Beach Slang “The Things We Do To Find People Who Feel Like Us”

そして、バンドは90年代のEMOを語る上で外せないレーベル “Polyvinyl”と契約しバンドは破竹の勢いで大きくなっていった。
エージェントもついているし、大きなフェスのフライヤーでは名だたるバンドと同じフォントサイズで表示される。

今作”The Things We Do To Find People Who Feel Like Us”は前のEPとサウンドをかなり変えてきた。
シューゲイザーの要素が強くなっている。そして逆にPUNKの荒っぽさも強くなっている。これは今までにない新しいサウンドの誕生と言ってもいいだろう。
そして歌詞だが、これは是非、日本盤を買って確認してほしい。
James Alexの歌詞は強烈だ。刹那的で焦燥感が強くビートニク的であり、若いエネルギーに満ちている。

James Alexは40代前半だと思われ、彼には一人息子と美人の奥さんがいる。
しかし、この歌詞。
10代の若者が書いたようなエネルギーに満ちている。が、よく読むと、40代の男性にしか出せない俯瞰した知的さも同居している。

このアルバムは歌詞のほうがサウンドより重要なように私は感じる。
40代男性が感じている焦燥感。もう二度目はない焦り。ステージで燃え尽きることへの憧れ。

前の二枚のEPでみせた流麗なメロディは影をひそめ、荒っぽいエネルギーとギターのフィードバックがアルバムを支配している。最初聴いたときはメロディがわかり辛く、がっかりしたが、歌詞を読むと納得した。彼はこのバンドと燃え尽きることを望んでいる。

まずは二枚のEPを手に入れて欲しい。デジタルでもかまわない。そして、このアルバムを聴いて欲しい。今、アメリカでもっとも注目されているバンドである意味がわかるはずだ。

Beach Slangは、また音楽愛に満ちたバンドだ。全曲Jawbreakerのカバーのライブをやったり、全曲The Replacementsのカバーのライブをやっている。
また、カバー集もだしており、そこではSenseless ThingsやThe Psychedelic Fursのカバーなどを披露している。イギリスのバンドへのリスペクトが強いのも特徴だ。

とにかく、今のアメリカのEMO/インディーギターロックバンドではもっとも勢いのあるバンドといって間違いないであろう。
それが40代前半のおっさんがコントロールしている。それはノスタルジーではなく破壊だ。

PS.
このレビューを書いている最中に2ndアルバムのリリースが9月23日に決定されたとアナウンスされた。1stから約1年で2ndアルバムとは。。先行で聴けるサウンドはリプレイスメンツタイプのロックンロールだ。彼らはこの波を逃さない気だろう。

最後にこの動画を観て欲しい。この動画にすべては詰まっている。

レコードレーベル:Polyvinyl/US
カタログNo:PRC-305
リリース日:2015/10/30

日本盤
レコードレーベル:Moorworks/JAPAN
カタログNo:MWDC-189
リリース日:2015/10/28

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