RIOT FEST 2017 リポート 初日編!

JAWBREAKER

最初のお目当てはINVSN(invasion=インヴェイジョンと読む)。元REFUSED、THE (INTERNATIONAL) NOISE CONSPIRACYのヴォーカル、デニスを中心とするスウェディッシュバンド。ベテランゆえのステージパフォーマンス、安定した質の高い演奏、緩急織り交ぜたセットリスト、さらにメンバー全員が洒落ているのがこれまたいい。終盤にはデニスがステージから降りて、オーディエンスの中に入って歌うなど、盛り上げ方もこなれている。ポワーポップ系のサウンドを通過し、新作ではよりニューウェーブ的なアプローチを成功させていたこともあり、飽きることなく全曲じっくり楽しめた。

降り注ぐ日差しの下で飲むビールは格別だ。ちなみに500mlのテカテビールは$9から。ここからで一旦解散し、僕は隣のステージで始まったエレクトロ系のアーティストLIARSを観る。花嫁衣装で登場するなり、奇声を挙げてスタート。意味不明なダンスと無駄に熱いステージングは、予想通りの変態エレクトロだ。最初はそれだけで面白かったが、曲が単調で次第に飽きてしまった…。

ちょっと休憩をしてから、大御所パンクロックバンドのXとBUZZCOCKSの演奏へ。ヒデちゃんはXが特に楽しみだったようで、食い入るように見続けていたが、僕はいまいちあの妙なロカビリーっぽさが苦手で、早々にステージ後方へ退散。次に隣のステージに登場するBUZZCOCKSを待つ。いよいよ登場したピート・シェリーはかなり太って禿げ上がってしまったが、スティーブ・ディグルはそれほど劣化していない(笑)。Fast Cars, Orgasm Addict, Ever Fall In Loveなど、往年の名曲を次々と畳み掛けるようにプレイ。たまに高音域のヴォーカルが苦しそうだったが、巧みなコーラスと安定した演奏でまとめあげている。デビュー当初よりも音圧のあるツインギターも心地いい。

手短なMCと無駄のないパフォーマンスで、あっさりと演奏は終了。89年の再結成以来、コンスタントに活動していることもあって、ライブの安定感もあった。ほぼ30年を経た現在でも、彼らの楽曲は古臭さを感じさせないのが不思議だ。ツインギターを活かした8ビートの楽曲に、起伏に富んだキャッチーなメロディーの組み合わせは、彼らの専売特許であることを痛感。しかもアイロニーとウィットに富んだ歌詞(ピートがゲイということも影響しているのだろう)も、時代に埋もれることがない。しっかり全曲を堪能した後、VIPエリアに戻って小休止。

18時を過ぎる頃には陽が傾き始め、いよいよ地元シカゴ出身のMINISTRYが始まる。ナチスを想起させるシンボルが入った垂れ幕(もちろんアイロニーであろう)が左右に飾られ、メンバー全員真っ黒い衣装。大学生時代に聞いていたCDから受けた無機質なマシンサウンドという印象とは違って、生演奏で再現される爆音はやはり圧倒的。

ジェロ・ビアフラとのユニットであるLARDの作品と併せて、彼らのThe Mind Is a Terrible Thing to Tasteはよく聞いていただけに、名曲Thievesをやってくれたのは嬉しかった。派手なアクションや説教臭いMCは無く、戦争や暴動の映像がずっと流れ続け、終末観を漂わせる感じが、これまたダークである。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のクライマックスシーンだけを無限リピートしているような感じだ。数曲をステージ後方で眺めていたが、曲調があまり変化せず、だんだん退屈に…。


ビールを買いにメインステージを離れてしばらくすると、いよいよ隣のステージでNEW ORDERの登場。過去に僕はFUJI ROCK2001のホワイトステージで観たことがあり、その時の新譜も素晴らしく、ベーシストのピーター・フックも健在だったので、文句なしに最高だった。しかし、今回フッキー無し。とはいえ、ドラムスのスティーヴンとキーボードのジリアンという、二人のオリジナルメンバーがいるので良しとしておこう。

Bizarre Love TriangleやTrue FaithやBlue Mondayという、歴史的名曲をずらりと演奏。今までのパンク系とはオーディエンスの反応もやはり違う。ダンサブルな曲がこの時間帯に聴けるのは嬉しい。バーナードの歌はやはり高音域がおぼつかないが、それもこのバンドの味である。特に印象深いのは、JOY DIVISION時代の名曲であるDisorderとアンコールで披露したLove Will Tears Us Apartである。イアン・カーティスの死後からすでに四半世紀を経て、この曲をシカゴで聞くことができるとは思いもしなかった。

さて、初日の大トリはNINE INCH NAILSだ。このフェス前にリリースされた新譜でも、健在ぶりをアピールしていたが、その存在感を示すようにNEW ORDERを凌ぐオーディエンスで膨れ上がっていた。あまりの人の多さに加え、ヒデちゃんもキオも興味がなさそうだったこともあり、数曲を楽しんで早めに撤収。僕自身もNEW ORDERをかなり前の方で観てかなり疲れてしまっていた(笑)。後ろ髪を引かれながらも、会場を後にする。

しかしながら、初日に観たアーティストを改めて考えると、マンチェスターつながりでBUZZCOCKSとNEW ORDERがあり、いわゆるインダストリアル・ロックの先駆者であるMINISTRYとNINE INCH NAILSがそれぞれ繋がっていることを考えると、このラインナップは非常に良くできていたと思う。初期パンク、ニューウェーブ、インダストリアルという、微かに繋がった線を一気に楽しむことができたからだ。ちなみに会場から駅までの道は警備がしっかりなされていたので、CTAに乗って安心してホテルまで戻ることができた。

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