異例のスピードで猛攻を続けるARCHITECTS。記念すべき10作目で果たしたさらなる進化と深化に迫る、リリース記念インタビュー!

2000年代中盤、メタルコア・ムーヴメントがアメリカを中心に波及し、第二、第三世代が次々登場するなか、UKからの回答として登場した、BRING ME THE HORIZONとARCHITECTS。早々にデスコアどころかメタルというフォーマットから脱却し、いまや天下を取らんという存在にまでなったBRING ME THE HORIZONについて、いまさら説明の必要はないだろうが、一方でARCHITECTSは埋もれがちというか、少し地味な扱いを受けてきたというのが、正直なところだと思う。しかしそれは、ARCHITECTSが劣っているということでは断じてない。むしろ音楽性を大きく変化させるのではなく、深化と追求を繰り返しながら、堅実に歩みを進め、評価を高めてきたのがARCHITECTSだった。言わばMETALLICAやKORNに対する、SLAYERやDEFTONESのようなもの。シーンにおいて絶対に必要な、信頼度の高いタイプのバンドなのだ。
そんな彼らが、メンバーの死を乗り越え『FOR THOSE THAT WISH TO EXIST』で、ついに勝負に出たのが2021年のことだった。それまでのメタルコア/プログレッシヴ・メタル路線からインダストリアル/エレクトロニクスの要素を大胆に取り入れた作品は驚きとともに迎えられたが、結果的には本国UKとオーストラリアをはじめ世界各国で高評価を獲得。まさに彼らが賭けに勝った瞬間だった。
それから1年という異例の速さで、ARCHITECTSは新作にして10作目のアルバム『THE CLASSIC SYMPTOMS OF A BROKEN SPIRIT』とともに、再び勝負を仕掛ける。メンバーによれば、前作で取り入れたインダストリアル要素をさらに強めつつ、ライヴ感も強調した作品に仕上がったとのこと。まさにバンドの勢い止まらずといったところである。
そんな新作の発売に先駆け、ARCHITECTSに、久しぶりの日本インタビューを実施。サム・カーター(vo)が、静かながら確信に満ちた口調で話してくれた。

Interview by MOCHI
translate by Tomohiro Moriya

――前作『FOR THOSE THAT WISH TO EXIST』(2021年)はUKとオーストラリアのチャートで1位を獲得。ほかにもTHE BEATLESで有名なアビー・ロード・スタジオでオーケストラとライヴを行うなど、コロナ禍において、バンドのステップアップと挑戦が続きましたね。
「これまでの自分たちの活動には自信を持っているつもりだったけど、こうして第三者がまとめてくれると、改めて実感がわいてくるね。たしかにこのパンデミックの2年間はすごく難しい時期だった。とはいえ、世の中が通常だったとしても、決して楽ではないことをやってきたと思えるし、達成したことを誇りに思う。でも欲を言えば、もっとちゃんとツアーに出て、いろいろな国でライヴをやりたかった。アビー・ロード・スタジオのほかにも、ロイヤル・アルバート・ホールでも配信ライヴをやったけど、それは通常のリリースツアーができなかったから、ファンに向けて何か見せたいという気持ちからのことだったんだ。だから今度こそ、ツアーでファンに実際のライヴを見てもらいたいと思っているよ」

――にしても、前作から1年でフルアルバムを出すって、相当早いですよね。
「前作に収録した曲を作り始めたときは、2020年にパンデミックが始まるかどうか…という時期だったんだ。それから起こった世界中の混乱はみんなも体験した通りだけど、僕たちはパンデミックのなかでレコーディングに入ったっていう感じだったんだ。それでアルバムを出したはいいけど、バンドはメンバー全員にものすごく創作意欲がわいていたし、すごくアクティヴな状態でもあった。でも、ツアーができないからね(笑)。だからバンドの勢いを止めないために、作曲を続けることにしたんだ。今までも、ツアー中であっても、曲は常に作っていたけど、今回はまだこの状況がまだしばらく続くとわかっていたし、次のアルバムに向けて曲を作ろう、というゴール設定をした。ある程度リモートで作業してからスタジオに集まったんだけど、久しぶりにバンドのメンバー全員がそろった時、なんだかそれまでとは違った楽しさを感じたんだよね。特にツアーもライヴもできなかったから、喜びもひとしおだった。だから、どんな環境であってもやれることを最大限に楽しんで、使えるものはフル活用して、最高のものを作ろう…っていうのが目標だった。与えられた特別な時間というか、集中しやすい状況だったんだよね。それだけやって出したアルバムは最高なんだから、ぜひみんなに楽しんでほしいし、ツアーにも来てほしいなって思うよ」

――前作は、それまでよりもインダストリアル等の要素を取り入れて、音楽性を拡大したアルバムでしたよね。つらい話になってしまいますが…2016年にトム・サール(g)を病気で亡くし、ジョシュ・ミドルトン(g/SYLOSISでも活動)を迎えましたね。その後リリースした『HOLY HELL』(2018年)には、トムが遺したアイデアも取り入れていると聞いています。となると、ARCHITECTSは前作で、本当に新しく生まれ変わったと言えるのではないでしょうか?
「トムのことは、不幸が重なったと言わざるを得ないけど…メンバーが変わって再出発することになったとき、トムがいたころと同じようなものを作り続けるのも、やっぱり違うなって思ったんだ。今でも鮮明に思い出せるけど、トムは本当に素晴らしい人だったし、ギタリストとしても、ソングライターとしても、とても才能がある人だった。その後入ってくれたジョシュは、トムとはまた違った感性を持つ、才能のあるギタリストなんだ。どちらが優れているということではなくて、まったく違う人なんだよね。もちろん作曲の仕方だって違う。だから、ジョシュにはトムのコピーをするようなことはしてほしくないし、彼にもそう伝えたんだ。たしかに『HOLY HELL』はそれまでの僕らと、次に進もうとする僕らの姿が両方とも入っていたと思う。でもそこから先へと進むにあたって、それまでの自分たちらしさをコピーし続けるのではなくて、新しいスタイルをしっかりと見せていきたかったんだ。これはトムの兄弟であり、ARCHITECTS唯一のオリジナルメンバーでもあるダン(・サール/ds)とも話して決めたことだよ」

――新作では、よりインダストリアルの要素というか、エレクトロニクスの要素が増えましたよね。例えば“Tear Gas”ではスネアに金属的な音を重ねたりと、よりバンドサウンドに溶け込ませているように感じました。
「たしかに前作よりも、プログラミングの使い方が変化したとは感じているよ。“Tear Gas”もリフ自体はシンプルだけど、いろんな要素が入っている。君が言ってくれたスネアの音は、実際のスネアに、大きな金属缶を叩いた音を重ねたものなんだよね。そういった、いろんな細かいことを盛り込んで、レイヤーを重ねているんだ。曲ごとにベストなインパクトというか、最適な状態がどれなのかを追求した結果だよ。それとインダストリアルな要素が増えたという意見があったけど、前作はもっとシンフォニックというか、ストリングスを重ねる場面が多かったと思う。その反動もあって、今回はまた違ったレイヤーを重ねることで、インダストリアル的というか、よりデジタルな要素が増えたようなところがあるんじゃないかな」

――新作のプレスリリースで「よりライヴ感がある」「もっとインダストリアルでエレクトロニックなものにしたかった」という発言がありました。一見すると矛盾しているように見えますが、アルバムを聴くと、たしかにエレクトロニクスの割合が増えつつ、バンドサウンドも強化されていますよね。
「エレクトロニクスを加えるのは、面白い作業なんだよね。シンセサイザーやサブベースを外部のミュージシャンに手伝ってもらった部分もあるけど、アレックス(・アリ・ディーン/b)もけっこうやってくれたし、いろんな実験によって、曲が変化していく様を目の当たりにしてきた。同じスタジオにメンバー全員が集まって、いっしょに試行錯誤をすることで、なんというか…エネルギーだったり一体感が生まれるんだ。スピード感もあったし、それがライヴ感に繋がったと思う。やっぱり一緒の部屋で作業をすると、相手の表情を見れば、今やったテイクがよかったのかどうか、すぐにわかるんだよね。リモートでもそういったことはできるんだけど、やっぱり若干のタイムラグがあるからね。とはいえそれも悪いことばかりではなくて、どこがよくなかったのかなと考える時間がある、というのはメリットと言えるけれど。どちらにしても重要なのは、メンバー間でちゃんと信頼関係があるかどうかということ。判断基準が共有できていなければならないし、本音で意見を言わないと、いいものはできないんだ。今回のレコーディング中、ダンと僕でいろいろ話しているなかで、いい感じのメロディが浮かんできた。で、周りを見ると、それを聴いたメンバーが、頷いたり笑顔になっていたりするんだよね。そうやってすぐに反応がわかるのはいいことだし、今回起伏のあるアルバムを作るうえで、必要だったんだ」

――前作にはPARKWAY DRIVEのウィンストン・マッコール(vo)やBIFFY CLYROのサイモン・ニール(vo,g)といったゲストが参加していましたね。今回はそういったゲスト参加はありますか?
「今回はほぼ自分たちだけだね。少しだけ声楽家の人たちにクワイアを入れてもらったりはしたけど、演奏はほぼ自分たちだけ。前作はたしかにコラボが多かったし、その反動が今回あったかもしれないね。だから次のアルバムでは、また誰か友だちにゲスト参加してもらうのもいいんじゃないかな。誰かにコラボしてもらうのは楽しいことでもあるし、曲にフレッシュな解釈やエネルギーを持ち込んでくれるんだよね。前作で参加してくれた人たちは、全員僕とはまったく違う声を持っているから意外性があるし、お互いの声を引き立て合うことにもなる。それがまたアルバムに新しい色を加えてくれたと思う」

――言い方は悪いですが、過去の作品と新作で「何をやってもいい」とというか、音楽的な制限がさらになくなったのではないでしょうか?もっとエレクトロニクスを増やしてもいいし、さらに実験ができるようになったとか。
「もちろん。君の言う通りだよ。本来、曲にいろいろなレイヤーを重ねてアレンジするにあたって、これはやっていい、これはやってはいけないなんて制限はないからね。リズムマシーンやシンセサイザー、サブベースなんかはポップミュージックで使われることが多いけど、それをメタルに使ってはいけない、なんて決まりはないはずだよ。それによって機械的な質感や、スケールの大きさが表現できているし。まぁ、いろいろ言われることもあったけど、ようやくACHITECTSはそういうバンドなんだと、わかってもらえたんじゃないかな。それに前作のヘヴィな曲のなかのいくつかは、もともとはトラディショナルなメタルに近い曲だったんだけど、いろんな味付けや実験をしたことで、アルバムの流れにハマるものになった。そうやっていろいろなことを試して、新しいことに挑戦していくのは、今後もやっていきたいと思っているよ」

――これまでの全作品を通して、ARCHITECTSは音楽性を変化させるのではなくて、芯を残したまま拡大と先鋭化をしてきたと思っています。それこそ初期はマスコア等の影響も強かったですが、それをキープしつつ、今の形にたどり着いたわけで。アンダーグラウンドの要素をメジャーに持っていき、商業的な成功も手にするというのは、規模は違えどSLIPKNOTと同じことを実践していると思います。
「まず、SLIPKNOTを引き合いに出してもらえて光栄だよ(笑)。実際のところ、こうしてバンドをやってきて、ヘヴィなバンドで居続けるのも簡単なことではないな…って思うんだよね。でも僕たちの場合は、作品を重ねるごとに、たくさんの人が咀嚼しやすくなっていったように感じるよ。僕がバンドに入ったときは18、9歳かそこらだったけど、今ではもう34歳になろうとしている。そりゃあ、当時からは感覚もテイストも変わるよね。そのうえで、バンドとしてあるべき姿も常に意識して考えているんだ。それと、メタルを一般的なリスナーに向けて発信するのは、楽しい挑戦でもある。あまりヘヴィな音楽を聴いたことがない人に、僕たちをきっかけに、もっと激しくてヘヴィなバンドに手を出すようになったりとかすると、うれしいしね」

――ちなみに、BOTCHの新曲は聴きました?活動を続けるわけではないみたいですけど。
「BOTCHね!新曲はすごくよかった。20年ぶりくらいの新曲だけど、変わらずにめちゃめちゃかっこよかったよね。すごく影響されたし、あれだけすごいバンドなのに、活動を続ける予定がないっていうのは残念だけどね」

――日本には、2015年に一度来たきりですよね。もう7年も前になりますが、そのときのことは覚えていますか?
「うん、日本ではすごく楽しい時間を過ごしたし、思い出深い国だよ。あのときはCrossfaithが僕たちを呼んでくれたんだけど、ライヴだけじゃなくて、いっしょにサッカーをしたんだよね。たしかあれは国立のスタジアムかなにかだったと思う。ツアーだし、ライヴをやってあとは少し街を見て観光できればいいかなと思っていたんだけど、そんな風に楽しむ時間もあって、うれしかったのを覚えているよ。その時の写真を、今も家の壁に貼ってあるんだよね。それだけ楽しい時間を過ごしたんだって、わかってもらえるかな(笑)?だから時間こそ空いてしまっているけど、またすぐにでも日本に行きたいよ。あのときと同じように、楽しい時間を過ごせるだろうしさ」

<Release Info>

『THE CLASSIC SYMPTOMS OF A BROKEN SPIRIT』
Epitaph Records
2022. 10/21 Release

 
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