GW前から一気に暑くなってきて、今年の夏と、来年の花粉飛散量が今から心配です。
5月、もしくは6月に今年最初になるインタビューを実施予定です(向こうが受けてくれればですが)。
というわけでいってみましょう。
■FRAIL BODY『ARTIFICIAL BANQUET』
アメリカ、イリノイ州の激情ハードコア/スクリーモ・バンドの2nd。作品そのものは2021年に完成していたものの、コロナ禍によってツアーができないほか、アートワーク制作遅延等によってリリースがずれこんだとのこと。
前作も激情というかSkramz界隈のニューカマーとして話題を集めていましたが、今回は正当進化を三段跳びくらいで果たしたようなアルバムです。濁流のようなブラストビートと痛々しいスクリームで、文字通り激情をまき散らす苛烈さは相変わらず。前作に続き、メンバーの母親の夭逝がテーマのひとつになっているらしく、聴いていて覚えるのは寂寥感や孤独感。破壊的というよりも、壊れてしまったものの破片を必死にかき集める様を見るような感覚になります。
とはいえ激昂した感情任せにはならず、メランコリックな和音の選び方をはじめ、絶妙なメロディアスさ、練り上げられた押し引きの落差激しい曲展開など、高いミュージシャンシップに裏付けられていることがわかります。5分越え、6分越えの曲も配置されていますが、ポストメタルやブラックゲイズを参考にしつつも、勢いを殺すことなくもの悲しく美麗な世界観を見せてくれます。
各所で評価が高いのも頷けるアルバムですが、テーマがテーマだけに聴くのがきついという人もいるかも。逆に言えば、そのぶん感情移入しやすいとも言えます。数年後にでかくなっている予感というか、近いうち日本に来るだろうなという気がしてなりません。
■THE GHOST INSIDE『SEARCHING FOR SOLACE』
アメリカ、ロサンゼルス産メタルコア/メロディック・ハードコアバンドの6作目。ドラマーが片足を失うほどの大事故を乗り越えた前作から4年ぶりになります。前作がバンドの復活をアピールするアルバムなら、今回は殻を破ろうという意欲を感じるアルバムです。結成から20年を迎え、前作リリース時はコロナ禍だったので、思うところもあったのかもしれないですね。
まずもって各所でいわれている通り、クリーンヴォーカルが大増量されています。これまでも作品を重ねるごとに、要素としての歌メロの出番が増えていましたが、今回はほぼデフォルトと言えるほどに導入。とはいえもともと叙情性が売りのひとつでもあったので、これまで培ってきたアイデンティティがなくなったのではなく、表現方法が変わったと言うのが正しいと思います。もちろん十八番であるギターのメロディも、ハードコアらしいタフさも健在。歌われるメロディも甘さはあれど勢いを削ぐことはなく、むしろ曲の起伏をより豊かにしています。
一方で耳を引くのが、ハードコアやメタルコアからの脱却。数曲でいわゆるオルタナ的なアプローチだったり、インダストリアル…とまでは言わないでも、プログラミングや無機質なリフなどを取り入れることで、新機軸を切り拓いています。まだ実験段階というか、板についていない感こそあるものの、数曲程度に留まっているので意外とすんなり受け入れられるし、味変には十分といったところ。
総じてやりすぎない範囲で挑戦を試みており、バランスも配慮されたアルバムだと思います。次作ではより手の内を拡張するのかが気になるところですが、いきなり大化け…とかの可能性もあるかも。出来はいいけど、バンドとしてはひとつの転換点になるかもしれないですね。
■FEEDER『BLACK/RED』
UK、ウェールズ(日本人ベーシスト含む)オルタナバンドの12作目。2枚組18曲入りのボリュームで、2022年の前作『TORPEDO』から続く三部作の第二部、第三部とのこと。前半の9曲が『BLACK』、後半の9曲が『RED』にあたるそうです。
2枚組とか三部作とか、そういった前情報で若干身構えてしまうものの、音楽性そのものは従来のFEEDERらしいアルバムです。とにかく全部「適切」なんですよね。グランジ由来のファズギターはうるさすぎず、曲はどれも起承転結がハッキリしており、優しい目線のメロディが耳にすんなり馴染む。シンセなどバンドサウンド以外の音も効果的に曲を盛り上げていて、アレンジも絶妙。初期の荒々しいサウンドはもう望むべくもないものの、ところどころでBLACK SABBATH経由のリフが見えてくるのも、近作のお約束。どこを切っても人懐こいポップさにあふれていて、どんな気分のときにもマッチする、ケチのつけようのない仕上がりです。
音楽性が劇的に変化したことはないバンドですが、お里を忘れないまま、ソングライターとして成熟していることがよくわかるんですよね。多少の変化はあれど根本は変わらず、毎回ほしいものをちゃんと届けてくれる様は、それこそSLAYERやDEFTONESに通じるものがあります。いつでも聴けるしいつまでも聴きたい、そんなバンドでありアルバムです。
ところで日本盤出ないんですかね?三部作の話とか、ちゃんとインタビューで読みたいんですが。
■ERRA『CURE』
アメリカ、アラバマ州のプログレッシヴ・メタルコア・バンドの6作目。先日の来日公演も記憶に新しいバンドです。2009年結成~2011年デビューと、Djentが世を席巻しだしたあたりに登場したバンドらしく、複雑かつテクニカルな演奏が特徴です。今回もその流れにあるのは間違いないですが、若干の意識の変化が見られます。
というのも、全体を通して音にすき間が多いというか、余裕があるんですよね。音を詰め込みまくることで、スピード感と密度を高めていくのではなく、むしろ風通しの良さを感じさせます。音作りも心なしか低音重視で、ずっしりとした重厚さを演出。そのおかげでハイトーンで歌われるクリーン・ヴォーカルもより伸びやかかつ朗々と響いており、ドラマ性も高まっています。もちろんパワフルな怒号ヴォーカルや充実のテクニックに緩みはないものの、聞かせどころというか、曲の中心に歌メロを据えた印象です。
元々叙情派Djentなどと呼ばれていただけあって、メロディ作り方も溶け込ませ方もうまかったのですが、他要素はそのままに、さらに洗練させることに成功しています。メタル耳以外にもアピールし得るメロディの充実さを誇りながら、セルアウトやいやらしさを感じさせない稀有な仕上がりを実現しています。むしろこのアルバムの曲をライヴで観たいので、また来日してほしいですね。
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FRAIL BODY:https://twitter.com/frailbodyil
THE GHOST INSIDE:https://twitter.com/theghostinside
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ERRA:https://twitter.com/Erra_Band