MAN AGAINST MAN カバー集発売!ハードコアの歴史を頭に叩き込め!

man against man

Siegeより速く!Cro-magsより遅く!
加速するスピード、漲るパワー、いきり立つアグレッション!
世界最高速クラスのスピードコアと地を這うようなヘビー・モッシュ・ハードコアの過激な融合で知る人ぞ知る存在となったM.A.N.VS.M.A.N。
そんな彼らが、前作Speed,power & Aggressionから間髪入れずにニューアルバムを発表するとの報を得た。
タイトルは”Hardcore 2018″。そして、11 Hardcore classics from 1979 to 1986とサブタイトルがつけられている。
今のところ、曲名だけが走り書きされたテープだけが手元に送られており、まともな資料は何もない。
聴いて判断しろ!とのことなのか。相変わらずライター泣かせなバンドだ。
内容がこれまた仰天モノの更なる過激な一枚である。
なんと、全11曲クラシック・ハードコア・バンドのカヴァ集なのだ。

収録されるバンド、曲目は以下の通り。

1.Life as one(Antidote,NYC,US)
2.Ready to fight(Negative Approach,MI,US)
3.United Blood (Agnostic Front,NYC,US)
4.Protester(Negative Fx,MA,US)
5.I Hate myself(Offenders,TX,US)
6.Arm’s Race(BGK,Amsterdam,Netherland)
7.Banned in DC(Bad Brains)
8.Never Surrender(Blitz,Manchester,UK)
9.Verbal Abuse(Verbal abuse,TX,US)
10.State oppression(Raw Power,Reggio Emilia,Italy)
11.Back From The Dead(Negative Gain,Toronto,canada)

man against man何やら意外な感じがしないでもない。
まず、どのバンドもハードコア・ファンならばお馴染みの有名バンドばかりなのが気になるところだ。
オブスキュアなバンドと呼べるのはカナダのNegative Gainくらいだろう。
このNegative Gainとて、パスヘッドのPusmortからLPのリリースがあり、全くの無名とは言いがたい。
まさか、M.A.N.VS.M.A.Nが新しいファンのために入門盤を作ろうなどと殊勝なことを考えるはずもなく、考えれば考えるほど不気味である。

また、音楽的に話で言えば、M.A.N.VS.M.A.Nのルーツといえば、レイト80sのコンバット・モッシュ・ハードコアとスピードコアである。
しかし、今回収録されているのは殆どが83〜84年の第二世代のハードコア・バンドのカヴァ中心、一部ヨーロッパのバンドも含むが大半がアメリカン・ハードコア・バンドだ。

あくまで推測にすぎないのだが、M.A.N.VS.M.A.Nは、彼らが打ち出すところのスピードコア、モッシュコアの源流を第二世代のハードコア・バンドに求めたのではないだろうか。
初期のハードコアではなくハードコアを聴いてハードコアを始めた世代。
それは悪く言えば形骸化の始まりなのだが、ハードコアの定石を確立するまでの試行錯誤が垣間見え、ある意味初期のハードコアよりもハードコア・スタイルそのものへの熱い思い入れを感じさせる時代でもある。
収録された中では初期のオリジネイターに分類されるBad Brainsの”Banned in DC”は、移住先のニューヨークのスキンズ、パンクスの愛唱曲となった。
それまでアートパンク中心だったかの地にハードコア・ムーヴメントをもたらし、後に我々がイメージする、タフでストロングなニューヨーク・ハードコアの原型を作ったとされる。
また、デトロイトのNegative ApproachのReady to fight。Pillsbury hardcoreという異形ストレイト・エッジ・バンドに取り上げられ、後にパワー・ヴァイオレンスやウルトラ・ファスト・コアと呼ばれるバンドの定番となった。
このPillsbury hardcoreがMan is the bastardの前身であることはご承知のことだろう。
そして、収録されたなかでは唯一のUKストリート・パンク・ロック、Blitz。
Negative Approachも頻繁にライヴ・レパートリィとして取り上げ、USハードコアのタフでストロングな系譜の源流となった。
ここで聴かれるカヴァ・アレンジも限りなくNegative Approachを意識しているように思われてならない。
これらの選曲に一本の流れというか強い意図を感じるのは自分だけではないだろう。

われわれがイメージするところの典型的なアメリカン・ハードコア・パンク。
明るく、軽く、ポップでファニー、スカスカのサウンド。
バンドで言うならば、フィラデルフィアのFlag Of Democracyだったり、ウエスタン・マサチューセッツのDeep Woundあたり。
それらと重なり合いつつも音楽的には対極にあった、ヘヴィでグルーミィ、焦燥感溢れるタフでストロングなUSハードコア・パンクの系譜。
けっして裏でもマイノリティでもなかったのに、不思議と一つの流れとして顧みられることはなかった。
ルーツへのトリビュート・アルバムとしてのカヴァ集。
HARDCORE 2018という大胆不敵なタイトルが物語る、今回のカヴァ集の意図するところはこういうところではないだろうか。

2017年12月18日 マッド・マーク・ウォルズビーJr.

1 2 3