text by Tak Hihara
Photo by Mitsuhashi
place 新宿 Hill Valley Studio
day 2016/09/25(日)
激情ハードコア&スタジオライブとの遭遇。 〜OUR YEAR WITH ILILLライブレポート〜
激情ハードコア、スタジオライブ、初めて聞くバンド。何もかもが初めてのライブ体験だった。
簡潔に言うと、新鮮、楽しい、エモい、の3拍子がそろったとても良質なライブだった。
自分にとってハードコアというジャンルは門外漢。むしろちょっとマイナスのイメージがあるようなジャンルの音楽だった。
そんな自分が、初めて行ったハードコアバンドのスタジオライブで拳を振り上げて楽しさを貪ってしまったのだ。
そんな自分が拳を振り上げて楽しんだライブは、9/25(日)に新宿のHill Valley Studioで行われた「OUR YEAR WITH ILILL」だ。
以前、LIVEAGEでもPiri Reis来日の記事で紹介したバンド「ilill(イリル)」が活動休止することに伴って行われたライブだ。
活動休止の理由は、ボーカル兼ベースのJohannes(ヨハネス)がドイツへ帰ってしまうこと。
バンドというものは本当に色々な理由で活動休止するんだなぁ。
さて、今回は「なぜ自分が初めてだらけのライブを楽しめたのか」、その理由をひもときつつ「OUR YEAR WITH ILILL」のレポートを書いて見ようと思う。
激情ハードコア初体験
最初に述べたが、正直自分にとってハードコアというジャンルはちょっとマイナスイメージがあるものだった。
今考えると、それはジャンルのせいじゃなくどちらかというと音響の問題だった。
ライブハウスでハードコアを聞くと「ボーカルが聞こえない、楽器の音が耳をつんざく」という体験が多かったのだ。
あまりにもそんな体験が多いので、一時期「もしかしてハードコアというジャンルは、ボーカルというのは聞こえないもので、ギターで耳をつんざかせて楽しむ音楽なんじゃないか?」と勘違いしてしまったほどだ(違うよね?)。
それに比べて、今回のライブはスタジオという狭い空間でのライブというせいか、音響の人が良かったのか、とても心地よく音を楽しめた。
ボーカルのシャウトはバシバシ綺麗に聞こえるし、ギターも不快な”つんざき”は全くなくて非常に快適だった。
どうやら今までの自分がハードコアのライブで聞いていた音の方が普通じゃなかったみたいだ。
またハードコアの中でも激情ハードコアというジャンルは初めてだったけど、すごく聴きやすく、ノリやすかった。
激しくもメロディアスな演奏の上に乗ったどこか物悲しさを感じさせるシャウト、ボーカルが縦横無尽に飛び跳ねるエネルギッシュさ、観客とバンドが入り乱れる一体感溢れるライブ、様々な魅力があるジャンルなんだなと感じた。
スタジオライブ初体験
次にスタジオライブというライブの形態。これも初体験だった。
単に面積が狭いような、小さめのステージがあるようなライブハウス、カフェバーのようなところで行われるライブは行ったことはあったけども、スタジオライブというのはそれとはまったく違う体験だった。
人との距離が狭い、スタンディングである、ステージが存在しない、観客がバンドを取り囲むように配置される。
一言で言えばバンドと観客を分ける境界線が極限まで存在しない。この要素が「場の一体感」を高めていた。
「君はバンド?君はお客?そんなの関係ない、君もプレイヤーだ。この場にいる人全員が一緒にライブを作る、それが僕らのスタイルだ」
そんな様な意識をその場にいる全ての人が当たり前の様に思っている。そんなふうに自分には思えた。
この様に当たり前の様にスタジオライブをやるってことはバンド、観客、お互いの信頼がないとできない。
なぜなら、あの場に一人でも「他人に危害を加えてやろう」という人がいたらあの場は成立しえない。
バンドマンに酒の場で絡まれたことに恨みを持って「刺してやる」と思っている人、スタジオに有毒ガスを撒こうとするものそんな人があの場には存在していない。そんな信頼があの場には存在している。
あんなカタチの信頼を共有するコミュニティが、ハードコアというジャンルに存在しているとは自分は思っても見なかった。
バンドライブ
さて、ここまではライブ全体の感想を述べてたけど、ここからが本題。
各バンドのレポートに移りたいと思う。
– No.1:asthenia
まずは一組目のバンド、asthenia。
メロディアスで叙情的なギターがとても印象的。
そして話す様に歌うボーカル、ためて、ためて、ためて、叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ!!(バーストって言うんだっけ?)
縦横無尽に飛んだり動き回る!
音が激しくなるとともに会場全体も盛り上がってモッシュで揉みくちゃ、揉みくちゃ、揉みくちゃ!
こう言うバンドはモッシュを含めてのエンターテイメントのバンドなんだろうなぁ。
モッシュ面白そうだけど、ちょっと腰がひける自分もいる。
一度入ってしまえば諦めがついて揉みくちゃになるのを楽しめるんだけど、入るまでのハードルが高い。
水遊びで全身がびしゃびしゃに濡れちゃえば、開き直った状態になれるのに似ているねコレ。
あと、おそらくilillのヨハネスの友達だろうけど、外人がモッシュを腕で阻んでいるのには笑えた。気持ちはわかるけどね。
– No.2:kubiak
ilillにギターがもう一本増えたバンド。ilill +1。
+1のギターの人はナイスで人の良さそうな人だった。
なんせilillに一人増えただけなので、切り替わりがちょっと分かりにくい。
ilillすら今回初めて聞く自分としては、正直イマイチ違いを把握できなかった。
しいて言えばギターが一本増えたことによって、メロディアスさが増した感じがした。
何回か聞いたりすれば違いがわかってきそうなスルメバンドなのかもしれない。
けれど、ilillのヨハネスが帰ってしまうのでそのスルメの味を味わうのも叶わなそうだ。
– No.3:ilill
トリが今回のイベントの主役、ilillだ。
真っ直ぐで温かみと力強さを兼ね備えたドイツ人ベースボーカル、ナイスで職人ぽいドラマー、純粋性の塊のようなギター、そんな三人のバンドだ。
アンセムの存在、演奏の安定性、エモさほとばしるMC、この3つが彼らの武器だろう。
ヨハネスの帰ってしまうことについてのMC、ドラムの人の語るilillの歴史、ギターの子の語るilillはコミュニティのみんなで作ってきたものだと言うこと。
曲の前や合間にMCが差し込まれ、確実に場を温めることに作用していた。
そして、締めとしてアンコールとしてバンドのアンセム。
ここで場の熱気は最高潮に達していた。
スタジオライブ、ilillのストーリー、確かなコミュニティ、そのどれが欠けてもこの日のライブの一体感は存在しなかっただろうと思う。
今回のライブタイトル通り、まさにilillというバンドはコミュニティと共にこの一年を作り上げてきたバンドなんだろう。
最後にヨハネスのドイツでの活躍を祈って、この記事を終わりにさせてもらおうと思う。
ガンバレ!ヨハネス!