9月に4年ぶりとなる新作『OHMS』だけでなく、12月には代表作『WHITE PONY』(2000年)の20周年記念となるリミックス盤『BLACK STALLION』をリリース…と、今年はいつになく活発な動きを見せたDEFTONES。…とは言うものの、皆さんDEFTONESのこと、なんだと思っています?基本的にはニューメタルにカテゴライズされると思いますが、ハードコア/メタル/エモ/ポストロック、果てはヒップホップまで繋がりつつも、KORNやLIMP BIZKIT、SLIPKNOTのように天下を取ったわけでもない…どこにもピッタリ落ち着く場所がなく、ちょっと地味な存在というのが正直なところではないでしょうか。しかし熱狂的なファンはあちこちにいるし、後進への影響力も大。そんなふわっとした立ち位置の彼らについて、おじさん5人がよってたかってはしゃぎながら考えてみました。
今回の対談参加者は以下の通り
- Riuji Onozato:REDSHEERのヴォーカル/ベースを担当。DEFTONESと同郷のWILL HAVENが激推し&DEFTONESと同世代。
- Ken Tominaga:SUNDAY BLOODY SUNDAYのヴォーカル/ギターを担当。日々Instagramで膨大なレコードコレクションを公開しつつ、現行の埋もれたノイズロック、オルタナを取り扱うディストロ、Unknown Pleasure Distroを運営。
- Kyohei:arbusおよびcatrinaのヴォーカル担当。GLASSJAWのダリル・パルンボ(vo)とスニーカーをこよなく愛する。
- YADA:DIRTY SATELLITES、BROILER、WEIGHTにてギターを担当。前LIVEAGE編集長。今回の対談では唯一の非DEFTONESファン。
- MOCHI:DEFOTNESが好きすぎて『WHITE PONY』のタトゥーまで入れた男。9月からLIVEAGE編集長になりました。
MOCHI「でははじめに、それぞれ“あなたのDEFTONESはどこから?”を教えてもらえますか?僕は中学生の時にLINKIN PARKやLIMP BIZKITから洋楽に入ったのですが、DEFTONESはそのあたりのバンドに影響を与えたということで、完全にニューメタルの流れから聴き始めました。で、2003年にMETALLICAのパッケージツアーで後輩バンドの前座扱いされてチノ(・モレノ/vo)がブチ切れるという…」
Onozato「俺は1stの『ADRENALINE』(95年)からだね。当時やっていたバンドのメンバーから教えてもらったんだったかな。EVERCLEARってバンドがいたの、覚えてない?あのへんと一緒に買って聴いた記憶がある。正直、最初はまったく響かなかったんだけど」
Kyohei「僕もMOCHIと同じような流れです。中学の時にニューメタルやラップメタルにどっぷりで、その流れから聴きました。初めて聴いた時は、正直少し苦手でした(笑)」
Ken「俺はKORNとかを聴いていた流れで、2nd『AROUND THE FUR』(97年)が出たタイミングで買ったんだと思う。最初はモダンなQUICKSANDだなって感じで、すんなり好きになりました(笑)」
MOCHI「ニューメタルの流れで聴いたけど、ハードコアの文脈で捉えたっていうことですよね。珍しい解釈だと思います。この中で唯一DEFTONESのファンではないYADAさんはどうでしょうか?」
YADA「俺は本当にここ数年で。なんかのライヴの打ち上げの帰りに、当時AS MEIASのヨっちゃん(Yoshikazu Takahashi/vo,g)の車で送ってもらったとき、車内で『恋の予感』(2012年)がかかっていたんだよね。聴いたイメージはQUICKSANDやHUMみたいだなと思ったけど、もともとSLIPKNOTやLIMP BIZKITみたいなニューメタルのイメージだったからビックリした。それで調べたら、QUICKSANDのセルジオ(・ヴェガ)がベースを弾いているとわかって、興味を持つようになったな」
MOCHI「セルジオは昔、チ(・チェン/b:2013年逝去)が病気かなにかでツアーに出られないときにもサポートしたことがあるみたいです。YouTubeに初来日のときの映像が上がっているんですけど、この時点でQUICKSANDに注目しているっていう発言があるんですよね」
Onozato「DEFTONESのメンバーが全員、QUICKSANDをリスペクトしていたんだろうね。チも好きだったし、あのシンプルなベースラインも素晴らしいんだけど、セルジオが後任に決まった時は興奮しましたよ」
YADA「やっぱりQUICKSANDは偉大だなぁ!」
Kyohei「僕はセルジオがどんな人か知らなかったので、加入をきっかけにQUICKSANDのことも知りましたね」
MOCHI「僕もそうです。名前くらいは聞いたことあるけど…っていう感じでした。わりと初期から聴いていたOnozatoさんとKenさんに伺いたいんですけど、当時周りにDEFTONES聴いている人っていましたか?初来日が98年で、その後2006年まで来なかったので、ずっと日本での評価が低かったイメージがあるんですが」
Onozato「いたいた!なんだかんだ言って、みんなDEFTONES好きなんじゃねーかよ!って感じだった(笑)」
Ken「俺の周りにもいたけど、『WHITE PONY』(2000年)から離れちゃった人が多かったかな」
Onozato「それだよね。そこからのDEFTONESの道がある感じがする」
MOCHI「やっぱり『WHITE PONY』が良くも悪くも転換期なんですね。お二人とも、初来日は行きました?」
Onozato「仕事が残業になっちゃって断念したんだよね…」
Ken「渋谷のOn Air East(現TSUTAYA O-EAST)だったっけ?俺も行けなかったんだけど、フライヤーは取ってあるよ(笑)。行けなかったのは後悔…あとQUICKSANDが来日した時のフライヤーも残っているはず」
MOCHI「当時のフライヤーが残っているのがヤバいですね(笑)。YADAさんはセルジオがいることで興味を持ったとはいえ、DEFTONESっていうバンド名は知っていたわけですよね。周りは全然でした?」
YADA「う~ん、いなかったね。みんなエモやハードコアの友だちばっかりだったし、DEFTONESが話題になることもなかったと思う。それと俺自身、2000年頃にWILCOの出現によってエモを聴かなくなった時期があったし。当時サラリーマンになったばっかりで、“ひ弱な音楽を聴いているとダメになる”と思って、カントリーとニューヨーク・ハードコアしか聴いてなかった(笑)。今はエモばっかりになったけどね」
MOCHI「逆にエモい(笑)。エモというと、僕とKyoheiくんが1歳違いの同世代なんですけど、僕らが高校生のとき、2002年前後に出てきたスクリーモが、軒並みDEFTONESに影響を受けていたんですよ。FINCHなんか、もともとDEFTONESのコピーバンドから始まっているし。そのおかげで評価が高まってきて、2006年の再来日とそれ以降の動きにつながっていったのかなと思っています」
Onozato「チノの歌メロはもっと評価されるべきだと思う。叫んでばっかりのスタイルじゃなくて、きちんとメロディを内包した歌を表現しているよね」
Ken「ニューウェイブっぽい部分もありますよね。あとトム・ヨーク(RADIOHEAD/vo)に影響受けていると思うときもあるし。このへんはチノの持っている要素なのかな」
MOCHI「THE CUREのことはMTVの企画でカヴァーしているし、チノがインタビューで“子どもの頃の俺はヒップホップとニューウェイブが全てだった”って発言していましたね」
YADA「たしかにTHE CUREのヘヴィな曲には通じるものがあると思う。ロマンティックな雰囲気もその流れからなのかな」
Kyonei「でも僕、実はDEFTONESを最初に聴いたのは『AROUND THE FUR』だったんですけど、最初はチノの歌が苦手だったんですよね」
Onozato「それはどの曲で?」
Kyohei「1曲目の“My Own Summer (Shove It)”で、なんかねちっこい歌い方するなって思って、そこでシャットアウトしちゃったんです。そこから『WHITE PONY』を聴いて、いやこれはヤバいぞと思って、『AROUND THE FUR』を聴き直して最高だわとなりました(笑)」
Onozato「俺も1stを最初に聴いたときは響かなかったんだけど、むしろ“My Own Summer”でものすごく手ごたえを感じて、大好きなバンドになったね」
MOCHI「それぞれ、一番好きなアルバムってどれですか?僕はタトゥー入れちゃったくらいだし、間違いなく『WHITE PONY』です」
Onozato「俺は新作の『OHMS』だね。アルバムを通して聴くと本当に素晴らしいし、最高だと思う」
Kyohei「僕もMOCHIと同じで『WHITE PONY』ですね!やはり入り口だったというのと、“Knife Party”が一番好きな曲なので。でも『OHMS』が最高なのもわかります。これだけ最初から最後まで聴き通したくなるアルバムってそうそうないですよね」
Ken「これは本当に難しくて、聴くたびに更新されるんだよね。毎回聴くたびにこれが一番だって思わせてくれるから。よって新作が今は一番!といいつつ『DEFTONES』(2003年)、『DIAMOND EYES』(2010年)、『恋の予感』もよく聴いた。『WHITE PONY』、『AROUND THE FUR』もだけど(笑)」
YADA「俺はまだDEFTONES道に足を踏み入れたばかりなので、今それぞれ聴いて、感触を確かめている感じですね。聴くシチュエーションとかも重要なのかなと思って。夜中3時くらいがいいのかとか」
MOCHI「SLAYERのケリー・キング(g)いわく“セックスのBGMに最高”だそうですよ(笑)。実際、声がセクシーだっていうのも海外で人気のひとつらしいです」
Onozato「俺、エイブ(・カニンガム)のドラムが好きなのよ。パフォーマンスも全力で」
MOCHI「あの手数の抑え方とかスネアの入れ方とか、独特だと思います。DEFTONESのフォロワーって、エレクトロニクスの入れ方や音の重さはマネできても、ヴォーカルとドラムが圧倒的に違うんですよね」
Kyohei「ドラムは本当に職人で素晴らしいですね。ヴォーカルも絶対マネできないと思うし」
Ken「あと、ステファンのギターの音が前作『GORE』(2016年)から好みなんだよね。ジェリー・カントレル(ALICE IN CHAINS/“Phantom Bride”に参加)の影響かな。前作のレコーディング中の写真にBognerのUberschallとFriedmanのジェリーのシグネイチャーモデルのアンプ(JJ-100)があったし」
Onozato「俺、来年には50歳になるんだけど、DEFTONESのメンバーと同世代なんだよね。自分たちの思う最高の音楽を職業として常に発表し続けて、世界中のミュージックシーンから注目されている。この歳でいつでも期待を持たせてくれるバンドなんだよね」
Ken「2010年に渋谷のクアトロでもいろんな人が来ていたな。世代もファッションもバラバラな感じで」
Kyohei「KNIFE PARTYっていうEDMのグループもいるくらいですからね。ライヴにDEFTONESのTシャツ着て行ったのに、パリピしかいないから誰にも理解されなかったんですけど(笑)」
MOCHI「たしかに海外のライヴ映像とか見ると、ファン層の広さに驚きますよね。スケーターもいればメタルやハードコア流れもいるし、黒塗りのゴスもいるし、ヒップホップ方面にもアピールしているし。やっぱり影響元がわかるけど、ちゃんと自分たちのものにしているのが大きいんでしょうね。YADAさんなんか、『COVERS』(2011年)の選曲を見るとうなるんじゃないでしょうか」
YADA「俺の好きなバンドばっかりだね!JAWBOXなんかもやるんだ。しかもFARをフィーチャーして」
Ken「FARもずいぶん前からあの音でやっていたよね。お互いに影響し合っていたんじゃないかな?」
YADA「たしかにジョナ・マトランガ(vo)の歌い方とは共通点ある気がする。吐息系っていうか、ちょっとヴィジュアル系みたいなナルシシストなところもあって、悦に入っているような」
MOCHI「同じサクラメント出身ということで、FARとWILL HAVENとはずっと仲良いですよね。FARのショーン・ロペス(g)はチノのサイドプロジェクトのほとんどに関わっているし」
Ken「チノがやっているTEAM SLEEPは好きだったな。ドラムがHELLAのザック・ヒルなんだよね」
Kyohei「あとは♰♰♰(Crosses)好きです。あれいいですよね」
Onozato「どれでも歌メロが素晴らしいんだよね。よくこんなのをひねり出せるなって、毎回感心する」
MOCHI「ほかにもあちこちにゲスト参加していますよね。LIVEAGEらしい視点だとSTRIFEの“Will To Die”とか」
YADA「マジか!このアルバム1000回くらい聴いているのに全然知らなかった(笑)」
MOCHI「僕が知っているだけでもKORN、CYPRESS HILL、SEVENDUST、SOULFLY、LAMB OF GOD、STRIFE、WHITECHAPELあたりかな」
Kyohei「あとDEAD POETICとかNORMA JEANとか。でもあの色っぽい声は聴いたらすぐわかります」
Onozato「すぐに分かるように仕上げるセンスがあるんだと思う。まさに唯一無二だよね」
Ken「みんな、あの声で歌ってほしいというか、あの声ありきで声かけているよね。THE SMASHING PUMPKINSのライヴでもゲスト参加して歌っている動画見たことある」
MOCHI「チノのWikipediaでもまとめられていますけど、その人だとわかる声で、ヒップホップからデスコアまで声がかかるってそうそういないですよね」
Onozato「エイブ(・カニンガム/ds)がほかのバンドで叩いているのとか見てみたい気はするね。実は手数の多い曲とかもバシバシ叩きそうだし」
MOCHI「たしかにほかの人とやったらどうなるのか興味ありますね。エイブって初期の3枚と新譜では作曲もやっているし、ドラムの特徴と相まってバンドの裏番長って感じ。なんかチノとステファン以外はバンドを支えることに徹している感じがしますよね。ステファンは『GORE』について、あちこちで不満を口にしていたので、そこそこ主張ある人なのかなと」
Ken「前作もだけど、新譜はギターの音が断然好み」
Onozato「あのギターの音がかなりのヘヴィさを出していると思うんだよね。なんていうか、雰囲気としての重さというか。あとはフランク(・デルガド/sample,key)が、最終的に楽曲のエロさとまろやかさを生んでいると思う」
Ken「今回はかなりニューウェイブ寄りな音を入れていますよね。この感じがすごく好き」
MOCHI「フランクって、元はガチガチのヒップホップDJでスクラッチもやっていたらしいですね。DEFTONESのメンバーとは昔から友達だったから参加することになったけど、音に合わないからスクラッチは封印したそうです」
Onozato「チノはTHE CUREもそうだし、CHRISTIAN DEATHとかダークウェイブ方面が好きなんだろうね。だから合うんだと思う」
Kyohei「DEFTONESの裏方、みんな職人すぎる(笑)」
…この後も盛り上がりすぎたので、後編に続きます。次回はDEFTONESの多様性をより掘り下げつつ、最新作『OHMS』とリミックス盤『BLACK STALLION』について。
<各種リンク>
DEFTONES:https://www.deftones.com/
arbus:https://arbusjp.com/
catrina:https://catrina-tokyo.tumblr.com/
REDSHEER:https://deadsheer.wixsite.com/redsheer
SUNDAY BLOODY SUNDAY:https://sbspop8.wixsite.com/sbsband
DIRTY SATELLITES:https://dirty-satellites.tumblr.com/
WEIGHT:https://weight-hc.tumblr.com/
BROILER:https://broiler-grind.tumblr.com/