奥田民生の12コ下でラップ漬けになりたい中年B-BOYが、出会う音と言葉すべてに狂わされた2017年産日本語ラップ

ローリングクレイドル・ハシモト

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【2017年に愛聴した日本語ラップ #02】

■輪入道『左回りの時計』 (Release:2017/2/22)
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千葉が生んだ稀代のフリースタイラーによる、3年半振りとなる2ndアルバム。リアルなラップを歌うということは身を削ることであり、それにこだわるならしっかり削れ…と、聴く者の喉元に鋭利な刃を突きつけるような攻撃的な曲で覚醒させられる前半。ダークな内面をさらけ出していく序盤とは打って変わり、bpm60~90ほどのテンポで自己の弱さをも包み隠さず晒す中盤は、メッセージ性の強い内省的な曲が並ぶ。そして、情感豊かな温かみのあるリリックで聴かせる「徳之島」、肉体労働に勤しみながら表現活動への強い意思を綴った表題曲「左回りの時計」、そして先輩格である般若を彷彿とさせるエモーショナルなフローが心地良い「DANCE」では、聴く者を〈立ち止まるな もう一度 闇の中でも 生きろ〉と力強く鼓舞する。

USラッパーのように振る舞いたいがあまり、リリックの世界観までをも間借りしていた前時代のハードコアラップとは一線を画す会心作。自身が歩んできた生き様を“これでもかと削り倒す”輪入道のスタイルこそ、日本式のリアルなハードコアラップだと筆者は考える。

中身がカラッポなイキガリの類とは無縁の、昭和気質な侠気が宿っているからこそ彼が放つリックには説得力がある。私の地元でもある千葉をREPする“モノホンプレイヤー”に、幸多からんことを――。(続)

▽作品URL
http://tower.jp/item/4419307/%E5%B7%A6%E5%9B%9E%E3%82%8A%E3%81%AE%E6%99%82%E8%A8%88

▽アルバムジャケ
輪入道

▽輪入道「覚悟決めたら」LIVE@STARNITE

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