text by Yoshinobu Yada(LIVEAGE)
アーティスト:HOLLOW SUNS
タイトル:HOLLOW SUNS Ⅱ
レーベル:HOLLOW SUNS
発売日:2017年06月07日
1,296円(税込)
超、久々のDISC REVIEWである。
HOLLOW SUNSはNEW SCHOOLシーンから登場した、エモーショナル・ロックバンドである。
レビューを始める前に前置きを。
かつて、90年代の後期、東京のD.I.Y. emoシーンとNEW SCHOOLシーンには大きな溝があった。
当時D.I.Y. emoシーンを牽引していた、SWIPE(後のthere is a light that never goes out)はNEW SCHOOLシーンに対して、「その指先が指す方向には何もない」とNEW SCHOOLのライブのキメポーズであるフィンガーポインティングを指摘した。
その当時、私は大学生であった。SWIPEのネモジュンさんというカリスマ(当時、早稲田大学にはすごいバンドが沢山いた)に触れ、SWIPEが提示する反資本主義スタイルのD.I.Y.のスタジオライブに心酔していた。
私の通っていた法政大学も左翼運動が盛んであったため、マルクスを読み、MISSON UNDONE(ファンジン)を読むという大学生になっていた。ちなみに法政大学の学館ではENVYやSWIPEをはじめ数多くのハードコアバンドを観ることができた。
私のバンドTHIS WORLD IS MINEのドラマーのJさんはSTAIRというNEW SCHOOLバンドをかつてやっており、state craftなどとも繋がりがあった。私もstate craftやPROTECT, NUMBなどをよく観に行っていた。しかし、我々のバンドがBURST YOUR NOISE, Snuffy Smileからリリースしていくことになり、どんどんD.I.Y. emoシーンに没頭していくこととなる。(今思うと、VISON OF DISORDERやEARTH CRISIS, MERAUDER, SNAPCASE, WARZONEや当時のSICK OF IT ALL, STRIFEなど観逃しているのは悔やんでも悔みきれない)
ファンジンには海の向こうでBORN AGAINSTとSICK OF IT ALLがラジオ番組で罵倒しあった事などが書いてあった。
BORN AGAINSTの主張は「HARDCOREとは政治的なメッセージを持つべきだ」
SICK OF IT ALLの主張は「HARDCOREとはkick ass music(気合を入れる音楽)だ!」
の言い合いであった。議論はまったく噛み合わず。。。
下記がそのディベートの内容である。誰か、訳してください。。。
そう、アメリカでもNEW SCHOOL/NYHCシーンとD.I.Y. emoシーンには多きな溝があったのである。
おそらく日本でそれを壊したのはthere is a light that never goes out, bluebeard と東京のnew schoolバンドが共演したあの夜だったと思う。everlastというnew schoolバンドの企画だったと思う。が他のバンドは失念してしまった。きっかけはbluebeardなのだろうか。bluebeardはメタリックでもあったし、構築美が強い音楽でもあった。
その後、インターネットが発達し、ファンジン文化はフェイド・アウトしていった。
D.I.Y.スタジオライブのシーンもthere isの解散後、下火になった。
ちょうど、2000年の頃である。
これは悲しいことのように見えるが、インターネット上でD.I.Y. emo側、NEW SCHOOL側の人間の個性に触れるようになってくると、実はあまり変わらないバンドマンと言う事が分かってきた。ファッションや好む音楽は違うが、人間はさほど変わらないのである。
今では私は元state craftのツルイ君とtexas is the reasonのギャレットのライブを企画したり、ENDZWECKの宇宙くんとも呑むようになった。
自分の中で大きな変化があったのが、33歳になって入ったブラック企業でのことだった。役員にいきなり呼び出され「矢田さん、来月、200万いけますか? コミット(約束して実行)できますか?」といきなりWebディレクターの私に営業をしろともちかけてきたのである。
私には生後半年の子供がいたので「コミットできません」とは言えなかった。どんな手を使ってでも200万を稼がないといけなかったのだ。そうその時から、私の朝の通勤BGMはSICK OF IT ALLの”WE STAND ALONE”に変わった。
まさにkick ass musicなのであった。私はなんとか、その月に一人で300万円を売り上げ、社長賞を取り、シャンパンを呑んだ。火事場のクソ力である。
そのあたりからか、NYHCやNEW SCHOOLを掘り下げて聴くようになった。完全に90年代のNEW SCHOOLをスルーしていた自分には面白い音楽が沢山あった。それは今でも続いており、2017年のアメリカのNEW SCHOOLサウンドは最高だとおもう。解散したが、EXPIREやTRAPPED UNDER ICE, FIRST BLOOD, INCENDIARY, TERRORなんかは最高に燃えるモッシュミュージックである。
ところでLIVEAGEには大変ありがたいことに最近、色々なシーンの方からメッセージが届くようになった。
less than TVや、あのVICEからも来た。今回のようにNEW SCHOOL畑出身のHOLLOW SUNSからもだ。
もちろんemoバンドからもくる。本当に有り難いことである。
これがインターネットの強さであり、LIVEAGEがテクノロジーとデザインと哲学で実現したい事のひとつだ。
大変、前書きが長くなったがHOLLOW SUNSの2nd EPのレビューに入ろうと思う。