僕個人としては冬蟲夏草って本当に怖いんだよね。
それで怖さを感じるのはディストーションの効いたラウドな部分じゃなくて、チープさもあるクリーントーンの部分。
高島:その辺りは空元気って所ですね。極限状態で絞り出した微笑って感じです。
全てにおいて不気味なんだよね。
高島:そこがうちらの一番美味しいところだと思ってます。
でもゴスとかには寄ってる感じでもないよね。
河内: Blonde Redheadとかも好きなので、V系っぽさみたいなのってもしかしたらその辺りから来ているのかもしれないです。
でも暗いと言うよりはやっぱり怖いのがしっくり来るかな。そこら辺は河内が作るアートワークともリンクするし。
あとピエロって怖いじゃん。色んな映画とかのイメージもあるんだろうけど。
河内:僕の中ではピエロのイメージは怖いと言うよりも悲しいですね。
高島:でもピエロの見た目が怖いと言うよりも、得体の知れない楽しそうな感じとかが怖いんじゃないですか?
河内:小学生の時にピエロの格好をしたおじさんが学校の前に立っていて特に何もしてないのに通報された事があって、真意はわからないですがみんなを楽しませようとしていたなら通報されちゃうのって結構残念ですよね。
そう経験もあって怖いより悲哀のイメージが強いです。
その悲しいってコミカルなのに腹の底から笑えない空気だったりもあるんだよね。
河内:そうかもれないですね。本人は笑わせようとしたら怖がられたり、真面目にやっている事を周りから馬鹿にされたりそういうズレの表現が多いです。
高島:怖いってのは客観的な視点で、悲しいってのはピエロの主観的な視点ですよね。
河内:だからうちらの持つコミカルさは笑わせてるより笑われてるという表現の方が近いです。
改めてライヴはどんなテンションでやってるのかな?
河内:テンション…自分との勝負って感じですがやってる最中は無心ですね。
高島:ライヴだぜ!ってドカンとやる感じのバンドでは無いですね。緻密にやらなきゃいけない所もありますし、内に向かってる感じですね。
河内:うん、ひたすら内に内にって感じですかね。
高島:バンドとしてカタルシスを感じる瞬間もありますけど、それは内に内に向かった末にって感じですね。
外に向かって上がるバンドも多いとは思いますけど、俺らは結果として上がる瞬間もあるだけって感じですね。みんなで楽しもうぜ!みたいな空気感はないです。
話を戻すけど、4ヶ月連続リリースの今回の新曲達ってコンセプトはそれぞれ違うのかな?
河内:コンセプトは一つ一つ違います。1つ目は「あかはだか」という妖怪についてで、それは4wayスプリットに収録されている「玩弄物」に近い曲調です。
2つ目は「九想図」という死体が腐っていく様を九つの段階に分けて描いていく絵のついて曲。
3つ目は「ハンス_ベルメール 」という球体関節人形の元ネタを作ったフランスの芸術家についての曲、4つ目が「舞踏」についての曲ですね。
4曲それぞれの曲調って大分違うかな?
河内:違いますね。コンセプトが強い4曲だからこそ、それぞれ1曲ずつリリースするみたいな所も実はあったりするんですけど、まぁそれは後付けですね。
高島:「九相図」についての曲が今までとだいぶ違って、結構歌ってるんですよ。
河内:歌っているというかずっとクリーントーンですね。怖いクリーンかは分からないですけど。
高島:静かなアルペジオに、ボーカルがポエトリーと歌の間で乗っている感じですね。僕は聞いていて悲しくなります。
河内:これまでは空間系のエフェクターを楽曲中にあまり使ってなかったんですよ。曲間くらいで。
SYSTEM OF A DOWNの楽曲ってディストーションとクソみたいなハムバッカーのクリーンが多いじゃないですか?僕はバンド形態で音楽やるならそういうギターの生っぽい音が好きでそこに拘ってたんですけど、その曲ではあえて今までやってない事をやろうと思ってディレイやリヴァーブをかなり多用してます。逆再生音とかも取り入れてます。
高島:でも河内さんって最初期はバンドがやりたいって感じでは無かったと思うんですよ。
じゃあなんでバンドでやるかってなった時に、自分がやる事を生楽器の中で、河内さんが作った曲を必要以上に装飾しないでやったらどうなるかって制約があったんだと思います。
河内:確かにそんな感じだ、高校生の時にコピーバンドとかやってて、だんだんそういうのが好きじゃなくなってきて、その頃にアンビエントとかエレクトロニカとか聴くようになって、でもやるわけでもなく。
絵とかも好きで、たまに描いたりとかもしていたんですけど、ある時「このままだと全てが中途半端になる。」って気付いて、自分の無能さを認めて表現をバンドに制約してやって行こうと決めた感じです。
でもバンドなら絵も描けるよね。ジャケットやTシャツのアートワークとかで。
河内:確かにバンドだと結果全部出来ますね。
身近だとwombscapeのRyoさんも全部やってますね、Ryoさんは作曲もアートワークもやってて、特定のジャンルの音楽がやりたいというより自分の美意識を突き詰めて作曲とかしてると感じます。それで他にも絵など表現できる選択肢があればそれが音以外にも広がっていくのは自然だと思うので、その辺は考え方的に近いと思います。
実際、wombscapeのライヴを初めて見た時にこのバンドは自己表現したい世界観みたいなのがあって主な手段がバンドなんだろうなという印象を持ちましたし、まぁその時は知り合いとかではなかったんですけど。
面白いのが冬蟲夏草を始めた頃にデザインフェスタのライヴに応募したら、たまたま審査員がRyoさんでそこで初めてちゃんとRyoさんと知り合ってびっくりしましたね。
高島:Ryoさんがデザインフェスタのスタッフだと知らずに応募したんですよね。
当時はライヴハウス周りでも友達があまり居なくて、音楽的にちょっと浮いてたりもしてて、自分たちがライヴをする場所に悩んでいたんです。
それでデザインフェスタのライヴに応募したんですよ。
Ryoさんは冬蟲夏草を始めた頃から大分良くしてくれましたね。感謝しかありません。