カオティックハードコアと形容される事こそ多いが、時にコミカルに、時にチープに、しかし熾烈に、多種多様に表情を変えていく楽曲。アートワークを含めた不気味さ。その出所の分からない感覚は恐怖すら覚える。
同時にその活動もかなり独特で、今回4曲の新曲を4ヶ月連続でデジタルでリリースし、4ヶ月連続でリリースパーティをするという、過去に例のない展開を仕掛けて来た。
ここ最近一気に名前を広め、ハードコア界隈の異端児として注目を集める冬蟲夏草の現在に迫るべく中心メンバーである河内(Gt)と高島(Ba)の二人に冬蟲夏草の正体について迫った。
まず昨年は冬蟲夏草とpaleとnhommeと明日の叙景で4wayスプリットをリリースして、そのスプリットは「デジタルはパンク」ってステートメントがあったけど、冬蟲夏草はそれ以前から3作品同時リリースとか型にハマらないリリース形態が多かった印象があるんだよ。
昨年の4wayのステートメントもそうだけど、フィジカルでの価値観よりも、デジタルも駆使して新曲を一早く多くの人に届けるっていうスピード感を大切にしてるのかなって思ったりもした。
河内:リリースペース的な意味ではスピード感ってのは無いとは思いますけど。
高島:フィジカルでリリースするともっと時間がかかる気はします。
だから一番届きやすいやり方で音源をリリースしているんだと思う。
それで今回、4ヶ月連続新曲リリースとなったけど、それは全部配信でのリリース?
高島:全曲配信でリリースします。それで最後に全曲まとめてフィジカルの方でリリースしようと考えてますね。
なんで新曲を1曲ずつリリースしようと思ったの?
高島:そもそもとして、みんなでバン!って感じで合わせるバンドの方が曲が出来るのが早いじゃないですか。
でも冬蟲夏草は河内が作った曲が送られて来て、それを採譜してスタジオで合わせるって形でやってるので、どうしても時間がかかる部分はあるんですよ。
だからアルバム単位でリリースするってのが中々難しいのもあるんですけど、1曲1曲が違うコンセプトで作られているのもあるので、それぞれの曲を4ヶ月連続でリリースして、それぞれの曲に合ったレコ発を4発打つって形にしました。
そういう意味ではkillieに近い美学を感じるね。killieもアルバムやEPでのリリースっていうよりも1曲をリリースするってのがここ最近のkillieの流れだと感じるし。編集盤のリリースとかあったけど。
でもkillieはその1曲に対して徹底してフィジカルやリリースに拘っているけど、リリース形態で見ると冬蟲夏草は真逆だよね。
でも冬蟲夏草って河内がアートワークとかもやっているし、だからデジタルでのリリースってのは少し意外なんだよね。
河内:意外ですかね?特にデジタルのみの配信には抵抗感とかはないです。確かにフィジカルでリリースするのであればそれはそれで拘って作りたいですけど。
冬蟲夏草のイメージって、壊れた玩具なんだよね。
カオティックハードコアで語られる事が多いけど、個人的には月盤以降のあぶらだこのカラーも色濃く感じてるんだよね。
河内:あぶらだこは大好きです。けど時期で言うと00年代以降よりも80年代の木盤とか青盤が好きです。難解さとキャッチーさがバランス良くて。
高島:でもあぶらだこを感じるって言われることは少なくて。最近は言われなくなりましたけど数年前FLATによく出てた頃ははDIR EN GREYを感じるとかよく言われましたね。
V系っぽいイメージは楽曲よりも球体人形とかピエロとかアートワークの部分から来るのかなって感じはあるね。
90年代V系のMVとか真夜中の遊園地とかピエロとかそういうモチーフのものも多いし。
高島:90年代V系ってそういう風に言われる様になって聴いたんですけど、カッコいいバンドが多いですよね。Merry Go Roundとかすごく好きです。
後は90年代V系のバンドが持っている先鋭性と冬蟲夏草の持っている先鋭性がどこかでリンクしているからなんじゃないかな?
河内:V系ぽっさはダークキャバレーと括られている音楽が好きなんでその影響ですかね?Tom Waitsとか。Mr.bungleとかSleepytime Gorilla Museumもそういう雰囲気ありますよね。
人形とか玩具は趣味で集めてるのでそういった所の影響かもしれません。