――でもTDEPの音楽は、高度なテクニックだけでなく、ステージでの激しいパフォーマンスも求められます。それが両立できるメンバーを探すのは、いつも大変だったのではないですか?
ベン:俺自身はたいしたミュージシャンではないけれど、いいミュージシャンを見つけるのがうまいのさ(笑)。だから次の仕事はそれがいいかもしれない(笑)。でも実際のところを話すと、TDEPはふたつのバンドが合体する形で結成されたんだ。俺と初代ヴォーカルのディミトリ(・ミナカキス)はハードコア・パンクをやっていて、リズム隊ともうひとりのギタリストはプログレ寄りというか、ものすごくテクニカルなバンドをやっていた。その、もう一方のテクニカルなバンドのメンバーは、俺たちをよりプレイヤーとして成長させてくれたし、逆に俺たちは彼らにグラインドコアやノイズ、ハードコアを教えた。で、全員ジャズ/フュージョンが好きだから、その要素を混ぜ合わせたというわけさ。お互いに新しい領域にプッシュし合った結果、生まれたのがTDEPなんだ。
――さっきも言ったように、TDEPの結成メンバーはベンだけです。度重なるメンバーチェンジにあいながら、バンドの看板を背負って、シーンの先駆者に課せられるハードルを越えていくのは、ものすごく大変なことだったのではないでしょうか?
ベン:最近思うことがあってさ。たしかにこのバンドに最初からいるのは俺だけではある。俺のワンマンバンドという見方をされることがあるのも、わかっているよ。でもTDEPは俺のバンドというよりも、TDEPというひとつのストーリーがあって、俺もこれまで関わったメンバーもその一部という感じなんだ。たとえばツアーバスが事故ったり、ベーシストが身体麻痺になってしまったり、銃で撃たれたけど奇跡的に助かったり、ギタリストの腕の神経がおかしくなってしまったり…とにかくクレイジーなことがたくさんあったけど、どうにかやってくることができた。だからなんというか、ひとつの神話のように思えるんだよね。それに、メンバーが抜けたり、バンドの置かれている状況が変わったり、年齢を重ねても、バンドの核となる部分は変わらなかった。だからこそ、やってこれたと思うんだ。最後のライヴは12月にニューヨークでやるんだけど、たくさんのゲストが来てくれる予定だ。ディミトリをはじめとした過去のメンバーはもちろん、マイク・パットンも出演してくれることが決まってて、TDEPの歴史を振り返るようなものになると思う。脱退したメンバーたちとも、友だちとしての関係は続いているからね。
――昨年リリースされたTDEPの最後のアルバム“Dissociation”も、素晴らしいアルバムでしたね。凶暴で混沌としたハードコア要素はそのままに、ストリングスを取り入れるなど、アトモスフェリックな側面も強くなっていて、バンドの「次」を見据えたというか、とても解散を決めたバンドがリリースする内容ではないと思いました。
ベン:ありがとう。これまでもずっと、アルバムを作るときは「これが最後のアルバムだ」というテンションで作ってきたけれど、本当に最後となった作品をそう言ってもらえて嬉しいよ。TDEPとしてでなくても、作品を作る以上、ミュージシャンとしての進化し続けていきたいからね。