2023年4月Disc Review!

インタビュー記事公開のため、3月分はお休みした月イチのディスクレビューです。3月分も込みで考えてみたんですが、結局4月リリースのものがほとんどという感じです。

季節の移り変わりについていくのも大変ですが、張り切っていきましょう(カラ元気)。

■METALLICA『72 SEASONS』

なんだかんだ言って聴いてしまうMETALLICAの新作。前作の2枚組からの今回は1枚のみながら77分オーバーと、まだまだ元気です。
ぶっちゃけ、最初に公開されたシングル曲を聴いたとき、ちょっとう~んと思ったんですよね。NWOBHっぽさが強く、荒っぽくやれば1stに入っていてもおかしくない曲だけど、それだともう若くないというか、衰えが強調されちゃわない?という感じ。とはいえ、実際にアルバムを通して聴いてみると「やっぱMETALLICAだな」と手のひらを返してしまいます。
実際、緩急をつけるために瞬間的にスピードを上げる場面はあるけど「速い曲」はほぼないです。なのでスラッシュメタルらしさを期待すると、物足りなさが残る(そのあたり、前作は少なくても速い曲があった)。ただその分、ミッド~スローな曲が味わい深いんですよね。ジェイムズ・ヘットフィールドの声もちょっとザラつき気味で、遅くてブルースが香る曲のほうが断然合っているように聞こえるというか、METALLICAしています。
かつてのような神がかり的なマジックも新しい挑戦もないんですが、安心の出来栄えで、じっくり聴きこみたいアルバムです。天下を取ったバンドからしか接種できない栄養があるんですよね。ただもうちょっと挑戦的な部分が見えていると、印象も変わったかなと思います。タイトルや歌詞にはテーマがあるそうなので、インタビューとかを読みつつ向き合うとよさそう。なんだかんだ長い付き合いになりそうです。

■ANTHEM『CRIMSON & JET BLACK』

ジャパニーズ・メタル重鎮の17作目。Nuclear Blastと契約し、世界同時リリースとなった作品です。
伝統的で正統でまっすぐな「ヘヴィメタル」ですね。めちゃめちゃかっこいい。解散時期を挟むとはいえ、結成から40年以上経つのに、落ち着くどころか昔より激しくなっています。同時に良い意味での暑苦しさも、ますます過熱しっぱなしです。
海外も視野に入っていることもあって、歌詞が全編英語になっており、以前の日本語ならではのリズム感がなくなってしまった部分はありますが、コブシの入った歌い回しは健在。途中ミッドテンポやインストも挟みつつ、適宜キーボードで音を彩りながら、ドコドコピロピロと駆け抜けていきます。
とにかく前のめりな勢いに気圧されますが、職人技な曲作りも嘆息もの。前述の通り正統なヘヴィメタルですが、楽曲提供の仕事をしているメンバーがいるおかげか、曲の作り方/まとめ方がうまいんですよね。メタル以外をちゃんと知っているからこそ、メタルとしての純度を高める方法を心得ている感じがします。テンションが高いのに貫禄も十分。ある意味無敵ですね。これだけキャリアが長いと、初期や中期が全盛期とされがちですが、ANTHEMの場合はまさに今が全盛期じゃないでしょうか。
ちなみに特に説明がないですが、最後の“Danger Flight”は、2012年の『BURNING OATH』に入っている“On And On”のリレコ。これがまたちょっとエモい感じのメロディでかっこいいんですよね。

■AMALA『殻・逝・霾・宙』

OVUMでの活動でも知られるメンバーによる、東京のインスト・ポストメタル・バンドの新EP。中国の彫刻作家とのコラボ作で、トラックとしては4曲だけど、全体でひとつの作品になる組曲形式にもなっています。
ポストメタルといっても、いわゆるNEUROSISのようなスラッジ/ドゥームなタイプとも、RUSSIAN CIRCLESあたりに見られるマス/テクニカルなタイプとも違います。むしろ引っ掛かりのある重厚なリフで攻めるサウンドは、Djent方面のバンドとの近似値が高いように思います。とはいえピロピロと忙しく音を詰め込みまくるのではなく、ポストロックあがりというキャリアを生かし、リリカルなアルペジオと大鉈を振り下ろすようなリフを行き来することで、ドラマティックに対比させる組み立て方は、意外とありそうでなかったスタイル。モノトーンかつ東洋的な雰囲気をにじませつつ、じっくりと大きな円を描いていくかのように進行していく様からは、TOOLの匂いも感じられます。こうしてみると小難しそうな印象になるかもしれないですが、曲そのものはメリハリがあり明快。むしろキメがハッキリしたリフが並んでいるので、わかりやすいくらいです。
結果的に「ポストメタル」という定型にはまっていくのではなく「ポストロック×メタル」を再構築することで、自分たちならではのバランス感覚を提示した1作。まだ見つかっていないというだけで、ハマる人はめちゃめちゃ多いと思います。

■STORY OF THE YEAR『TEAR ME TO PIECES』

アメリカのスクリーモ/ポスト・ハードコアバンドの6作目。デビュー作『PAGE AVENUE』が2003年のリリースだから、もう20年選手ですね。アートワークにデビュー作と同じ落下する人間をあしらった通り、楽曲も初期を意識した感じになっています。もともと同世代のスクリーモ・バンドに比べると音楽性のブレも少なかったバンドではあるんですが、それでもあえて初期に寄せたように聞こえます。ダンスミュージックやR&Bあたりの影響を感じさせない、2000年代前半にメジャーになったスクリーモのお手本のような内容です。
とはいえただ昔の焼き直しをするのではなく、ちゃんとアップデートもされています。適宜エレクトロニクスを取り入れたり、ブレイクダウンでもほんのりとDjentを匂わせたりと、古き良きスタイルを古臭く感じさせないようにうまく補強。外部ソングライターも参加しているのも功を奏していると思います。H2Oあたりのメロディックなハードコアの影響も健在で、骨っぽさを残しつつ柔軟なんですよね。デビューにリアルタイムで立ち会ったアラフォーにバッチリ刺さりつつ、今様のポスト・ハードコアを聴いている人にどう響くか気になります。
2018年に、脱退していたメンバーの復帰と、別メンバーの解雇といったゴタゴタを経て、現在は4人で活動している彼ら。アルバムの充実具合に対して大丈夫なのかという気がしないでもないですが、バク転やギターを投げて交換するといったアクロバティックなステージはまた見たいですね。

<LINK>

METALLICA:https://www.metallica.com/

ANTHEM:http://www.heavymetalanthem.com/

AMALA:http://amala.tokyo/

STORY OF THE YEAR:http://www.storyoftheyear.net/