DC HARDCORE、カオティックHC、ポスト・パンクの源流の一つ、THE POP GROUPに緊急インタビュー!

the pop group

◎さて、アルバム・タイトルの『ハネムーン・オン・マーズ』とは一体?

『ハネムーン・オン・マーズ』とは、どこかの惑星にウエディングドレス姿で降り立って、二日酔いのままウロウロ歩き回って、「ここ、どこよ?」と思っているイメージ。俺もたまに朝、目が覚めて、今のところまだこの惑星にいるけれども火星で新婚旅行に行ってる気分になることがある。町ですれ違うこいつらは誰なんだ、このゾンビどもは、と。自分の星に居ながらにしてね、こっちがエイリアンみたいな気分になるよ。俺に言わせれば、この世はサイコパスによって営まれ、管理されている。だったら、俺たちでもっとマシな場所に作り替えることだってできるはずじゃないか。SF作家のロバート・A・ハインラインに「Stranger In A Strange Land(異星の客)」って作品があるんだが、要はああいう感じのコンセプトだな。問いかけ、だよ。

◎ということは、このアートワークはその古いシステムを絞り出したら黒い絵の具になって…

アートの批評や論評は皆に任せるよ。アートってもんは、あんまり説明しないに限る。アートってのはね、疑問符なんだよ。アートとは疑問符である。俺も若い頃、ブリストルにあるポストコンセプチュアルアートの美術館に、学校には行きたくないが他に行く場所もないっていうだけの理由で行ったもんだが、そうすると床に小石が敷き詰められていて、「なるほど、佛教の禅ってやつか」と思うだろ。で、わかったつもりで眺めていると、そのうち違うイメージが湧いてくる。影響されるんだよ。頑張ってわかろうとするんじゃなくて、魔法みたいなもの。解釈しようとはしない。やってもわからなきゃ、自分が受けてきた教育を疑うことになる。しかし、勝手に納得した後で壁の解説を読むと「この小石は絶望を象徴するもので」とか何とか書いてあったりする。「いやあ、作った人はそんなこと思っちゃいないんじゃないの? どこかのジャーナリストが言ってるだけでさ」 と思うよな。俺は、THE POP GROUPのアートワークに関しては、それと同じで、こっちから放り出したものをみんなに自由に拾って、持ち帰って消化するなり、吐き戻すなりしてもらえれば…、俺としては音楽とは巡回のゲームだと思っているんで、優れたミュージシャンと若手アーティストが互いに影響し合っていけばそれでいい。俺たちのリミックスをやってくれたGoth-TradやHanzは「マーク! 無償でやるよ! アンタの音楽が大好きで、アンタからの影響でこういうことをやり始めたんだから!」って言ってくれたけど、俺だってアイツらに影響されてるわけだから、これはもうひとつのエコロジカルな生態系だな。誰もが互いにインスピレーションを与え合う。素晴らしいじゃないか。パンクにはそもそも、人の上に人を造らずって考え方がある。それどころか、初期パンクにおいてはステージ上にいるヤツらより、客席にいる人の方が重要だったんだぜ。客の方が自信持ってたもんな。昔は俺も、コンサートをやってると出てるバンドが好きじゃなくてもそこに客で来てる連中とつるみたくて金払って会場に入ったもんだよ。THE POP GROUPもそういうところがあって、しまいにはTHE POP GROUP という教会のような存在になった。変わり者たちのための教会(church for freaks)ってやつ。だからうちのレーベルはFreaks R Usって名前なんだ。似た者同士が何となくその下に集まってくる傘のような存在であろう、と。避難所(haven)だな。はははは。

◎先程、レコーディングではミスもキープしておく、という話がさっきありましたが、普通はミスって消してしまいたくなりますよね。それを残しておくって、勇気がいることなんじゃないですか。

確かに。しかし俺に関する限り…、俺とギャレスとダンに関する限りは、それが好きなんだよ。行った学校が悪かったのか、親の育て方が間違ってたのかわからんが。ただ、誰かに言われて…、スタジオで誰かに「ベースの音量を上げすぎちゃダメだ」と言われたらそうしたくなるのが俺だし、4~5歳の頃から何か「それはやっちゃダメ」とか「やるべきじゃない」とか言われれば、やってみようと思うのが俺だったからな(笑) わかる? 反発がチャレンジに繋がる。そもそもパンクの本質が、政治に歯向かい、自分に挑戦し、音楽に挑み…、そうやって何か新しいものを求めていく時代の精神だった。退屈ってヤツとの闘いだ。

◎そうやって新しいものを生み出しても、過激に感じるのはその時だけで人間はすぐに慣れてしまう。だからまたさらに過激なものをどんどん作り続けていかないと同じ興奮は得られない。その継続の難しさたるや。

そう、新しい何かが新しい正統になってしまう。そこが問題だ。俺の友達やバンドの連中でも、新しいものを作り出したやつは大勢いるし、その時は騒がれもしたが、それと同じことを20年もやって安穏としていたんじゃ、何の意味もなくなってしまう。

◎そうすると、若い人たちから見たら「年寄りだ、つまらない」ということになる。THE POP GROUPはまだそうなっていませんが。

あぁ。そうなるワケがない。あり得ない。つじつま(comformity)なんてものは棺桶に突っ込んでガンガン釘を打っちまえばいい。Fuck off, and die! 日本語に訳すのに困っても、それはそっちの問題だ。俺には関係ない。ガッハッハ!

◎時代も音楽世界の雲行きも昔に比べずいぶん変わった今、THE POP GROUP最大の存在意義は何だと思いますか。

フム…。昔から思っているのは、俺たちan explosion in the heart of the commodity(商品の中心で爆発するもの。すなわち物事の中心にいながら反発するもの)でありたいということで、これはシチュアシオニストの発想なんだが…。そう、俺の友達でもあるMASSITVE ATTACKの3Dがアンチ・スターっていう発想を打ち出してたが、俺はアンチ・メディアを実践している。アンチマター(antimatter)、だな。俺たちがいるのは、パラレルユニバースの逆側なんだ、と。

◎パラレルユニバースの逆側・・・

そう。70年代にはRock in Oppositionなんてのもあったんだがね。まあ、要は、そうだな…オルタナティヴってことかな。

◎あぁ、それならわかります。でも、今となってはオルタナティヴもオルタナティヴのオルタナティヴぐらいのところまできてしまているような気が…。

そのとおり。でも、いいんだよ。その辺を誰かに切り替えられるんじゃなくて、自分で切り替えて居場所を決める、というのが主旨だから。俺は分裂気味だしね。だからセラピストが必要って話に戻るわけでさ!

◎現在、何か共感を持って取り組んでいることは他にありますか。

マジな話になるが、このアルバムはMERCY SHIP というチャリティに貢献することになっている。大型の船を改造して、戦闘地域の周辺で手術などを施せる施設にしている団体なんだが…。まあ、俺がこんな話をインタビューでするのも何だか焼きが回った感じでアレだけどさ、俺たちとしては本気でこれに取り組んでいるんだよ。俺に言わせりゃ、アーティストってのは何か歌で訴えるなら同時に何か行動もしろって話なんでね、髪の毛なんかいじってないでさ。ただ、やるなら自然にやらないと。こういうのは俺は、バンドをやってなかったとしても関わってたと思うよ。しかし、今、結構タイミングはいいんだよな。特にイングランドでは。クールな連中が続々とジェレミー・コービン率いる労働党に加勢してきているし、世界的にもジョセフ・スティヴリッツっていうすごいエコノミストが世界経済をまったく違う視点から捉えていたり、もはや右も左もなくなってきている。古い体制が崩壊していることに気がついた人たちが、新しい何かを夢に描き始めている。俺にとってクールなのは、超巨大企業のてっぺんにいるクールな連中…、Googleのアプリを扱ってる会社とか、ハードウェアの大会社とか、そういうところのお偉いさんが、THE POP GROUPに入れ込んでるってことで。だから、敵・味方とか、アイツらと俺ら、とかいうんじゃなくて、クールで知的で頭のいい熱心な人間が世界中に登場していて、空きビルに勝手に住み着いてヘンプのTシャツなんか着てる連中なんかより余程パンクなヤツが、巨大なマルチメディア企業を引っ張っていたりする。そういう時代だ。わかるかな、なんか、うまく言えないけど。まあ、とにかく、俺としては今、インターネットを活用して活動しているアクティヴィストや、科学者や、いろんな夢を描いている人や、ビックリするような人が大勢いるんだから、インターネットの自由を守ることには非常に関心がある。ああいう人たちは、現行の政治家なんかより千年は先を行ってるぜ。政治家なんてのは、今現在、何がどうして起きているのかさえも把握していない。

◎そういう人たちが集まれば、讃歌はTHE POP GROUPの曲ですかね。

いいねぇ。手に手を取って…って、「We Are The World」かよ。それならMARK AIDにしよう、BAND AIDじゃなくて。ガハハハ!

thepopgroup_honeymoononmars_cover

the pop group “honey moon on mars”

1 2