それと当事者の貴重なインタビューや当時の貴重なバンドの写真、貴重なライブ映像が観れるのも、この映画だけなので、俺は隈なく観ちゃうのも追記しておく。
当たり前だが時代背景も日本とは全く違うので、そういった視点でこの映画を観るのも面白いと思う。 例えば10代の若者がパンクな格好をしてたら30代の中年に絡まれるといったことは日本ではまずないと思う。 それが80’sのDCでは実際に起こっていたり、みんな同じような服装をしないといけない時代にパンクな格好や変わった服装をしていたら不良とか変な人と思われてしまう、そういった時代背景も果敢知ることができるのも興味深い。 そういえば「SALAD DAYS」を観て、東京を拠点に活動してるcurveというバンドがいて、そのギターボーカルの羅悠靖(らゆうせい)さんが帰国子女か何かで小さい頃はDCエリアで育ったらしく、彼の家の数ブロック先にライブをする場所があって、そこでMinor Threatとかがライブをしてた話を2000年代に聞いて衝撃を受けたことを思い出した。 彼は親や親戚に「彼等は不良だからあの辺りには行くな、近づくな」と言われていたらしい…(笑) そういったことを思い出させてくれたこの映画は最高だ。
それからこの映画の登場人物についてはBlack FlagのボーカルHenry RollinsがDC出身だったり、NirvanaではドラマーでFoo FightersではギターボーカルのDave GrohlがDCエリア出身だったり、Sonic YouthのThurston Mooreは実はDC音楽大好きだったり、そういったことがこの映画で知れるのも面白いのではないだろうか。
DCの黒人harDCoreバンドBad Brainsが存在しなかったら、Dischord RecordsもMinor Threatも存在しなかっただろうし、Minor Threatが解散しなかったら80’s中期に起きたRevolution Summerと呼ばれた社会的なムーブメントも起きなかっただろうし、それが起きなかったらPositive Force DCと言った団体をMark Andersen(※11)等が始めてバンドと絡んでベネフィットライブをしなかっただろうと考えたら、、、その時代と空気がもたらしたDC音楽シーンは最高だ。 これを上手い具合にまとめてわかりやすく当時のことを生々しく伝える映画「SALAD DAYS」は本当に素晴らしいので1人でも多くの人が観てくれることを切に願う。
最後に映画には罪はないし、映画の内容についてクレームをつけることは一切ないが、翻訳に対しては言いたいことがある。 翻訳者も人間だし、10人中10人が同じ翻訳にならないことは俺にもわかる。 また映画では字幕の文字数も決まってるし、強引な言い回しになってしまうのもわかる。 でも、俺は人の名前の翻訳の間違えだけはどうしても残念でならなかった。 例えばJason Farrell(※12)のことをジョンファレルと翻訳するのはちょっと…。 これは英語を少しかじった人なら誰でもジェイソンと読むことはわかると思う。 それをジョンと翻訳してしまうとは…。 またIan MacKayeはイアンマッカイと読むのが正しいのだが、映画を観る前にすでに映画の予告やポスターを見たらイアンマッケイと書いてあって、、、俺はそれも残念でならなかった…。 俺がDC音楽にハマる頃にはイアンマッケイと読むことが日本では広まっていたし、雑誌等にもそう書かれていたし、今でもIan MacKayeのことをイアンマッケイと呼ぶ人は多い。 圧倒的にイアンマッカイと呼んでる人は少ない。 俺も事実を知るまではもちろんイアンマッケイと呼んでたのも事実だ。 しかし、俺はDC音楽が好き過ぎて2000年代から何度もDCに足を運んではライブを観たり、DCバンドのメンバーと話したり、それを繰り返していたら最終的にIan MacKayeから「お前は日本人でDC音楽が1番好きな奴だ。」とまで言われた。 俺は本当にDC音楽熱狂者なのだ。 そんな俺がIan MacKayeと話していたら、日本では俺のことをイアンマッケイと呼ぶ人が多過ぎる、本当はイアンマッカイが正しいのにマッケイと呼ばれるのに心底疲れている」と言っていたのだ。。。それは弟のAlec MacKaye(※13)も然り。 その事実を知ってから俺はMacKaye兄弟のことをマッカイと呼ぶことにして知り合いにもそれが正しいことを伝えた。 しかし、中にはその呼び方に反対する知り合いもいて、SNSの中で「本当に本人がそんなことを言ってたのか?」とか「正しい発音はケとカの中間だと思うからマッケイでも良いじゃん」みたいなこと言われたり、俺の言ったことを信じない知り合いもいた。 そのぐらいマッケイと読むのが正しいと思ってるこの日本で、この映画がマッカイと呼ぶのが正しいことを記してくれたら少しは情勢が変わってくると思った。 だから、俺はこの映画の中心人物であるIan MacKayeの呼び方は正しく書いてもらいたかった。 この映画は全国で公開されるのだから、正しい名前で書かれていたら彼が喜ぶことも間違いないし、この映画を観てマッカイという呼び方が正しいと思う人が1人でも増えれば良いなと思った。 しかし、もう時はすでに遅しなので、せめてこのレビューを読んだ人はIan MacKayeのことはイアンマッカイと呼んでもらいたいし、それが正しいことを覚えておいてほしい。
俺のレビューは以上、最後まで読んでくれてありがとう。
※1 90’sにPunk Ninja Brigadeというバンドをやりつつ、I Drink MilkというZineを発行してDC音楽シーンを日本に紹介したDC音楽好きのパイオニア。PNB解散後はDoubleというバンドで活動し、今はPNBが再結成して活動中。また現在ステンスキというデザイン会社をやってる。 個人的にI Drink Milkは最高のZineの1つだと思うのでLIVEAGEで公開を希望。 http://www.steinski.net/
※2 九州は福岡在住で90’s後期~00’s中期にかけてSecond Lakeと言う名のサイトでDCバンドのレビューをしたり、ディストロをしていた。また2005年には福岡にIan MacKayeが現在もやってるバンドThe Evensのライブのブッキングをした。
※3 彼は90’s後期から00’s初期にDCに住んでたこともあり、DCミュージシャンの知り合いが多く、またFugaziのラストツアーにも同行したり、当時DCが発行した新聞にも載ったことがあったり、とにかく凄い人。帰国後はtout ensembleやZというバンドで活動してた。 http://toutensemble.bandcamp.com/
※4 Do It Yourselfの略。自分でやること、作ることって意味。
※5 The Slinkees~Teen Idles~Minor ThreatをやってたIan MacKayeとJeff Nelsonが運営しているDCのインディペンデントレコードレーベル。友達であることとDCバンドじゃないとこのレーベルからリリースすることができない(ハーフナンバーは別)といった地元密着型なスタイルにはリスペクト。現在も運営中。 http://www.dischord.com/
※6 ハードコアの思想やライフスタイルの1つ。喫煙、麻薬、アルコール、快楽目的のみのセックスをしないというのが基本的な理念で、それまでのロックの価値観であったセックス、ドラッグ、ロックンロールという享楽的な生き方に対するアンチテーゼと捉えられている。
※7 エモコア、エモーショナルハードコアとも呼ばれたりする。メロディアスで感情的な音楽性、心情を吐露するような歌詞が特徴。音楽ジャンルの1つ?となってる。
※8 The Slinkees~Teen Idles~Minor ThreatをやってたIan MacKayeとJeff Nelsonがやってたユニット。 http://www.dischord.com/band/egg-hunt
※9 Gray Matterというバンドをやってたメンバー3人がThe Slinkees~Teen Idles~Minor ThreatをやってたJeff Nelsonをドラマーとして迎えやってた80’s中期~後期のDCバンド。甘酸っぱいパンクロックを聴かせてくれる最高なバンド。彼等の名曲”Swan Street”は京都のバンドBack To Basicsがカバーをしていてたまに演奏してたりしてる。 https://www.youtube.com/watch?v=wZaV3hP0Xfc
※10 DCミュージシャンのChuck Brownが作った音楽ジャンルの1つと言われている。Funkを押し進めたスタイルでとにかく聴いてると自然と踊りたくなる素敵な音楽。Trouble Funk等が有名で彼等は80’sに来日もしてる。 https://www.youtube.com/watch?v=buXt-yyZEss
※11 DCのインディペントな活動団体Positive Force DCの創始者の1人で80’sではアパルトヘイト反対を訴えたり、85年から活動を始めて今でも精力的に活動してる。彼と彼の相棒Mark Jenkinsの書いた”Dance Of Days”という本は俺がDC音楽を深く知ることができた教科書の1つであり本当に素晴らしい本の1つである。 また彼の活動をより一層知ることができるMore Than A WitnessというDVDがリリースされているので興味がある方は是非チェック。 http://morethanawitness.com/
※12 Bells of~Swiz~Sweetbelly Freakdown~Bluetip~Retisonicといったバンドを活動してた最高のギタリストの1人。現在はLA在住でRed Hareというバンドで活動しながらHellfire Recordsというレコードレーベルをやってる。 http://hellfirerecords.net/
※13 Ian MacKayeの実弟。彼がやってたバンドはとにかく全てかっこいいので全てチェックすることをお薦めしたい。たまにMacKaye兄弟のどっちが好きという話題になるが、俺は余裕でAlecのほうが好きだったりする。Emoの先駆け的なバンドは彼がやってたFaithであり、Subject To Changeという音源は歴史的名盤なので聴いたことがない人は、ぜひ聴いてみてほしい。 それと知らない人が意外と多いのが、Teen Idlesの7インチのジャケの絵は実はIanではなくAlecだったりするので知らない人は知ってほしい。 https://en.wikipedia.org/wiki/Alec_MacKaye
※おまけ もしこの映画を観て80’s中期~後期のDC音楽シーンに興味を持ったのなら、下記のサイトをチェックしてみて欲しい。映画でも使われているライブ映像が観れたり、DCにツアーできたバンドのライブ映像が観れたり、とにかく最高なサイトなので是非。 http://www.dc-85.com/