そして2014年。世界を揺るがす名作中の名作「Benji」が発売された。この作品には11曲含まれているのだが、その曲ごとに違った人の死が歌われている。
従兄弟の母親の死であったり、伯父さんの死であったり、テレビの向こうの有名人の死であったり。
淡々と、その死に対して感じたマーク・コズレクの心の動きが散文のように歌われている。
ほぼ、詩の朗読といっても良いのでメロディは殆ど無い。
海外版のCDを買い、歌詞カードを読んでみた。凄い。他人の死に対し、皆が思っていることを、隅々まで隠すこと無く書いている。
それが圧倒的な美しさを持って迫ってくる。
海外のピッチフォーク・メディアではその年のベスト・アルバムをほぼ独占した。英語のできる人間にはこれほどの衝撃はないであろう。
しかし、日本版はでなかった。。。
自分の母親の死に対し怯えるマーク・コズレク。「母親の愛なしでは生きていけない」と懇願する40男。
また、友達であるポスタルサーヴィスのライブにふらりと立ち寄り、彼らを観て、感じる疎外感や逆に苦しくなる気持ちを歌ったり。
これが音楽でなくてなんなんだ。
「最高!」という思いを胸に、Sun Kil Moonの来日に行った。Emo界隈のマーク・コズレク信者が集結していた(笑)
しかし、ステージにでてきたコズレクはフロアタムとバチを持って、仁王立ち。それにマイク。
横にピアニストがいる。
フロアタムをガンガン叩いて、歌う。ピアノのメロディと溶けていく。
そこへ、あの美声が。神から授かったと言っても過言ではない美声だ。
しかし、曲はあまり良くわからない。アレンジがかなり効いているのか、歌詞で判断できる程度だ。
この光景。190センチはある大男がフロアタムを棒きれで叩きながら熱唱し続ける。
異常だ。
MCで
「お前ら本当にこのアルバムが好きなのか?ピッチフォークに洗脳されてんじゃねぇのか?(笑)」
と言ってみたり。
ドラムが加わったり。最後はガットギターを持って演奏したり。
しかし、人気のある曲は一切演奏しなかった。
それが彼のやり方なんだろう。
しかし、それは私が今まで見てきた「音楽」とよべる体験すべてのなかで、もっとも充実した2時間であった。
音楽の神の領域に一番近い男。マーク・コズレク。彼はどこに行くのか。
今は自分のレーベル(おそらく)からかなり頻繁にいろいろな作品をリリースしています。