カナディアン・メタルコアの新星TIDEBRINGER初来日!募り続けた日本への想いを語る

メタルコアにニューメタルの重量感をブレンドしたサウンドで、近年注目されているNu-Metalcore。シーンにおける流れも大きくなる中、次は自分たちと登場したのが、カナダのTIDEBRINGERだ。

実は彼ら、かつてSTUTTERFLYでデビューし、その後SECRET & WHISPER、SHREDDY KRUEGERで来日したライアン・ローク(ds)を擁するバンドなのだ。加えてオリヴァー・カーター・ウェルズ(g)は日本語を勉強しており、プライベートでの来日経験もありと、日本とは何かと浅からぬ縁を持っていたりもする。

そんなTIDEBRINGERが、これまでにリリースしたシングルをまとめたアルバム『THIS IS WHERE WE GO TO DIE』を携え、6月に日本ツアーを実施。日本のバンドのサポートのもと、東名阪で計5公演を行った(残念ながら前述のライアンは家庭の事情で不参加)。以前からX(旧Twitter)のバンドアカウントから日本語でのポストを繰り返していただけに、この日本ツアーはバンドにとっても待望のものだったらしく「すぐにでも戻ってきたい」と、いまだに興奮が収まらない様子だ。

今回は来日前後にわたり、クリス・トーレセン(vo)にインタビューを実施。バンドの経歴から日本への想いまで、前のめりに伝えてくれた。

Interview by MOCHI

Special Thanks:RNR TOURS

――まずは6月に行った日本ツアーの感想を。
「日本ツアーは、夢が叶ったような感じだったよ!最初はSAILING BEFORE THE WINDに、一緒にライヴができないか相談したんだけど、彼らがRNRを紹介してくれて、ツアーの手配協力してもらえることになったんだ。正直、最初は日本の人たちは僕たちのことを知らないかもしれないし、演奏も楽しんでもらえないかもしれない…って心配もあったんだよね。でもツアー初日に、それは杞憂でしかなかったとみんなが証明してくれたんだ。いっしょに出てくれたバンドも、ツアーや会場のスタッフ全員がすごく親切にしてくれたし、僕たちを日本のシーンに仲間入りさせてくれたよ。日本のシーンは独特の雰囲気で、このジャンルはこうあるべきだ…みたいなルールに縛られていないように見えた。それぞれ違ったスタイルのバンドといっしょにやらせてもらえて、学ぶことが多かったし楽しかったよ」

――特に印象的なバンドや、驚いたバンドはいた?
「これは難しい質問だな(笑)。毎晩インパクトのあるパフォーマンスを観たし、どのバンドも素晴らしかったんだから!答えになっているかわからないけど、マジで“全部!”以外に言いようがないんだよ。家に帰ってから、一緒にやったバンドのプレイリストを作りまくっているくらい(笑)」

――メンバーのうち、オリヴァー(・カーター・ウェルズ/g)は日本語を勉強しているとか。またライアン(・ローク/ds)は過去SECRET & WHISPER、SHREDDY KRUEGERで日本に来たことがあるよね。他のメンバーは、日本にどんなイメージを持っていた?
「僕たち全員、TVとかで見ていた日本のライフスタイルや文化を、実際に体験しに行きたいとずっと思っていたよ。オリヴァーやライアンも、日本がどんなところなのか教えてくれていたし、日本ツアーを計画するときはワクワクしっぱなしだった(笑)。で、日本に来てから驚いたのが、どこもすごく清潔なこと。日本の人たちはみんなきちんとしているとは聞いていたけど、人でごった返している通りでも、葉っぱやゴミのひとつも落ちてないんだよ。それに、新幹線に乗れたのもうれしい驚きだった!車移動のときはRNRのKosukeとKaoriが運転をしてくれたおかげで、僕たちはしっかり休憩できたしね。カナダでのツアーは自分たちで運転していたから、二人には特に感謝しているよ」

――以前から日本の音楽を聴いていたそうだけど、どんなバンドをチェックしていたの?
「学生の頃からfactやCROSSFAITH、KEEP YOUR HANDs OFF MY GIRLなんかを聴いていたよ。でもカナダで日本のCDを買うのは、流通の問題ですごく難しかったんだよね。中にはオーダーしてから届くまで8か月もかかったことがあるし(笑)。もちろん今でも日本のバンドを聴いていて、PROMPTSやスプリットを出させてもらったSAILING BEFORE THE WINDなんかはすごくかっこいいと思うし、お気に入りのバンドだよ」


――そもそも、TIDEBRINGERはどのようにして始まったのか教えて。
「僕とオリヴァーは以前、SHARK INFESTED DAUGHTERSっていうバンドをやっていたんだけど、2018年に解散してね。新しいバンドで、それまでとは違うサウンドを作るためにTIDEBRINGERを結成したんだ。僕たちはジョーダン・チェイス(SECRET & WHISPER、SHREDDY KRUEGER/vo)にプロデュースを依頼して、デモを作りながらいろいろなスタイルを試していった。そのなかで、ジョーダンがライアンを紹介してくれてね。彼は当時SPIRITBOXに在籍していたし、僕たちのドラムのフレーズ作りとかをサポートしてもらっていたんだけど、結果的にSPIRITBOXを脱退して、TIDEBRINGERに正式に加入することになったんだ。ほかにも昔からの仲のケヴィン(・ムーア/b)にアートディレクションをお願いしていた流れで、そのままメンバーになってもらったというわけ」

――TIDEBRINGERのサウンドは、いわゆるNu-Metalcoreに分類されると思う。ただ、単純にNu-Metalcoreをやろうとしてスタートさせたのではなく、メンバーの受けてきた影響を楽曲に反映させたら、結果的にこのスタイルに行きついたように感じる。事実、ライアンはニューメタルから、ポスト・ハードコアやメタルコアにトレンドが移り変わる過渡期に、STUTTERFLYとしてデビューした人物だよね。TIDEBRINGERの曲を作るうえで、どんなバンドに影響を受けたのか、どんな曲をやろうと意識しているのか教えて。
「メンバーの多くはニューメタルのバンドを聴いて育ったし、影響を受けながら活動をしてきたんだ。もちろんほかにも多くの影響を受けているけれど、90 年代後半から 2000年代前半の要素が、楽曲の全体的なサウンドやニュアンスのもとになっていると思う。それらを現代的なプロダクションでアップデートして、より洗練させつつ、同時に生々しい攻撃性もしっかり反映させたものを目指しているよ。ニューメタルとは違うけれど、僕たち全員が気に入っているのはTHE AGONY SCENEの『THE DARKEST RED』(2005年)で、基本となる方向性としてはEMMUREのブルータルさと、CIRCA SURVIVEのような浮遊感のあるコーラスを融合させることなんだ。ヘヴィなサウンドのなかで、こういった組み合わせは、ほかにはなかなかないものになっていると思う」


――さっきも名前が出たジョーダン・チェイスは、アルバム『THIS IS WHERE WE GO TO DIE』においてプロデュースを務めつつ全曲で作詞やヴォーカルとしてもクレジットされているよね。珍しい事例だけど、彼はバンドにとってどんな存在だと言える?
「結成したばかりのTIDEBRINGERでは、何度もメンバーチェンジがあってね。そんななかでも、ジョーダンはいつも僕たちをそばで励ましてくれたし、問題を解決して、より良い曲を作るためにサポートしてきてくれた。だから彼が曲に参加するのはとても自然なことだったし、なんていうか…GREEN DAYにも、ずっとサポートしていて、4人目のメンバーみたいな感じで認知されている人がいるよね。そんな感じ(笑)。もし10年前だったら、ジョーダンもフルタイムのメンバーとして加入していただろうけど、TIDEBRINGERはバンドというよりも、目標を持って活動するコレクティブと言えるもので、メンバー構成の制約に縛られないようにしたいんだ」

――では同じくヴォーカルで参加しているカーティス“カーラ”ロイド(元KITSUNE/vo)も同じような存在?
「カーティスはまた違って、アルバムを完成させるのを手伝ってくれた臨時メンバーだね。曲が完成した後で、ぜひ歌ってほしいと参加をお願いしたんだ。フィーチャリングすることで、お互いのリスナーを誘導するという狙いもあったし。でも彼はあくまで臨時のメンバーだから、今後も継続して参加することはないと思う。また新しい要素を取り入れて、僕たちが持っている要素をより強調できるようなことをやっていきたいね」

――『THIS IS WHERE WE GO TO DIE』やシングルのアートワークには、血まみれの顔がフィーチャーされていて、ネガティブな感情や怒りを感じさせるよね。
「TIDEBRINGERの楽曲は、怒りを前面に出して発散させるための手段でもある。最初、ケヴィンにどんなアートワークがいいかと相談した時に、彼が別のプロジェクトで撮った写真を見せてくれてね。人間を内側から蝕むような憎しみや怒り、悪意を卑劣な形で視覚的に表現したものだと思って、採用することになった。『THIS IS WHERE WE GO TO DIE』の曲の多くは、これまで僕たちのやっていることを否定したり、僕たちに悪影響を与えた音楽界の人間に向けたものなんだ。理不尽なことに限界まで追い詰められても、自分たちを信じて進み続けること、復讐について歌われている。僕たちは諦めていないし、音楽でやり残していることがたくさんある。TIDEBRINGERで必ず名を残すつもりだし、その決意表明だと思ってほしい」

――以前、同じカナダのSILVERSTEINのシェーン・トッド(vo)にインタビューした際、「カナダは街の間がとても離れていて、ツアーをするのが大変だし、別の街のバンドとはなかなか交流がない」と言っていたんだけど、世代の違うあなたたちから見るとどう?
「カナダはすごく広い国だけど、人口密度が低いんだ。東側ならトロント、西側ならバンクーバーと大きめの都市があるし、それぞれにバンドがいるけど、真ん中の地域にはあまりバンドがいないんだよね。だからカナダをツアーするとなると、1本1本のライヴの間に7~12時間もノンストップで車移動をするのが当たり前なんだ。スタイル的にもテクニカル・デスメタルやパンクロックにはビッグなバンドがいるけど、世界中をツアーできるハードコアやメタルコアのバンドがすごく多いわけでもないと思う。経済的な負担も大きいから、たくさんツアーをするのをリスクと捉える人もいるし、国外からカナダに来たバンドも主要都市でしかライヴをやらないケースが多いしね」

――となると、ツアーだけでなくバンドを結成したり、曲を知ってもらうのも大変そうだね。
「僕たちもカナダをツアーするときは、バンドがあまりいない小さな町でもライヴをやるようにしているし、地元のシーンの成長に少しでも貢献したいとは思っているよ。それに、カナダには才能のあるアーティストがたくさんいることはしっかり言わせてほしいな。例えばCANCER BATSやCOMEBACK KID、COUNTERPARTSといったバンドがいるし、最近はライアンがいたSPIRITBOXも注目されている。僕たちの地元もすごく小さなコミュニティではあるけれど、いろいろな才能のある人が集まっているしね。ケヴィンとジョーダンは子どものころからの幼馴染で、それぞれ昔からバンドをやっていたけど、今はバンドだけじゃなく、ケヴィンはアートデザイナー、ジョーダンはプロデューサーでもある。お互いに助け合って、切磋琢磨しているよ」

――普段からX(Twitter)で日本語のポストをするだけでなく、日本ツアーでもステージで下ネタも含めた日本語でコミュニケーションをとっていたね。
「僕たちは外国人だし、せっかく日本に行けたんだから、少しでも日本語を使いたかったんだよね。みんな、僕たちがステージで言ったことを冗談だと受け止めてくれて助かったよ(笑)。今度はもっとうまくコミュニケーションの取り方を考えたいし、みんなともっと強い友情を築きたいね。実は今、次のアルバムの制作がかなり大詰めで、次の活動についてもいろいろ考えているところなんだ。いくつか日本のバンドにもコラボをお願いしているし、もっと多様性のあるサウンドと表現ができるんじゃないかな。もちろん日本にも、すぐに戻ってきたい。だからみんなにはXでたくさんポストして、日本のプロモーターがTIDEBRINGERを日本に呼ぶように説得してほしいんだ!今回会えたみんなにもまた会いたいし、新しい日本の友だちをたくさん増やしに行くよ!」

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