も音楽活動も多忙を極めるオークラさんですが、なぜ今回〈THE M/ALL〉というフェスを興したのか? その辺りの話からお訊きしたいのですが、実行委員のメンバーはどのように集まったのでしょうか。

オークラ「2016年に〈DON’T TRASH YOUR VOTE(以後ドントラ)〉というイベントをやったんです。このイベントをご存知でない方のために説明すると、ボクが運営する〈12XU〉と〈SEALDs〉で投票率のアップを目的とした“DON’T TRASH YOUR VOTE”というコラボアイテムを展開するキャンペーンが始まりでした。“選挙に行こう”というメッセージを掲げて渋谷のパルコでポップアップショップをやったり。そんな中で、“リベラルを勝たせたい”という輪がどんどん広がっていき、最終的には音楽イベントをやるに至りました。一回目は5月に1日だけ行ったのですが、選挙前の7月には3日間4カ所で開催しました」

――〈THE M/ALL〉の実行委員には元SEALDsのメンバーの名前も多くクレジットされていましたが、ドントラでの実績があったので、また再結集した感じでしょうか。

オークラ「そうでもないんですよ。SEALDsのコアメンバーだった実行委員は奥田(愛基)君で、あとは中川えりなちゃんやharu.ちゃんもSEALDsやドントラに関わっていましたが、全体的にはそんなにSEALDs色がない布陣になっていると思います」

――なるほど。では、奥田さんといろいろやりとりをされていった感じでしょうか。

オークラ「SEALDs解散後もたまに奥田君とは会っていたのですが、彼も表に出ないでいた時期がありまして。そんなある日、どこかの飲み屋でドントラの経験を踏まえて『今後どうしていこうか?』、『やっぱりカルチャーを作っていくことが重要だよね』みたいな話をしたのを覚えています。今思えば、それがこのフェスの起点だったかも知れません」

――それはいつ頃ですか?

オークラ「ちょうど一年前の春ぐらいですね。その2・3ヶ月後、奥田君から『今までにない音楽イベントをやりましょう!』と急に電話が掛かってきて、『うん、やろう!』と二つ返事で返しました。そのタイミングでたぶん彼は何人かに声をかけていて、それでコアメンバーが集まったんだと思います」

――やはり、代表は奥田さんなのでしょうか?

オークラ「そうですね。代表は奥田君で、ボクを含む数名がコアメンバーみたいな感じです。そこからコアメンバーそれぞれがいろいろな人に声をかけていき、最終的には20名ぐらいの規模になりました」

――続いて、“音楽xアートx社会をひとつにつなぐ”というフェスのテーマについてお伺いしたいと思います。これまでも〈音楽〉と〈アート〉の融合や化学変化を狙ったフェスは昔から多くありましたが、〈社会をひとつにつなぐ〉という主題を掲げたフェスは、他に類をみないかと思います。かなりチャレンジングな主題設定だと思いますが、どのような意図で決まったのでしょうか。

オークラ「“新しいカルチャーを作るためのフェス”といったアウトラインがまずありまして、そこから“いろいろなカルチャーが入ったモール”みたいなイメージに膨らんでいきました。それと同時に〈MAKE ALL〉というメッセージも決まっていったのですが、この〈MAKE ALL〉はハードコアで言うところの〈D.I.Y〉を少し言い方を変えただけで、姿勢は同じだとボクは思っています。フェスを興すためのお金やフェスに参加するためのお金の部分から、既存のやり方に倣うのではなく、“そこから全部みんなで作っていこう”みたいな意図は最初からありましたね」

――フェスのシステム自体も新しく作りあげるみたいな感じですか?

オークラ「そうですね。そういったことをいろいろ考えて追求していくと、やはり社会にコミットしていくことになっていくんですよね。もう一つは、“政治”って言うとみんなバリアを張っちゃいますけど、“社会”って言うとすごく自分の生活に密接に考える人が多いと思うんです。ボクらにとって政治的なことを言うのは当たり前すぎるというか、もしかしたら麻痺しているのかもしれませんが、一般の人に“このイベントはこういう政治的イシューをもったイベントなんです”と提示してしまうと、裾野が広がらないと考えました」

――たしかに、エントリーしづらいとうい人が出てきてしまいますよね。

オークラ「そのエントリーのハードルを少しでも下げるためにも、“社会”とういキーワードをハメたのはありますね」

矢田「ボクが訊きたかったことを全部話してもらっちゃいました。正直に告白すると、CAMPFIREで初めてこのフェスを知ったときに、メッセージが抽象的に感じてしまったんです。ページ上に“反原発!”とか“打倒!安倍政権”とか、そういった言葉を探してしまいまして…。ボクとかみたいにThe ClashやCRASS、そして90年代のD.I.Y.HARDCORE/PUNKやクラスト・コアを聴いてきたタイプの人は、二の足を踏んだ方もいたかと思うんですよね。でも、今おっしゃっていただいたように、政治的なイシューを出すよりも〈社会をひとつにつなぐ〉と謳った方が、いろいろな層に間口が広がりますよね」

オークラ「まさにそうだと思います。矢田さんがぶっちゃけてくれたのでボクも少しぶっちゃけますが、テーマを決めていく中で、『これだと分かりにくくない?』と揉めたりもしました。でも、ドントラの時とは違う客層の人たちもたくさん来場してイベントを楽しんでくれていたので、結果的にこれが正解だったんだなと思いました」

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