24HOURSの隠れた名曲Condition Oaklandが続き、じわじわと沁みてくるメロディに、20年以上前にJAWBREAKERを聞き込んでいた記憶を重ねていた。あの頃はスタジオに行けばキオがいて、ライブハウスに行けばヒデちゃんがいた。その3人がこうして同じステージを仰ぎ見ている。そんな感慨に耽っていると、ラストソングという突然のコールとともに、開放弦を使ったリフが印象的なKiss the Bottleのイントロが…。この曲を何千回聞いたことだろうか、目頭が熱くなる。So I lean on you sometimes. Just to see you’re still there. のあたりで、涙腺崩壊だ。何者にもなれなくて、金もなく、ただ夜をやり過ごしてきた、20年前の気持ちを思い起こさせる。そして今になっても、何者にもなれないから、余計に悔しくてこの歌詞が染みる。How were we born into this mess? そういうことだ。
感動に打ちひしがれて、クラウドサーフィンどころではなく、ただ僕はそこに立ちすくんで口ずさんでいるだけだった。広大な野外ステージで、涙を堪えながらステージを見つめていたのは僕だけでなく、周りのアラフォーたちも皆そうだったようだ。演奏を終えたメンバーは、ステージから舞台袖に戻ってしまった。アンコールの声が会場全体から湧き上がり、これでは終わらない雰囲気に。そして、悲鳴にも似た大歓声とともにステージに舞い戻った3人。アンコールとして演奏したのは、10分にも及ぶBivouacである。
夜空にとろけていくような柔らかいクランチトーンで、アルペジオを混ぜながらコードが響き、ギターの足りない音域をカバーするようにベースが追いかける。サビの部分でディストーションペダルを踏み、Father! Mother! というブレイクの雄叫びが虚空にこだまする。しばらくのリフレインの後、ニュースのナレーションのような音声が流れ、荒々しいドラムのフィルインとともにカオティックな展開へ。ブレイクはギターを掻き鳴らし、リズム隊はより一層ヘヴィーな8ビートで突き進む。いよいよ、クライマックスに達するとドラムのアダムはドラムセットを蹴散らかし、クリスもベースを放り投げる。ブレイクはマーシャルの前でさらに激しくストロークを続け、フィードバックノイズをぶちまけると、ほどなくして舞台袖へと戻っていった。
終演を告げる客電が灯され、あっという間に1時間ほどの演奏が終わった。まさか、全作品中でも最も重厚かつ宗教的な歌詞のバラードであるBivouacをラストに持ってくるとは思えなかったので、皆あっけにとられていた。個人的にはShield Your Eyesの方が良かったと思っていた。再結成にありがちな、ベストヒット的な選曲にして、最後は一番オーディエンスが好きで、暴れるような曲をやれば良いものだが、彼らあえてそうしなかった。