2025年に入って1ヵ月、ようやく去年の終盤に出た音源もチェックできたし、ライヴ初めもできたし…という感じでしょうか。とりあえず今年もすでに来日が多い(なんで11月のがもう告知されてるんだ)ので厳選せざるを得ないですが、ぼちぼち見たり取材したりしていきたいですね。
とにかく財布と相談しつつ、今月もいってみましょう。
■FRONTIERER『THE SKULL BURNED WEARING HELL LIKE A LIFE VEST AS THE NIGHT WEPT』
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UK産マスコア・バンドのEP。去年の12月リリースです。
2011年結成ながら、ここ数年で名前をよく聞くようになりましたが、その上がり調子な勢いを体現するだけの4曲が入っています。何がすごいって、全曲クッソうるさい。掴みづらいリズムや不協和音が混ぜ込まれているという点ではたしかにマスコアですが、それ以上に図太く密度の高い音が際立っており、リフの強度はNAILSあたりにも通じる、パワーヴァイオレンス的な野蛮さがあります。そこに飛び道具的なノイズを加えてかく乱する様は、CODE ORANGEやVEIN.FMなんかにも近い手触り。とにかく押し引きとかは一切考えず、やかましさと破壊力に全パラメーターが振り切られています。
とはいえ暴力的な音=考えなしの脳筋というわけではなく、どうやったら破壊力を高められるかが入念に考えられているんですよね。押し引きはなくても、何が飛び出してくるか予測不可能だし、曲そのものにも起伏はある。曲数も少ない分、これだけの情報量でも一気に聴けるとわかっているんだろうなという感じがします(逆にアルバムはもう少し余白があった)。音以上に計算高いみたいだし、課せられるハードルを越えるだけでなく、うまくかわす方法も考えてそう。当分飽きさせないバンドなんじゃないでしょうか。
■LIVEALIE『LIVING IN THE STATIC』
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元OCEANS ATE ALASKAのメンバー含む新バンドのデビュー作。これも去年の12月リリースです。本人たちはアルバムではなく「ソング・コレクション」と定義しています。
個人的にOCEANS ATE ALASKAはほぼ通っていないんですが、知り合いの勧めで聴いたらこれがよかった。スタイル的には2010年代あたりのメタルコア~ポストハードコアをベースにしつつ、現代的な音作りでブラッシュアップ。そのうえでスタッカート気味に刻むリフにはDjent以降のアプローチも感じられるし、歌メロも一時期のポスト・ハードコアにありがちだったR&B等の匂いを抑えつつも、抑揚はしっかりあります。キャリアに裏打ちされたメンバーがいるとはいえ、曲作りに隙がなくどれも粒ぞろいなんですよね。
結成から速いペースでシングルをリリースし続け、それを集めたからアルバムではなく「ソング・コレクション」としているみたいですが、たしかに単体でも映えそうな曲が並んでいます。曲ができたら出す…というのは今様のやり方だと思いますが、逆にしっかりコンセプトをもってアルバムを作ったらどうなるか、も気になります。どちらにせよ、今後にも期待です。
■THE HELO EFFECT『MARCH OF THE UNHEARD』
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スウェーデンのメロデス・バンドの2nd。
DARK TRANQUILITYと元IN FLAMESのメンバーが集まって結成、2023年の1stで伝統を踏まえたイエテボリ式のメロデスを提示して話題になりましたが、今回も同じ路線上にあるアルバムです。年齢もあってか全盛期のIN FLAMESのようなイケイケ感こそないものの、むしろ円熟味というか落ち着きを感じさせる仕上がり。その余裕さえ感じられる雰囲気やミカエル・スタンネ(vo)の声質のおかげもあって、若干ゴシック的なニュアンスが感じられるのも美味しいポイントです。ちょっとだけプログラミングを加えることで、伝統的だけどお行儀が良すぎたり古臭くならないよう、配慮も行き届いています。
THE HELO EFFECTを聴いて思うのが、やっぱりイェスパー・ストロムブラード(g)の存在感なんですよね。土着のフォーク・ミュージックやクラシックを踏まえた独特のメロディ作りはさすがで、北欧メロデスのひとつの基準のひとつになっていると改めて感じます。
11月には来日も決定済み。今回もイェスパー抜きだろうけど、会場規模も大きいのでしっかり見ておきたいですね。
■Pale『Our Hearts In Your Heaven』
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国産ポスト・ブラックメタル・バンドの1st。過去にEPをリリースしていますが、そこからメンバー交代を経てのアルバムになります。
だいぶ前にライヴを観たことがありましたが、今回のアルバムを聴いて「こんなバンドだったっけ?」というのが正直なところでした。たしかにポストブラックという点では地続きにあるけれど、めちゃめちゃテコ入れがされています。
まずもって注目したいのが、ノイズの導入です。でもただノイズが鳴っているのではなくて、曲や各パートのフレーズとの兼ね合いを意識して絡ませることで、吹雪のようなトレモロやブラストビートとともに引っ掻き回すような音像を演出。ほかにもニューウェイヴ的(というかLUNA SEA的?)な長尺曲を入れたりと、いい意味でこだわらずに典型から逸脱しつつ、統一感のある個性が確立された印象です。明日の叙景とは違う形で、ポストブラックの可能性と余地を見せています。
あと若干余談ですが、これだけいろんな要素をまとめているだけあって、曲でもアルバムでもドラマ性たっぷりなところ、同時に厳格なブラックメタルに通じる平坦さというか、淡々とした感じも残るんですよね。聴いていてものすごく不思議な気分になるんですが、ライヴだと印象が変わるのかも。どこかで確かめにいきたいです。
<LINK>
FRONTIERER:https://x.com/frontiererband
LIVEALIE:https://x.com/livealiecult
THE HALO EFFECT:https://x.com/thehaloeffectse
Pale:https://x.com/palevicarious