まだ暑い日もありますが、少しずつ秋めいてきた今日この頃。暑い盛りの8月によく聴いた音源をご紹介します。
これから大物のリリースもあるな~と思いつつ、またインタビューのほかに対談企画とかも仕込んでいきたいですね(忙しくて普段のつぶやきも減っているのがいかんともしがたい部分もありつつ…)。
■THE HALO EFFECT『DAYS OF THE LOST』
スウェーデン産、歴代IN FLAMESのメンバーが集まったメロデスバンドの1st。リリース直後にDownload Festivalで来日もしましたね。
THE メロデス。もうこれだけで話が終わるほどに「元IN FLAMESのメンバーが集まったんならやってほしいこと」が詰まったアルバムです。とはいえごく初期のようなトラッド/フォーク色は薄く、『WHORACLE』(97年)~『CLAYMAN』(2000年)あたりの音が基本になっています。そこにエレクトロニクスも適宜取り入れつつ、ところどころゴシック要素も混ざってきている感じ。ミカエル・スタンネ(vo)が歌っているせいか、アメリカ市場を意識しだした時期の要素は皆無で、適度なイモさといなたさがたまらないです。やっぱりイェスパー・ストロムブラッド(g)っていい曲を書くんですよ。相変わらず飛行機には乗れないみたいですけど。
真っ当なメロデスをやっていた頃のIN FLAMESって、デスメタルらしいブルータルさは控えめで、正統派メタルの要素を大事にしていた感じというか、メロディの取り入れ方やセンスが独特なんですよね。その独自性ゆえに、同世代でもメロデスを守っているバンドはいるものの、IN FLAMESがメロデスじゃなくなったのを惜しむ声っていまだに大きいんだと思います。コロナ禍でちょっとやってみるか的な結成だったそうですが、かつてのIN FLAMESを求める声に見事に応えたTHE HALO EFFECTにも、ぜひ続けてほしいですね。
ちなみにTHE HALO EFFECTを受けてかはわからないですが、IN FLAMESも新曲でメロデス回帰を匂わせているのも気になります。もういっしょに日本来ちゃいなよ。
■NORMA JEAN『DEATHRATTLE SING FOR ME』
アメリカ、ジョージア州のメタルコアバンドの9作目。メタルコアといっても、いわゆる北欧メロデス×ニュースクールではなく、ZAOやCOALESCEの流れを汲んだ、ねじ曲がったリフやリズムが主体で、初期は5割くらいしか演奏していないハチャメチャなライヴパフォーマンス込みで注目されていたバンドでした(ハチャメチャさはTHE CHARIOT~FEVER 333へと引き継がれていきます)。
そこからメンバーチェンジを重ねつつ、音楽性もノイズロックやポストメタル等を咀嚼。HELMETやDEFTONESのメンバーとも絡んだりと、初期の空気を残しつつ洗練と拡張をさせてきました。一時期キャッチーな歌メロを増やそうとしたこともあったんですが、変に落ち着いたりテンションが落ちたりはしてないんですよね。
今回は冒頭からスラッジ要素強めというか、ミッド~スローテンポで重苦しく、不穏にスタート。音が飽和してノイズ化することもためらわず、殺気立ったでにじり寄ってきます。ところどころで不気味なほど静かなパートや歌を混ぜつつ、悲痛で陰鬱な空気を強調しており、初期のトチ狂い方とは違ったヤバさ。タイトルにあるDeathrattleって、死前喘鳴(死に際の人の喉が鳴る呼吸音)だと思うんですが、アルバム通して非常に重いテーマがありそうです。良くも悪くも、それがバンドの目指す音とリンクしてしまっているのかもしれません。
メタルコアの黎明期から活動しているのに、ちゃんと評価されるタイミングがなかったので、ちょっとかわいそうだなと思います(それこそBRING ME THE HORIZONなんかへの影響は大)。より総合的なヘヴィミュージックとして、ちゃんと注目を浴びてほしいバンドですね。
■(hed)p.e.『CALIFAS WORLDWIDE』
まだやっとったんかお前ら!と思わずでかい声で言っちゃう、カルフォルニア産ラップコアバンドの13作目。97年デビューとニューメタル第二世代にあたり、ラップもレゲエもスラッシュメタルもハードコアも、かけ合わせた全部の要素がマジもんの技術に裏打ちされた実力派だったのに、ムーブメントの終焉とともに歴史の隅に押しやられたバンドです。一時期日本にもよく来ていたし、ライヴもかっこよかったんですけどね。
そんな彼ら、よく言えばブレず、時代に媚びることもなく(逆に言えば時代に取り残された)ラップコアをやり続けてきたんですが、今回も同じです。21曲、68分収録という長さも含め、マジで90年代からなにも変わっていない。ただ全楽曲で外部ソングライターやプロデューサーを招いているせいか、フレッシュというか、生き生きした音が戻ってきています。進化も退化もしていないんですが、バンドの外からの目線が入ることで、若返り効果があったんじゃないでしょうか。基礎体力がしっかりしている分、なにか刺激やきっかけがあるとハネますね。収録時間の長さからダレるだろうと思いきや、曲の配置も練られていて、飽きさせない作りを意識しているのもなかなかニクい。
昨今、ニューメタル要素を取り入れたメタルコアがシーンにすっかり定着した感じがありますが「そうじゃなくて俺はニューメタルが聴きたいんだ!」という人にはおすすめ。これでシーンの最前線に再び躍り出て…くることはないと思いますが、まだまだやれるんだとアピールする1枚。やっぱりこいつらは本物です。
■ALPHA WOLF & HOLDING ABSENCE『THE LOST & THE LONGING』
同じSHARPTONE RECORDSに在籍するレーベルメイトであるオーストラリアのALPHA WOLFと、UKのHOLDING ABSENCEのスプリットEP。サブスク全盛のこの時代において、スプリットという文化はまだ健在ということで、ちょっと驚きました。とはいえ、アルゴリズムによるものではない形で、人やレーベルのつながりを強調しつつバンドを紹介するという意味では、むしろスプリットという形式は重要になるのかもしれないですね。大量に入ったコンピレーションだと、聴くの疲れるし。
こちらはそれぞれ新曲を1曲ずつのほか、お互いの曲にfeatし合った2曲を収録。先攻のALPHA WOLFは、病的かつ殺伐としたニューメタルコアで凶暴に押しまくり、後攻のHOLDING ABSENCEはUKらしい叙情味のあるポスト・ハードコアでそれをいなす…と、互いに“らしい”曲を持ち込むことで、それぞれの違いがよく際立たせた内容です。featし合った共作曲では、ブルータルさと爽やかさをうまく両立させたバランスの良い仕上がり。
トータルでは、現行のメタルコア~ポスト・ハードコアのシーンを感じられる好スプリットでした。リモート環境をフル活用して、南半球と北半球のバンドが容易にfeatできるというのも、今ならではだと思います。他のバンドも追随してスプリットを作ったら、面白くなりそうですね。