LIVEAGE時代からニューメタル、DEFTONESとやってきた対談シリーズ。新作『REQUIEM』も出たし、やっぱり無視できないバンドということで、今回はKORNです。ニューメタルのオリジネイターであり、今でこそ超大物のポジションを確立しているKORNですが、振り返ってみれば、突然変異としか言いようのないバンドでした。陰気で惨めったらしかいデビューから、天下を取り成金趣味に走り、メンバーチェンジに伴う幾多の実験を経て、ヘヴィミュージックの親玉へ。音楽性を変化させながら支持層を拡大させていった様はMETALLICAとも被りますが、ここまでの大胆な変化を経てきたのは、KORNをおいてほかになかなかいないと思います。
今回はそんなKORNについて、ニューメタルの隆盛と終焉、メタルコアの勃興、そしてニューメタルコアという古いんだか新しいんだかよくわからないスタイルの登場を目の当たりにしてきた、アラフォー4人で語り合ってみました。
例によって長くなったので、前後編でお届け。前編ではKORNがどのようなバンドなのかを、改めて見つめなおしています。今回の参加者は以下の通り。
Kyohei:arbusおよびcatrinaのヴォーカル担当。GLASSJAWのダリル・パルンボ(vo)とスニーカーをこよなく愛する男。2020年のDEFTONES、2021年のニューメタルにも参加し、もはや対談常連。
Fujita:同じくarbusのギター担当。90年代メロディアスハードとTK、ニューメタルをこよなく愛する。メロハーバンドMottleでも活動中。Twitterハッシュタグ「#Numetalあるある」の創始者。
Matsuno:東京発メタルコア、PROMPTSのギターおよびリーダー。2021年にアメリカのModern Empire Musicと契約。ニューメタルTシャツコレクター。
MOCHI:年に2回くらい7弦ギターが欲しくなるが、踏み出せずにいるLIVEAGE A.D.中の人。
MOCHI「それぞれ、KORNを初めて聴いたのがいつだったか、そのときどれを聴いたのか、覚えています?」
Kyohei「俺は最初に聴いたのは『FOLLOW THE LEADER』(98年)で、小六のときだったな」
MOCHI「早熟すぎるでしょ(笑)」
Kyohei「姉ちゃんが洋楽好きだったから、教えられて俺も聴き始めたのが、小六のときだったんだよね。最初に聴いて衝撃的だったのはTHE OFFSPRINGの『AMERICANA』(98年)。その後TVで流れていたPUMAのCMで、“Freak On A Leash”が使われていたのをきっかけに知って、姉ちゃんが買ってきた。それから立て続けに出た『ISSUES』(99年)はマストだね。PUMAのCMには“Make Me Bad”も使われていたし」
Matsuno「俺は高校生にとき、ちょっと洋楽をかじりだしてまだTHE OFFSPRINGとかを聴いていたんだけど、同級生の菅原君っていう友だちが、SLIPKNOTとかBLOOD DUSTERとかといっしょに、LIMP BIZKITを貸してくれたんだよね。それを聴いて“これはなんだ!?”ってなって、次の日菅原君に話したら、“KORNっていうのもいるらしいよ”って教えてもらった。それで音楽雑誌を見たら、ちょうど『UNTOUCHABLES』(2002年)をリリースするタイミングだったから、それで聴いたって流れかな。菅原君がキーマンです(笑)。菅原君も洋楽好きな姉ちゃんがいたから、俺よりも断然詳しかったし、影響も強かったね。山形県でbraqkotoneっていうバンドをやっているんだけど」
Fujita「僕もLINKIN PARKのMDとかを貸してくれた友だちがいたんですけど、その人に『LIFE IS PEACHY』(96年)が入ったMDを貸してもらって、衝撃を受けたのが中二くらいのときですね。最初の“Twist”が意味不明な言語から始まるんですけど、それがめっちゃかっこいいなって思って、ニューメタラーになりました(笑)。こういうヴォーカルスタイルって、ほかにいないですよね。DISTURBEDとかも独特だけど」
MOCHI「僕もみんなと同じで、中学のときにやたら洋楽を聴かせてくれる友だちがいたんですけど、その友だちにもらったMDのなかに、LINKIN PARKとかが入っていたんですよね。それでハマって自分でもいろいろ探すようになったんですけど、LINKIN PARKとかLIMP BIZKITに影響を与えたKORNっていうのがいるらしい、と知って。それで『ISSUES』を聴いたはいいけど、難しくて全然わからなかった(笑)。その後高二のときに『TAKE A LOOK IN THE MIRROR』(2003年)が出たんだけど、あれは即効性があるアルバムじゃないですか。それで聴けるようになって、初期にも遡って聴いた感じでしたね」
Matsuno「たしかにあれはメタル寄りのアルバムだったし、よくわかんなくてもかっこいいと思えたよね」
Fujita「あのアルバムを最後にヘッド(g)が抜けちゃうから、オリジナルメンバーで作った最後のアルバムになったんですよね」
Kyohei「1stの『KORN』(94年)は後から遡って聴いたけど、あの時点でバンドとして完成されている感じはあるよね」
Matsuno「たしかに、音楽的にめちゃめちゃ変化していったバンドだけど、1stとそれ以降っていう区切り方でもかなり変わっていく感じがある」
MOCHI「ファンがアップしている、93年とかデビュー前のライヴ映像を見ると、ジョナサン(・デイヴィス/vo)がピッチピチのTシャツにホットパンツを履いているし、ギターの片割れ…たぶんマンキィがガスマスクをしているんですよね。明らかに自分たちでも何をやっているのかわかってない。初期のデモも曲にムダが多いというか、まだダラダラした感じだし。だから1stの時点で、ファッションも曲も大人の手が入って、プロデュースされていたんだっていうことがわかるんですよね」
Kyohei「デビューの時点でADIDASのジャージ上下を着ていたけど、あれもプロモーションの一環だったんだろうね。俺はあれに憧れて、みんながCRUとかKANIとかのジャージを着ている中、ADIDASしか着ていなかった(笑)。でもファッション面はフィールディー(b)のイメージが強いのかな。今はかなり変わったけど、昔は西海岸のギャングスタのスタイルで、みんなオーバーサイズの服にDICKIESとかADIDASが普通だったから」
MOCHI「大人の手は入っているし、わかりやすく加工されているけど、ジョナサンのトラウマとかは本物だったから、あの生々しさがあったのかなって思いますね。周りがわかりやすく、どう伝えるのかを導いたのかなって感じ」
Fujita「初期は演奏も若々しいですよね。中期以降みたいに電子音が入れずにバンドの生音だけで勝負していて、ここまでできるのかって思いました。1stだと“Ball Tongue”なんか、めちゃめちゃかっこいい。ニューメタルのバンドで、KORNみたいにツインギターで、ちゃんとアレンジが練りこまれているのって、珍しいんですよ。正直、ツインギターでも割り当てが適当だったり、ひとりでリフを弾くだけだったりっていうのが多いけど、KORNはギターのアンサンブルがすごくいいと思います」
MOCHI「KORNって、ヒップホップの取り込み方が独特だなと思っていて。ヴォーカルはなんだかんだいってほぼラップしていないじゃないですか。そういう意味ではバンドサウンドにラップを乗せるんじゃなくて、ギターやドラムにヒップホップを溶け込ませて、人力でやっているような感じがするんですよね」
Fujita「たしかにそうですよね。KORNの前進バンドのL.A.P.D.の頃は、いわゆるファンクメタルみたいな感じだったけど、ヴォーカルが変わったら化けましたね」
MOCHI「L.A.P.D.はまぁ、FAITH NO MOREのフォロワーっていう感じだよね。めちゃめちゃダサいし、あのままじゃどうにもならなかっただろうなと(笑)。でもKORNも、1stは日本も含めて、リリース時はほとんど売れてなかったっていう話もあるし」
Kyohei「まぁ1stはそうだよね。いきなりあれは理解されないと思う」
MOCHI「こう言っちゃなんだけど、あんな陰気アルバムが最初から評価されるわけがないですよね。最初はBIOHAZARDとかSICK OF IT ALLとか、ハードコア方面の前座が多かったみたいです。そこから少しずつ、MEGADETHなんかともやるようになっていったと。本人たち含め誰もバンドのことをわかってないから、対バンもそういうところにいくしかなかったんじゃないかなって感じ」
Kyohei「そこからFamily Values Tourを自分たちで主催するまでになるわけだしね。初回は98年に『FOLLOW THE LEADER』を出した後なんだけど、ICE CUBEとかRAMMSTEINとかががいて、今じゃ考えられない面子」
Matsuno「その時点でRAMMSTEINに目をつけているのがヤバすぎるでしょ(笑)。『渇望/SEHNSUCHT』(97年)は出しているけど、これからコイツらは来るぞ、と思っていたのかな」
Fujita「Family Valuesで自分たちシーンを作ったんですよね。99年にはSEVENDUSTとかFILTER、STAINDが出ているし、選ぶセンスがすごい」
Matsuno「日本と比べると、アメリカの人たちって、こういう音楽が本当に好きなんだよね。ライフスタイルに根差している感じがすごくする」
MOCHI「この一連の流れで天下を取って、影響力も大きくなっていったよね。文字通りフォロワーがどんどん増えていったし。7弦ギターもスティーヴ・ヴァイが使い始めたのをKORNが広めたっていうのが定説だけど、実際どうなのかな」
Fujita「たしかにヴァイが先駆けで、その後KORNが使うまでは、あんまりいなかったですね。超マニアックなところで、MAGNITUDE 9のロブ・ジョンソンっていう人が使っていたけど、いわゆるシュラプネル系の、80年代の遺物みたいな人だったし。だからテクニカルな方面で、本当に数人いた程度だと思います。DREAM THEATERのジョン・ペトルーシが、『AWAKE』(94年)で使っているけど、これもテクニカル系に含まれるし。そう考えると、ヘヴィさを出すために7弦を使い始めたのはKORNになると思います」
MOCHI「しかもKORNは7弦のレギュラーよりも、さらにチューニングを下げているもんね。KORNによって低音を増やしてよりヘヴィな音にする方法論が定着して、その後メタルコア~Djentでテクニカルな人も増えていったから、使う人がさらに一気に増えていった感じなのかな。今は多弦なんか当たり前だし」
Matsuno「今は単純に低い音というよりも7弦、8弦特有の音がほしいから買うギターだよね。ミュートのやり方も変わってくるし、違う楽器として捉えるべきだと思う」
Fujita「7弦と6弦どっちがいいというか、そういう論争は前からあったみたいですね。ダイムバッグ・ダレル(PANTERA)の“6弦も弾けないのに7弦を弾いているやつなんかダメだ”とか、ザック・ワイルド(BLACK LABEL SOCIETY)の“6弦でチューニングを下げればいい”っていう発言もあったし」
MOCHI「でもそれだけ影響力があったのに、オリジナル編成が崩れて以降は音楽性が変わって、迷走期って言われるようになりますよね」
Kyohei「正直、『SEE YOU ON THE OTHER SIDE』(2005年)から『THE NOTHING』(2019年)まで、全然ハマれないんだよね。ダサいとかかっこいいとかじゃなくて、耳に残らなくて」
Fujita「悪くないけど、曲を覚えられないのが多いですよね」
Matsuno「時代的に『SEE YOU ON THE OTHER SIDE』の頃はもうメタルコアとかスクリーモとかにトレンドが移っていた時期だったしね。ぶっちゃけ、俺も2007年頃なんかはKORNをまったく聴いていなかったし」
MOCHI「たしかにシーンの流れも変わっていたし、刺激的なバンドもどんどん出てきていたから、そっちのほうに興味が向いちゃうよね。KORNとしても、ヘッドが抜けて、続けてデイヴィッド(・シルヴェリア/ds)も抜けちゃったから、バンドの在り方を考え直さざるを得なかったのかも。『SEE YOU ON THE OTHER SIDE』からヘッドが復帰する『THE PARADIGM SHIFT』(2013年)までは、KORNらしさを担保しているのはジョナサンのヴォーカルだけっていう感じがするし」
Fujita「ジョナサンのソロアルバムの『BLACK LABYRINTH』(2018年)も聴いてみたんですけど、完全にニューロマンティック路線なんですよね。この人はこれがやりたいんだなって思いました」
MOCHI「メタルの人じゃないんだよね。根本的に」
Kyohei「KORNが大きく変わったのって、H.R.ギーガーに特注したマイクスタンドを使うようになってからっていう気がするんだよね。あのあたりから、ファッションの方向性も音楽性もどんどん変わっていった」
MOCHI「たしかに、初期はファッションも含めてストリートに根差した感じがあったのが、どんどん芸術性を追求していくようにはなっていきましたね。そのへんの意識の変化の象徴が、マイクスタンドと言えるかもしれないです。でも2、3年に1枚は新作を出すペースは落とさなかったし、なんだかんだ言ってトップバンドであり続けたのはすごいと思います」
Matsuno「いきなりSkrillexとかのDJをゲストにして、ダブステップを大々的に取り入れたりね。そうやって、その時代の最先端の音に反応できるのはすごいと思う。今はむしろヘヴィな路線に戻っているけど」
Kyohei「精力的なバンドだよね。作品を残したがるというか、アーティスト的な使命感が強いのかな」
というわけで前編はここまで。後編ではKORNの迷走期から現在までとその影響力、シーンについて語ります!
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