バカ笑いしているター君を見て確信した。
これは全然違う。僕は笑いたいわけではないのだ。
この「爆笑して盛り上がる」という軽い帰結を欲しがっている訳では全くないのだ。
「ねぇ、これ何かおかしくない?」という問いかけへの答えとして「ケツが出ている」
という状況を単純になぞったような事を聞きたいわけではないのだ。
そもそも自分で出しているのだから、知っているに決まっているだろ。
僕は厳かなる「性」を託した「半ケツ」を、もっと深淵なものとして受け取ってほしかったのだ。この「半ケツ」は笑ってはいけない方のケツなのだ。目撃した途端に目つきが変わる事が期待される、そんな「半ケツ」だ。
隠れんぼにトランシーバーを持ち込む事で、遊びに深さを持たせたにも関わらず、
エロ本に深みを持たせられない、憧れのお兄ちゃんの限界を見た気がして苛立ちを覚えた。
いつまでも笑っているター君を見ていると、苛立ちは喉元まではいあがり、まるで棘のある植物が下腹部から伸びきているみたいな気分になった。
植物は僕の喉仏にからみつき、口腔内にその根を広げようとしている。
とても息苦しくなった僕は声を出そうとするが口いっぱいに繁殖した植物が邪魔で乾いた音しかでてこない。
その時ガラリと部屋の窓が外からあけられた。買い物から帰ってきたター君の母親だった。すぐに状況を察知した母親は「子供がそんなん見たらあかん!」とどなる。
その瞬間、口からぼとりと黒い何かが落ち、何とか声を出せるようになった僕は喉に絡みついた棘だらけの植物を吐き出すように大声で叫んだ。
エロ本片手に「半ケツ」のまま、大声で叫んだ。