楽しいことはいつもあっという間に過ぎてしまうもので、いよいよフェスの最終日。会場までの移動も慣れてきて、乗り換えもスムーズに。この日はもちろんJAWBREAKERが最大の目的であるが、HOT WATER MUSICやCAP’N JAZZといったエモ系から、PROPHETS OF RAGEやM.I.Aなどのビッグネームも楽しみなスケジュールだ。この日は午後から雨という予報だったので、ゴアテックスのパーカを用意して会場入り。3人ともロッカーにバックパックを預ける。この日最初に観たのは、矢田君オススメのBEACH SLANG。女性ギタリストを擁する4人組ポップパンク系バンドだ。
そのサウンドはキャッチーで爽快。以前にJAWBREAKERのカバーをしていたこともあり、イーストベイ系の影響もちらほらと感じさせるが、基本はパワーポップ。ヴェルヴェットの黒いジャケットを着たヴォーカルは、ステージ上を所狭しといった感じで動き回る。RIOT STAGEに出演できたことに興奮しているのだろうが、オーディエンスの反応は冷ややかで、その熱い想いがちょっと空回りしているように思えた。
次なるアクトは、隣のROOTS STAGEで控えているHOT WATER MUSICである。ちょうどフェス直前に、エピタフ・レーベルから新譜がリリースされたばかり。実は彼らの来日公演(たぶん1999年だったような)の前座をやらせてもらったこともあるので、個人的に思い入れがある。その時、彼らとしっかり話すことができなかったことが悔やまれる。20年近くを経てステージ上に現れた彼らは、短く刈り込んだクルーカットにあごひげ、鍛えた身体にTシャツとジーンズという出で立ち。アメリカ映画に出てくるようなタフで優しい父親像を地で行く感じでもある。
一時は活動中止して、解散状態だったが2011年の復帰からコンスタントに活動を続けてきたようだ。新作は初期のようなグルーブ重視の曲から、よりシンプルな8ビート主体のパンクサウンドへとシフトしていた。いよいよ演奏が始まると、疾走感溢れるパンクナンバーを鳴らし、安定感抜群のリズム隊がオーディエンスのテンションを上げていく。ハスキーで野太いヴォーカル、アルペジオやオクターブ奏法を随所に取り入れながら絡み合うツインギターが胸に刺さる。新しさはないけれど、かといって昔のままでもない。
特にそんな思いにさせたのが、4曲目に演奏したNever Going Backである。新譜に収録されたこの曲は、ウォーウォーというコーラスを取り入れた、ポップパンクの王道とも言える小品。思わず拳を突き上げてしまい、サビで繰り返される「俺たちは後戻りしない!」というフレーズが胸を熱くする。20年以上を経て、なお走り続けるオヤジ達の姿は、どこまでも地味で泥臭いのだが、かえって清々しくも映ったからだ。さらに10曲目には、Exciterに収録された名曲Drag My Bodyをプレイ。フリートウッドマックのGo Your Own Wayを思い浮かべてしまう、力強いメロディーが絶品だ。
この日、ステージ前に詰めかけた新旧のファンは、HWMの演奏を全身で浴び、熱い想いを共有したに違いない。ほとんどMCも曲間も入れず15曲を立て続けに演奏し、全力疾走した彼らに惜しみない拍手と歓声が巻き起こる。実際、涙腺崩壊の素晴らしいパフォーマンスだった。ライブ前にはFOREVER & COUNTINGの収録曲を期待していたが、彼らにはそれらを上回る素晴らしい新曲がある。確かにあの時期のグルーヴィーな曲調も堪らないのだが、彼らは決して後戻りしないのだ。