20年目にして、次なる境地へ。暗闇の先にたどり着いたMONOの新しい姿に迫る。

――やはり驚いたのが“Breathe”でTamakiさんのヴォーカルを導入したことです。以前もenvyのテツさんがゲストをやったことはありますが、なぜ今回ヴォーカル導入に踏み切ったんでしょうか?

Goto「今回“Breathe”で、どうしても言葉で伝えたい事があったんだ。ここ数年、クリエィティブな事とはほど遠い、わずらわしいビジネスの問題や様々なエゴに、本当に息ができないほどに疲れ切っていた。でもそんな身動きがとれない状況のなかで、“僕たちを救ってください”とはまったく思ってなかった。むしろ、“過去を断ち切って新しいチャプターに向かうんだ”という決意を、言葉と歌で表現したいと思ったんだ。Tamakiに歌ってほしいと伝えたときは、とても驚いていたよ。だけど僕にはこの言葉をきちんと歌で伝えられるのはTamakiしかいないという確信があったんだ。メロディを含め曲は僕が、歌詞はTamakiと僕と、今回MVを撮ってくれた映画監督のJulien Lavyにも手伝ってもらって完成させた。結果的に、Tamakiの彼女の歌は想像以上に美しかったし、とても心に響くものになったと思う。実はこの曲をシングルとしてリリースした後、アメリカのメディアが“Tamakiの声はニコ(THE VELVET UNDERGROUND)のように切なく、美しい”と書いてくれて、嬉しかった。伝わったんだと思ったよ」

――もうひとつ意外だったのが、今回はエレクトロニクスを導入している点です。これまでもストリングス等のバンドの外の音を取り入れてはいましたが、デジタルな要素が入ってくるのは初めてではないかと。無機質なエレクトロニクスが、有機的なサウンドと互いに引き立てあっているように思います。これはやはりGotoさんのソロ、Behind the shadow dropsでの手応えがフィードバックされているんでしょうか?

Goto「そうだと思うよ。ソロでジョン・マッケンタイア(ds/TORTOISE、THE SEA AND CAKEほか)と初めて仕事したり、バンドサウンドとは別のインスピレーションやアイデアがあったからね。昔から好きだった初期のフィリップ・グラスのような独特でユニークな世界感を試してみたくなったんだと思う」

――また、今回はいつになく短い曲が多いことと、以前のように溜めて溜めて一気に爆発させるのではなく、滑らかに展開していく曲が増えたように感じました。新しい要素を取り入れたことで、曲の構成や展開にも変化が出たという感覚はありますか?

Goto「常に、これまでやった事のない新しい事にチャレンジしたいと思っている。少しの変化が、やがて大きな変化に繋がるからね。でも、曲の長さはあまり意識していなかったよ、自分の心が音楽の中で誠実に表現できれば、どんな長さでもかまわないと思う」

1 2 3 4