気付けば昨年8月分以来の月イチディスクレビュー更新です。まぁ秋から冬にかけてインタビューが2本できたのでよしとしてください。今年も来日多いですが、国内外問わず取材の機会とか持てればいいですね。
1月中盤から仕事が忙しくなってしまったせいで、聴く&書く時間がなかなか取れずなのですが(なんせ全国各地に電話をかけまくらねばならない)、その中でもこれは!と思った3枚をご紹介。もうちょっと時間の使い方をうまくしたいところです。
というわけでいってみましょう!
■DOMINATION CAMPAIGN『A STORM OF STEEL』
オーストラリア産デスメタル・バンドの2作目。PSYCROPTICのジェイソン・ぺピアット(vo,g,b)とジョー・ハーレイ(ds)による別プロジェクトです(ジョーはPSYCROPTICではギター)。
一応はオールドスクール・デスメタルとして紹介されることが多いらしく、たしかに生々しさ重視の音質含め、モダンな要素は少なめ。とはいえ昔ながらのデスメタル…とも言い切るのも語弊がある気がします。2バスを連打しても体感速度は遅く、鈍重さを押し出したサウンドはBOLT THROWERに通じつつ、クラシックなニュースクール・ハードコアを思い出させる場面も多いです。3曲目の落としパートをはじめ、ところどころ昔のINTEGRITYぽいなと感じたり。ほかにもEARTH CRISISやMERAUDER、KRUELTYあたりが好きな人には刺さるんじゃないでしょうか。
メンバー二人だけなせいか、ツアー等はやったことないようです。まぁPSYCROPTICがメインだし、あくまでプロジェクトなんですかね。マイペースで忘れた頃にリリースされて、となんだかんだ聴き続けるバンドになりそうな気がします。
■CASEY『HOW TO DISAPPEAR』
UK産メロディック/ポスト・ハードコア・バンドの3作目。2019年の解散から2022年の再結成を経てのアルバムでもあります。
解散前にリリースした2作品ではそれなりに激しいな要素が強くて、TAKENやTOUCHE AMOREあたりにも近いサウンドでもあったんですが、メンバーチェンジせず再結成した今作では大きくバランスが変化。疾走感やヘヴィさを極限まで排除し、EXPLOSION IN THE SKYやCASPIANにも通じるポストロック的な淡い音像のなかで、優しく物憂げなメロディをじっくりと歌い上げるように。それでも古参ファンがぶっ叩いているようなことがないのは、元々バンドの手の内として持っていた側面をしっかりと育て上げたことと、とにかく曲の良さ故でしょうね。とはいえハードコア由来の要素がゼロになったわけではなく、アクセントとしてスクリームが入る場面もあるし、丁寧かつ繊細ながらもにじみ出る熱量は、たしかにハードコア上がりであることを実感させます。
ポストロックに寄ったダイナミックで雄大な音を築きつつ、実験的だったりプログレ的だったりもなく、微妙なバランスをうまくついているのもポイント。ライヴで浴びると気持ちよさそうです。
■AKUTAGAWA FANCLUB『DISTORTED RAINBOW』
東京発3ピースのノイズロック・バンドのEP。去年の11月にリリースだったんですが、年末年始のバタバタでしっかり触れられてなかったなと思って聴き直したところです。
SHELLACをはじめとするアルビニ関連の、ザリザリなオルタナ~ノイズロックを根幹にしつつ、『カサノバ・スネイク』以降のTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTが持っていた、焦げ付くような音像をブースト&合体。そのうえでパブロックやガレージ的な要素とポップさをそぎ落としたサウンドが鳴っています。実はこれ、誰もやっていなかったことなんですよね。ミッシェルといえばパブロック、ガレージ、モッズの文脈ばかりが語られがちですが、それ以外の重みや淀みも同じくらい重要なピースとして存在していた(ドラムがメタルを通過しているのも有名)のに、そこに言及する人もバンドもほぼいなかった。それが令和になって、こんな音を出すバンドに出会えるとは思いませんでした。不愛想でぶっきらぼうながら、やりたいことも言いたいことも、全部音に入っていると言わんばかりの佇まいもよい。
メタルやハードコアと並行してミッシェルを聴いていた自分はこういうのが欲しかったんだなと、20年近く経ってようやく気付いたように思います。なかなか予定が合わない状況のままなんですが、必ずライヴは見たいです。
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DOMINATION CAMPAIGN:https://www.instagram.com/domination_campaign/
CASEY:https://twitter.com/bandcalledcasey
AKUTAGAWA FANCLUB:https://twitter.com/AxFxC_info