YER’s エリュウの だからソリあげて、その後むき狂う vol5

Eyuu Sasaki

2.
僕のおばあちゃん フミ、つまり先のひいおばあちゃん タヨの娘は、2017年11月現在100歳を間近に迎え健在だ。僕が小学生の時、おばあちゃん フミが、離れて暮らすひいおばあちゃん タヨに電話をするという事があった。何やら大事なハンコの場所が分からなくなってしまい、保管場所をタヨに確認するという事らしい。

電話をかけてすぐにフミの怒気が膨れていくのを感じた。電話に向かって話す言葉も最初は諭すように「違う、ハンコの場所の事」といっていたのが、「だから違うて!そんな事やない!ハンコや、ハンコ!」と激しい非難に変わり、「何がや!?何がや!?」と絶叫するような問いかけを経て、最後には「話にならへんわ!」と強烈な全否定へと変わっていった。

普段、「怒り」という感情とは、ほど遠いように思えたおばあちゃん フミの姿に驚いた僕は怒りの理由を聞くと、けば立った感情を隠し切れない顔でフミは説明してくれた。

「腹たつわ。。。ハンコの場所を聞いても“おめでとうございます”しか言わへん」

全く想像していなかった理由がでてきたものだ。

「何を聞いても“おめでとうございます”。何べんも何べんも“おめでとうございます”。」

こんなに悔しそうに「おめでとうございます」と連呼する人に斬新さを感じながら、黙って説明を聞いた。

「ハンコの場所を質問しやるだけやのに、なんやしまいに深ぁく感動したように
“あぁ、、、あぁ、、、あぁ、、、あぁ、、、”言い出して。
何がや!?何がや!?って聞いたら
“あぁ、、、おめでとうございます”って・・・・。
ホンマに腹立つわ。
一体何が、そんなに“めでたい事”あるんやろか?」

最後の方は尾崎豊が「先生、あなたは、かよわき大人の代弁者なのか?」と問う姿に重なって見えるほど感情が露わになっていた。また先ほど電話口に向かい「何がや!?」と詰問している場面が再現された事と、それに対する返答が、やはり「おめでとうございます」だったという事に、僕は本当におめでたい気分になった。

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