text by MOCHI
photo by Katsuki Mitsuhashi(Live)
このリリースに立ち会えたことを、うれしく思う。Swarrrmの新作“こわれはじめる”は、そんなアルバムだ。
理不尽とも言えるほど混沌としたグラインドコアとしてスタートしつつ、ブラックメタルや激情系ともリンクするサウンドで、「CONVERGEへの日本からの回答」とも目される存在だった彼ら。しかし凝り固まった価値観と対峙し、我が道を切り拓き続けてきた結果が、「こわれはじめる」からは感じられるはずだ。暴風雨のごときブラストビートが轟く中、演歌や昭和歌謡に肉薄する熱きメロディとともに、高らかに愛を歌う。さらに驚くのが、バンドの中心人物で曲作りを担うKapo(g)は、自分たちはあくまでグラインドコアであると言い切っていること。「こわれはじめる」はSwarrrmの、そしてグラインドコアの、進化のひとつの到達点なのだ(もちろん、彼らにとっては、ここも通過点のひとつであるだろうけれど)。
今回の新作リリースにあたり、異端であることを自覚しつつも、グラインドコアを突き詰め続けるKapoとTsukasa(vo)にインタヴューを敢行。二人とも言葉数こそ少ないが、音で語るタイプなのだと思う。だからこそ“こわれはじめる”は、多くの人に聴かれてしかるべき作品なのだ。
――初めまして、LIVEAGEの望月と申します。まず何よりも、新作“こわれはじめる”のリリース、おめでとうございます。聴かせていただいたとき、その独自過ぎるアプローチに驚くと同時に、これはすごいアルバムだなと思いました。リリースを控え、今の心境を教えてください。
Kapo:いいものができたと自負していますし、満足しています。Swarrrmは第三者に向けてというよりも、自分たちが楽しめるものを作る為にやっているので。いつも自分が満足できるまで、しつこく曲もミックスもこねくり回すのですが、今回もエンジニアのアキラ君に付き合ってもらい、完成までこぎつけることができて、本当に嬉しいです。
Tsukasa:月並みですが、嬉しいです。
――“こわれはじめる”は、Swarrrmにとって5枚目のアルバムとなりますよね。これまで多くのスプリットやコンピレーションにも参加してきましたが、やはりアルバムとなると、格別の力の入り方や思い入れがあるのでしょうか?
Kapo:アルバムは数年ごとにしか作れないので ベストな内容で、バラエティに富んだものにしたいと考えています。前作“FLOWER”(2014年)はかなり難産だったので、もうアルバムを作るのは無理かなと考えていたのですが、予想よりも順調に進行したし、しかもかなりレベルアップできたと思います。
――今回も手を組んでいるレーベル、Long Legs Long Arms(3LA)からは、これまで2016年の編集盤“20 Year Chaos”、KILLIEとのスプリット“耐え忍び霞を喰らう”もリリースしており、強固な関係が伺えます。3LAといえば、レーベルのほかに、ネオクラストやブラッケンド、激情系と呼ばれるハードコアを多く取り扱っているディストロというイメージも持たれています。その3LAと関係を持つことになったきっかけは、どのようなものだったのでしょうか?
Kapo:正直、3LAの存在を知ったのは“FLOWER”をリリースするときでした。follow up(DISK UNION発行のフリーペーパー)に記事を掲載してもらったんですけど、僕らの隣のページに、isolateが載っていたんです。その時は彼らの名前も知らなかったので、あれこれと検索していくうちに3LAにも行き着いたんですね。そのおかげで、ブラッケンドハードコア、ネオクラストといったものも知ることができました。しかも、どうやら旧知の仲であるSTUBBORN FATHERが3LAと親交があるみたいだったので“20 Year Chaos”の制作を依頼してもらって。それからの付き合いになりますね。