9月に入って、さすがにもう暑いのはよくないか…と思いきやまだまだですね。
これから来日が増えていくんですが、国内外でいくつかインタビューを仕込んでいます。まだ本決定していないものもあるので、しばらくお待ちください。
というわけでいってみましょう。
■STORM OF VOID『RIDE THE DRAGON』
8弦ギター×ドラムのヘヴィロック・ユニットの新EP。なんかメロスピみたいなタイトルだな…。
核となるメンバーが二人で、これまで大部分の曲をインストでリリースしてきましたが、今回はライヴでも度々ゲストとしてステージに登場していたMILKCOWのTSURU氏を迎え、全曲ヴォーカル入りで制作されています。
元々8弦ギターを用いつつも、MESHUGGAHの方法論は参考程度にとどめ、LED ZEPPELINやMELVINSの影響をエモ~ポスト・ハードコアで解釈した特異なスタイルが持ち味でしたが、TSURU氏の参加により、グラインドコア成分を大幅に注入。それもデスメタルとの境目がなくなる前の、ハードコア・パンクから進化したばかり時期に見られる殺伐とした空気が漂っています。そのせいもあってか、曲の推進力が自然とブーストされ、スピード感もアップ。そのうえで8弦ギターのレンジの広さを生かしたリフの美学は貫かれており、元々インストでもおいしい楽曲にヴォーカルが入ることで、旨味が倍増し。加えて初期の、ライヴでは絶対に再現できない作りこまれた壁のような音ではなく、削ぎ落としたシンプルな音でレコーディングされているのもポイント。ダイレクトなパンチ力に全振りした感じなのが、またいいんですよね。
パンク/ハードコアを出自に持つ人たちが、数十年かけて培ったものがバッチリ噛み合ったEPです。TSURU氏を含んだ編成でのライヴも頻繁にやっているので、機会があれば観に行くことを強くおすすめします。
■HUMANITY’S LAST BREATH『ASHEN』
スウェーデンのプログレッシヴ・メタルバンドの4作目。プログレメタルのいちスタイルとして確立されたDjentにおいて、VILDJARTAとともに「Thall」と呼ばれる一派のバンドです(メンバーも一部共通)。
MESHUGGAHからの強い影響下にあることは変わらないものの、メタルコア的なキャッチーさを持つDjentバンドが多いのに対し、彼らの場合は重苦しく、不穏で陰湿な空気感が特徴です。数えるのも嫌になる変拍子のなかで、低音の刻みとトリッキーな高音フレーズを織り交ぜて引っ掻き回しながら進む様は、無慈悲で非人間的。そのうえでDjentらしいバスドラムと弦楽器をシンクロさせたパートではデスコア的なブルータリティが強調されており、叩き潰すような破壊力抜群の仕上がりになっています。加えてオーケストレーションも大々的に取り入れて、映画やゲームのサントラにも近いスケールの大きさを演出していながら、覚えるのは開放感ではなく閉塞感。冷酷なマシーナリーさは、総大将であるMESHUGGAH以上でもあります。
これまでの作品と基本的な路線こそ変わらないものの、とにかく全要素がビルドアップ&チューンアップされたアルバムです。とっつきやすいポップさはないですが、その分プログレメタルだけでなく、ポストメタル方面が好きな人にもアピールできそう。Djentはポップなのが多くて…と敬遠している人もぜひ。こういうバンドこそ、ライヴを観たいんですけどね。
■SEVENDUST『TRUTH KILLER』
アメリカ産ニューメタルバンドの14作目。第二世代にあたるベテランながら、一度も活動休止せず、メンバーチェンジも一人が一時離脱をしていたくらいで、ほぼオリジナルメンバーでコンスタントにアルバムを出し続けてきたバンドです。
彼ら最大の特徴が、ギタリスト二人ともドラム経験を持っており、グルーヴ感へのこだわりが強いということ。複雑な変拍子を多用するわけではないですが、リズムに対するフレーズの当てはめ方が独特なんですよね。そこに黒人ヴォーカルがラップではなく、怒号込みで暑苦しく歌いあげることで、他にない筋肉質で太い音に仕上げるのが基本的な手法です。時代がニューメタルからメタルコア~スクリーモに移り変わった頃にはちょっと地味な存在になってしまいましたが、グルーヴを重視する風潮が強くなってきてから、実は時代の先をいっていたと見ることができると思います。
今回も土台は変わっておらず安心して聴ける内容なんですが、以前に比べるとヴォーカルの柔らかい歌が増えたなという印象です。もともとしっかり歌えるんですが、歌唱法をハッキリと分けることで、より音の落差を出すとともに、キャッチーさを高めることにも一役買っています。場面によっては今話題のSLEEP TOKENあたりにも通じるヘヴィさとポップさの両立を見せる場面も。バラエティこそ豊かになりましたが、最後には初期よろしくのマッチョなニューメタルでぶん殴って〆るあたり、ちゃんと自分たちの仕事をする生真面目さが見えます。
日本でももうちょっと評価されていいと思うバンドでも、かなり上位に入るんじゃないかと思います。みんな聴きましょう。
■ORBIT CULTURE『DESCENT』
スウェーデン産デスメタル・バンドの4作目。2013年結成ながら、すでに4枚目のアルバムでEPも3枚リリースしていて、だいぶ制作に意欲的ですね。スウェーデンのデスメタルといえば、ストックホルムかヨーテボリですが、彼らはどちらでもなくエークシェー出身ということもあってか、伝統を踏まえつつも本流から逸脱したバンドです。
デス~クリーンを使い分けるヴォーカルという点ではメロデス的ではありますが、LAMB OF GODやGOJIRAによって00年代前半に型が作られた、ずっしりと図太いグルーヴが基礎になっています。ところどころで見られるシンフォニックの装飾からは、EMPERORあたりの影響も感じますが、全体を通して北欧らしいクサさは控えめ。各国のモダンメタルの要素のおいしいところ取りしてバランスよくまとめ上げており、メタル好きなら思わず反応してしまう萌え要素満載という感じです。ともすれば目配せがいやらしく感じられたり、アレンジしきれず中途半端になってしまう恐れがあるやり方なんですが、アウトプットの仕方がめちゃめちゃうまくて、ちゃんと自分たちの音に昇華させています。過去作もよかったんですが、もっと露骨にGOJIRAの影響が全面に出ていたりもしたので、ここで自分たちの型をちゃんと確立したように見えますね。
意外とこれまで日本盤が出ていないんですよね。映像見る限りライヴもうまそうだし、きっかけがまだないだけで、日本でもいきなり売れたりする予感がするので、要注目ですね。
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