2月はEND ALL以外、これまで全然知らなかったバンドを多く聴いていたような気がします。それぞれバンドとして、もしくはメンバー個々としてキャリアがあるのでまぁ不勉強だったということでもあるんですが、どちらにせよ、いつまで経っても未知のものへの耳は開いておきたいものです。
にしても、まだ寒いのに花粉はバンバン飛んでいるってどういうことなんでしょうか。
というわけでいってみましょう。
■BIPOLAR ARCHITECTURE『METAPHYSICIZE』
ドイツ産ポスト・メタルバンドの2作目。同郷のTHE OCEANやDOWNFALL OF GAIAの後輩とも言える存在です(THE OCEANと同じPleagic Records所属)。
いわゆるポスト・メタル的なアトモスフェリックさやスケール感のあるサウンドスケープが目立ちますが、同時にガツガツしたリフを前面に押し出した、強靭なヘヴィさも十分。難解になりすぎることなく、前のめりな推進力でグイグイ引っ張り込んでいきます。バンド自身もbandcampではblackgaze、djentyとタグを付けている通り、ヴォーカルの発声や悲痛な和音の響きにはブラックメタルの匂いを、ギターとバストラムをシンクロさせつつ、変則的なリフを刻む場面にはMESHUGGAH以降のプログレメタル~Djentのエッセンスを濃厚に感じさせます。しかしアップダウンの激しい曲展開は滑らかで、アレンジがうまいんですよね。いそうでいなかった組み合わせというか、ブラックゲイズとDjentの意外な相性の良さに感心させられるアルバムです。今後要素のバランスを変える等で、作風の振れ幅を大きくすることもできそう。知名度はまだまだ低いですが、今後が楽しみですね。
■ENTERPRISE EARTH『DEATH: AN ANTHOLOGY』
アメリカ、ワシントン州出身のデスコアバンドの5作目。多くのメンバーチェンジを経つつも、ちゃんとコンスタントにアルバムを出してきたバンドですが、2022年についにオリジナルメンバーが全員脱退。バンドの細胞が新しくなっての初のアルバムでもあります。
基本的なスタイルとしては以前から変化がなく、オーケストレーションで豪奢に彩った、ブルータルなデスコア。目まぐるしい曲展開に、残虐なグロウルから清涼感のあるクリーンまで使い分けるヴォーカルと、必修科目をしっかりと押さえてあります。が、とにかくリードギターがメロい。メカニカルで無機質に刻まれるリズムと対照的に、クラシック等を通過しただろう、仰々しくてクサいメロディを弾きまくっています。ほかにもニューメタルコアよろしくなワーミーを導入したり、いきなりカントリーミュージックみたいなフレーズが飛び出したりと、手の内が多いしうまいですね。正直デスコアって疲れしやすいバンドも多いんですが、飽きずに一気に聴けます。ただメンバー刷新による意欲が先走っているというか、色々やりすぎて取っ散らかっていると感じてしまう人もいるかも。創作意欲は強いバンドだと思うので、次作で引き出しの中身を整理できたら、大きく化ける可能性がありますね。
■END ALL『GET INTO OUR RAGE』
国産スラッシュメタルバンドの新EP。15年くらいキャリアがあるバンドですが、スラッシュメタルとともにロックンロール(あとビール)を標榜するだけあって、典型的なメタルのイーヴルさや殺傷力みたいなものは希薄です。肩ひじ張らない雰囲気も魅力のひとつですね。
今回はメンバーチェンジを経て初となる音源ですが、テクニカルギタリストの加入によりできることが広がったのか、音数が一気に増え、勢いとともにサウンドそのもののキレもテンションも向上。一方で大らかに歌い上げるサビのメロディからは、FOO FIGHTERSがスラッシュメタル化したとでも言えるような、ある種の余裕とポップささえ感じられます。そのポップさをキープしながらプログレっぽい変則的な展開をかませてみたりと、RUSHを思い出させるような場面も。3ピースゆえにアンサンブルが制限されるのを逆手に取り、やり過ぎにならず、適度なすき間があって風通しがよい音に仕上がっています。
根っこはスラッシュメタルなんだけど、いい意味でこだわりがないというか、もうそこに収まっていられるレベルではなくなったことがよくわかります。メタル愛に溢れているけど原理主義ではないからこそ「逸脱」できたEP。レコ発で久しぶりに見たライヴもよかったし、これからも何かにつけて見て聴いておきたいですね。
■UPON STONE『DEAD MOTHER MOON』
アメリカのメロデスバンドの1st。STATIUSやVAMACHARA等、どちらかというとハードコア側でのキャリアのあるメンバーが集まって、2021年に結成されたバンドです。
もう100点満点のメロデスですね。結成年にリリースしたEPの時点で話題になっていたようですが、今回は大手であるCENTURY MEDIAからのリリースということもあって、一気に全国区になった感があります。とはいえザラっとした音質にわめくようなヴォーカル等と、初期IN FLAMESやAT THE GATESといったバンドの影響モロ出しのサウンドは相変わらずです。2024年のカリフォルニアから出てきたとはにわかに信じがたいほど。THE BLACK DAHLIA MURDERやDARKEST HOURといった、ほかのアメリカのメロデス志向のバンドと違うのは、やっぱり芋っぽさとメロディの叙情性(もといクサさ)ですかね。がむしゃらな勢いはハードコア的とも言えますが、メタルコア的なニュアンスにならず、むしろ音質含めた黎明期の北欧デスの匂いを再現する一助になっているのも面白いところ。変に歌を取り入れたり、ゴシック調になったりしないで、このまま音源よろしく突っ走ってほしいですね。
<LINK>
BIPOLAR ARCHITECTURE:https://twitter.com/bipolararch
ENTERPRISE EARTH:https://twitter.com/EEarthBand
END ALL:https://twitter.com/beerpatrol2022
UPON STONE:https://twitter.com/UponStone