開催が目前に迫った Leave them all behind 2020。これまで ISIS や SUNN O)))、GODFLESH、 CONVERGE に NEUROSIS ほか…と、地下ヘヴィロック/メタル/ハードコア・シーンの 伝説的存在を日本に呼び寄せてきた同イベントだ。その由緒あるイベントで、今年のヘッドライナーを飾るのが、CAVE IN。ISIS や CONVERGE、BOTCHらとともに、ボストンを カオティック・ハードコアの爆心地として決定付けるだけでなく、進化と深化を繰り返し、 一時期にはメジャーにも進出した、稀有な存在だ。
そんな CAVE IN を、結成メンバーであるケイラブ・スコフィールド(b,vo)の事故死とい う悲劇が襲ったのは、2018 年 3 月のこと。その強靭なベースラインと獰猛なスクリームで、 音楽性がどんなに拡大しようとも、CAVE INがヘヴィロック/ハードコアの文脈にいるこ とを示していた彼がいなくなってしまったのは、バンドにとってはもちろん、シーンにとっ ても大きすぎる痛手だった。しかし CAVE IN は諦めなかった。生前ケイラブとともにレコ ーディングしていた素材を元に、8 年ぶりとなるアルバム『FINAL TRANSMISSION』をリ リース。そしてケイラブの後任として、盟友であるネイト・ニュートン(b,vo/CONVERGEほか)を迎え、ライヴ活動も再開させた。そして、実に 14 年ぶりとなる日本ツアーにこぎ 着けたというわけだ。 この久しぶりの来日を前にして、スティーヴン・ブロッズキー(vo,g)にインタビューを慣行。バンドのこと、アルバムのこと、ケイラブのこと、そして自分たちの今後のことについ て、言葉数こそ多くないが、どの質問にも逃げることなく答えてくれた。日本公演の後も、 CAVE INという不世出のバンドが続いていくこと、そしてケイラブが安らかに眠ることを 願うばかりだ。
Text by MOCHI
――現メンバーで、すでにCAVE INとしてライヴを何本も行っているようですが、バンド の調子はどうでしょうか?
「すごくいいね。去年 1 年間の本数だけで、過去 10 年間にやってきたショウの数を超えた かもしれない。ファンにバンドを観てもらえる機会をたくさん提供できたというのは、最高の気分だよ」
――メンバーそれぞれ、CAVE IN以外にもいくつかバンドやプロジェクトをやっています が、やはりCAVE INはホームというか、ほかとは違う安心や安らぎのような感覚があるの でしょうか?
「色々な意味で、CAVE INは自分たちのホームだと感じる存在だね。JR(・コナーズ/ds)、アダム(・マクガース/g)と僕は、マサチューセッツ州のメスエンという小さな町で育って、 中学生からだから…もう 25 年以上も一緒に音楽を聴いたり、同じバンドでプレイしたりしているんだ。CAVE INは音楽そのものだけでなく、僕たちの長きに渡る友情の賜物さ。 CAVE IN結成後間もなくネイト/(・ニュートン/b,vo)とも出会っているし、そのネイトの別バンドDOOMRIDERSで、一時期 JRはドラムを担当していたことがあるんだよね。 だから、彼が今 CAVE INのメンバーでいるのもごくごく自然なことだと思う」
――2006 年頃から、CAVE INは数年間活動を休止していましたよね。復活後もスローでマ イペースな活動を続けてきた印象です。改めて、当時の活動休止や、その後活動ペースを落とした理由を教えてもらえますか?
「活動停止する数年前に、その頃に所属していたメジャーのRCAから契約を切られてしま ったことが、メンバー全員にとってある種のトラウマになってしまったんだ。だからみんなバンド第一主義ではなく、そこから意識的に離れることで、どうしてそうなってしまったの かじっくり考える時間が欲しかった。あの4 年間はバンドとして存続していくために、そしてお互いの友情をより深く感じるために、すごく大切な時間だったし、役に立ったと思う」
――2018 年のケイラブの事故死は、本当に突然で悲しいことでした。しかしバンドにとっ て、メンバーを亡くすというのは精神的なショックだけでなく、様々な面で本当に大変なこ とだったかと思います。それでもCAVE INを解散させずに続けていこうと決めたのは、どんなことが要因だったんでしょうか?
「本当に大変で…なんというか途方に暮れてしまった。でもそんな中、ケイラブの遺族や自 分たちの家族、数え切れないほどの友だちがサポートしてくれたことで、気付いたんだ。 CAVE INとして続けていくことが、ケイラブがいなくなってしまった悲しみと折り合いをつけつつ生きていく、最善のやり方なんじゃないかとね。彼と作った音楽が、遺された僕たちに癒しをくれる。それは一生変わらないんだと思う」
――ケイラブが亡くなった後、2018 年の 6 月にボストンで、10 月にロサンゼルスで「A Celebration of the Life & Art of Caleb Scofield」と題した追悼ライヴがありましたね。ISISが CELETIALという別名義で限定復活する等、大きな話題になりました。こういったことは、「CAVE IN というバンドは求められている」「解散するべきではない」と背中を押して もらったというか、奮い立つきっかけになったのではないでしょうか?
「その 2 回のベネフィット・ライヴを開催するにあたっては、たくさんの計画を立てるだ けでなく、それを実行するための力が必要だった。でもこれが、僕たちに新しい活動の在り方を教えてくれた気がする。今にして思えば、あの一連のアクションが、CAVE IN がバンドとして再び動き始めるきっかけになったんだ。僕たちの家族や友だちが、あの場で見せてくれた哀悼や感謝が、僕たちの背中を押してくれたのは間違いない」
――またその際は、CAVE IN だけでなく、OLD MAN GLOOM や ZOZOBRA といった、 ケイラブが関わっていたプロジェクトの曲も披露していましたよね。ケイラブが書いた曲を演奏することで、彼へのトリビュートとなるだけでなく、彼がどんな思いで作曲をしたの か、彼がどんなミュージシャンで、どんな特徴や癖を持っていたのか、改めてわかったことがたくさんあったのではないでしょうか?
「ケイラブは、本当に才能にあふれたミュージシャンだったよ。それが最もよくわかるのは、 CAVE INで“Sing My Loves”(2011 年の『WHITE SILENCE』収録)を書いた時のエピソ ードじゃないかな。まずケイラブは、メンバー全員が“これだ!”と思えるリフやアイデアを 持ち込んでくれたんだ。さらに歌詞を書き始めた段階で、僕がメロディのアイデアをハミン グしたら、すぐに曲の鍵になるコーラスを考えついて歌ってくれたよ。“Sing My Loves”は CAVE IN史上でベストな曲のひとつだとメンバー間で意見が一致しているけれど、ケイラブはいとも簡単にあれを生み出してくれたからね」
――ケイラブの後任として、CONVERGEのネイトが加わりましたね。スティーヴンも一 時期 CONVERGEに在籍していたし、ケイラブとネイトは OLD MAN GLOOMでの活動 もあったりと親交の深い存在だし、納得のいく人選です。しかし彼も CONVERGEのほか に DOOMRIDERS等、別の活動で忙しい身かと思います。彼の加入は、どんな経緯で決ま ったのでしょうか?
「ロサンゼルスでのベネフィット・ライヴの直後、みんなでネイトの家に集まって、アコー スティック・ギターでジャムりながら楽しんでいたんだ。僕とアダム、JRの3 人で“今こそ ネイトに頼むべき瞬間だ“と考えが一致したから、その場で聞いてみたんだけど、彼は即答 で OKしてくれたよ」
――またネイトの加入によってバンドに起こった変化や、新しく加わったことがあれば教えてください。
「バンドの雰囲気は最高さ。さっきも話した通り、ネイトのことはずっと前から知っている親友だし、何度も一緒にプレイしたりツアーしていたからね。僕らと同じ目線で、色々なこ とに取り組んでくれるアティチュードが最高だし、ソングライターとしてもヴォーカリス トとしても申し分ない。彼を CAVE IN に迎え入れられて、本当にラッキーだよ」
――昨年リリースした最新作『FINAL TRANSMISSION』は、2018年2月に秘密裏に行わ れていたレコーディングでの素材を元に作り上げたそうですね。CAVE IN として久しぶりに制作を行うことになったのは、どんなきっかけがあったのでしょうか?
「制作時期については、その通り。ただ“LedToTheWolves” と“LunarDay”は、それぞれ2011 年と 2014 年に録音したものなんだ。それ以外の曲は文字通りスムーズに書けて…そ れぞれが持ち寄ったベーシックなアイデアを、自分たちのリハーサル・スタジオで、たった 4 日間でまとめてね。僕たちはいつだってきちんとしたレコーディング・スタジオでアルバ ムをレコーディングしてきたし、今回も元々はそうする予定だったんだけれど、ケイラブが 亡くなってしまったから、予定を変えることにした。今回の曲は、僕たちだけでスタジオに 入ってレコーディングするよりも、ケイラブが僕らと一緒に最後に遺したものをそのまま 出す方が重要なんじゃないかと思えたから、そのまま採用したよ」
――『FINAL TRANSMISSION』はアコースティック・ギターのシンプルな曲あり、スペ ーシーでサイケデリックな曲あり、図太いヘヴィロックありと多彩ながら、アルバム全体を 通して雄大なメロディが際立った作品だと思いました。レーベルの資料によれば、ケイラブ がイニシアチブを握っていたそうですが、彼はどんな方向性を考えていたんでしょうか?
「ケイラブのアイデアは、“スペーシーかつヘヴィで、CAVE IN以外ほかに誰も持ち合わせ ていないスタイルを基軸に進めていこう”というものだった。それに加えて“フックのあるメ ロディを磨いていこう”とも言っていたよ。CAVE INとして有効な、力強いステートメント足り得る音楽を書いていくという信念を、彼は持っていたんじゃないかな」
――ケイラブの件を経て、3 人で制作に取りかかってから、リリースを迎えるまでの経緯を 教えてください。
「ボストンでのベネフィット・ライヴの直後から、ケイラブと一緒に録ったデモを改めて集 めて、ほんの少しだけ手を加えていった。その最中に彼が“All Illusion”用に書き留めていた 歌詞を見つけたから、それも採用してヴォーカルを入れ直したんだよ。素材が揃ったところ で、ミックスを手掛けたいと手を挙げてくれた友だちのアンドリュー・シュナイダーに渡して、仕上げてもらってね。作品が完成したタイミングで Hydra HeadとDaymare recordingsがリリースを手伝ってくれることになったんだ。この一連の流れを経て、プロジェクトがき ちんと形になったというわけさ」
――個人的に、CAVE IN の特徴や魅力は「ポピュラリティ」「実験性」「ハードコア由来の ヘヴィさ」のバランスだと思います。その魅力は 2ndの『JUPITER』で大きく開花したと 思いますが、やはり同郷で比較されることも多い CONVERGEや ISISといったバンドとの 差別化や、より広い世界に飛び出そうという意欲からくるものだったのでしょうか?
「『JUPITER』は僕、アダム、ケイラブ、JRの 4 人で曲を書いた、最初のアルバムなんだ。 遂に完璧にバンドの体制が整ったと悟ってからは、制作のプロセスは全て思い通りに進め られるようになった。力強くもあったし、クリエイティヴさを追求するために未知のドアを 開けるのも、まったく怖くなくなったよ」
――今後も CAVE IN としての活動は続けていくとのことですが、また曲を作り、アルバム を作りたいという思いはありますか?今はとりあえずライヴを重ねて、後のことは改めて 考えてみる、というところでしょうか?
「新曲を書こうとは、メンバー間でずっと話しているんだ。バンドとして、すごく健全なことだよね。ネイトが加入したことでどんな曲ができあがるのか、新しいアルバムがどんな作風になるか、考えるだけで楽しみだし燃えてくるよ。彼は過去 20 年間に渡って、僕が気に 入っている音楽を書き続けてきたバンドの一員でもあるんだからね」
――OLD MAN GLOOMや MUTOID MANとして日本に来ていたとはいえ、この 2 月の CAVE INの日本でのライヴは 2006年以来となりますね。スティーヴンとネイトは OLD MAN GLOOMでもステージに立つので、かなり大変かと思いますが…。当日はどんなステージになりそうでしょうか?
「CAVE IN はやっと日本に戻れることを喜んでいると、メンバー全員を代表して日本のみ んなに伝えたい。まぁ、たしかに OLD MAN GLOOMと CAVE INをかけもちでライヴを やるは大変でせわしないけれど(笑)、それはそれで最高だよね。ライヴも、人としての体験 も、絶対に素晴らしいものになると確信しているよ!」
<Link>
facebook:https://www.facebook.com/CaveIn.Official/
twitter:https://twitter.com/cave_in_boston
bandcamp:https://cavein.bandcamp.com/
Daymare recordings:http://www.daymarerecordings.com/
Hydra Head Records:http://www.hydrahead.com/
<公演情報>
-leave them all behind 2020-
●2/1 (土) 下北沢 GARDEN
CAVE IN / OLD MAN GLOOM / GREENMACHiNE / ENDON / OTUS
●2/2 (日) 恵比寿 LIQUIDROOM
CAVE IN / POWER TRIP / CRYSTAL LAKE / SECOND TO NONE / KRUELTY -extra shows-
●1/31 (金)大阪:心斎橋 Live House ANIMA
CAVE IN / OLD MAN GLOOM
●2/3 (月)東京 : 新代田 Fever
OLD MAN GLOOM / FRIENDSHIP / WEST TOKYO PANIC SYNDICATE