結成30周年を迎え、さらなる進化に挑むAFI、ゴス/ニューウェイヴに振り切った渾身の新作『BODIES』リリース!

今年、活動開始から30周年を迎えたAFI。初期はストレートエッジを標榜し、ハードコアにゴスやホラーパンクの要素を取り入れたサウンドで異彩を放ったが、その後エモ~オルタナの要素を取り入れることでファン層と知名度を拡大してきたので、世代によって持たれる印象がかなり変わってくるバンドではないだろうか。そんな彼らが先日リリースした新作『BODIES』は、近年傾倒していたニューウェイヴやポストパンク方面に照準を定めた作品となった。THE SMASHING PUMPKINSのビリー・コーガン(vo,g)も一部で作曲に参加する等、バンド外のアイデアも取り入れた意欲作と言える。 今回はギターのみならず、キーボードやプログラミングも操り、ソングライターとしてバンドを引っ張るジェイド・ピュージェットにインタビュー。バンドのこれまでの歴史と、30年を経てたどり着いた新作について語ってもらった。

Interview by MOCHI

Translation by Sachiko Yasue

――AFIは2021年で結成から30周年を迎えました。音楽的には多くの変遷がありましたが、振り返ってみると、どんな30年だったと言えますか。
「バンド活動はもちろん、ビジネス面でもすごく荒れた道のりだったというか、いろいろなことがあったよ。音楽的に考えても、予想外のことばかり起こる旅のような感じだったし、これからどんなことが待っているんだろうって思うね」

――その30周年というとても大きな節目が、新型コロナウィルスのパンデミックに見舞われてしまったのは残念だったと思います。アメリカではワクチン接種も進んでいるようですが、今回の新作の制作等に影響はありませんでしたか?
「ぶっちゃけ、新作の制作そのものはコロナのパンデミックや、それに伴うロックダウンの前に終わらせていたんだ。だからアルバムにはコロナに関することは影響していない。でも間違いなく、ほかの色々な面においてバンドに影響しているとは思うけどね。生活もそうだし、プロモーション面でも以前と同じようなことはできなくなったわけだから」

――AFIはもともとはストレートなパンクロックから始まって、音楽性を大きく変化させてきた経緯があります。ストレートエッジも実践していましたよね。SICK OFIT ALLやTHE DISTILLERSとともに日本ツアーをしたこともありますし、パンクロックやハードコアの畑から出てきたバンドであることは間違いないですよね。現在のAFIはもはやパンクではくくれない音楽性ではありますが、自分たちのキャリア初期、そして当時属していたシーンについて、今ではどう感じていますか?
「僕たちは4人とも、パンクロックやハードコアへの愛を忘れてはいないよ。AFIのキャリアにおける大切な一部分だし、僕たちの音楽のそこかしこに影響を与え続けているのは間違いない。とはいえ、30年も同じような音楽をやり続けていても、アーティストとして充実感はどうしても薄くなっていってしまうよね。だからこそ、僕たちは新しい方向に進化し続けることを選んだんだ」

――音楽性の変化について、たとえば『SING THE SORROW』(2003年)や『DECEMBERUNDERGROUND』(2006年)はポスト・ハードコアやエモ、オルタナティブ・ロック寄りのサウンドでしたよね。それらは元々ハードコア・パンクから派生しつつ、ニューウェイヴやポスト・パンクの影響も受けながら生まれた音楽です。AFIのキャリアにおける音楽性は「一貫はしていなくても、すべて繋がっている」と言えるのではないでしょうか?
「君の言うとおりだね。AFIの30年前、20年前、10年前、そして新作も、すべての音楽はひとつの線の上で繋がっているんだ。特にパンク、ニューウェイヴといった、僕たちの音楽の基盤になっているものは、80年代にはある程度形成されていたものだしね。その歴史から連なっているものなんだ」

――前作『AFI』(2017年)ではまだパンクロック的なエッジが残っていましたが、新作では“No Eyes”以外、そういった要素が払拭された印象です。どれもディストーションをかけてコードをかき鳴らすだけではできない繊細な表現が要求されたと思いますが、作曲やレコーディングはどうでしたか?
「作曲は、これまでのアルバムと同じように僕とデイヴィー(・ハヴォック/vo)が同じ部屋で座って、顔を突き合わせてスタートしたんだ。その後、全体の大まかなアイデアをもとに、曲ごとの世界観を作り上げていった。だから、新作の曲はとても多様性があると思う。やろうとすれば、全曲同じようなオルナタティヴ・ロックに仕上げることだってできたと思うけど、それじゃあ面白くもなんともないしね(笑)」

――新作では1曲目“Twisted Tongue”から、繊細ながら力強さとダイナミズムを感じる楽曲ですね。固いドラムの音や前のめりな勢いなどから、やはりハードコアあがりのバンドなんだと思いました。ただ単にニューウェイヴやゴスをノスタルジックにプレイするのではなく、ハードコアから出発したバンドならではのニュアンスによって、よりダイナミックなものにするというのは、意識にあったのでは?
「僕たちは、すでに存在するハードコアやニューウェイヴの真似事をするつもりはさらさらなかった。どうすれば自分たちならではのカラーを加えることができるのかに挑戦することこそ、バンドで作曲をする醍醐味だよ。世の中の人たちが何百万回も聞いてきた音楽から影響を受けつつ、自分たちだけのユニークなものを作るにはどうしたらいいのかには、最も力を注いだね」

――“Dulceria”と“Far Too Near”は、THE SMASHING PUMPKINSのビリー・コーガンとの共作だそうですね。彼もキャリアにおいてニューウェイヴからの影響を強く打ち出してきたので、なるほどと思える人選でした。しかしこれまでの活動フィールドも違ったと思うので、彼と組むことになった経緯や、共作をしてみての感想を教えてください。
「実は僕は、ビリーとは別のプロジェクトで一緒に曲を書いたことがあるんだ。そのときはものすごく楽しかったし、クリエイティヴで刺激的な体験ができたんだよね。実は新作の制作が終わりに近づいたとき“ビリーといっしょにAFIの曲を書いてみたらどうか”って、僕からデイヴィーに提案してみたんだ。というのも、僕たちだけでもすごくいい感じの曲のパーツはできていなけど、ちょっと不自然というか、ちぐはぐになっていて、ちゃんと繋がり合っていないような感じがしていたんだよね。それでビリーといっしょにそのパーツを調整したり入れ替えたり、いろんなアレンジをして“Dulceria”ができあがったんだ」

――新作の作風は、これまで数作かけて練り上げてきた方向性の、ひとつの到達点だと思います。今からそんな話をされても…という感じかもしれませんが、今後の作品では、新作の方向性をより突き詰めていくことになりそうですか?それとも、また新しい方向を模索したり、逆に今だからこそ原点回帰してみようとか、やってみたいことはありますか?
「実は去年は、新作のリリースを待たずに、そのまた次の新しい作品の作業に費やしたんだ。この次に出す作品は、新作はもちろん、これまでのAFIのどの作品ともまた違った方向性になると思う。僕たちは原点回帰とかはしたくないし、2022年にもなって『ANSWER THAT AND STAY FASHONABLE』(1995年)みたいなアルバムを出すのも、おかしいと思うんだ(笑)」

――2022年の2月から、ツアーの日程が発表されています。新作はビジュアル面も含めて、かなりこだわった作りこみがなされていますが、ステージでの演出などは考えていますか?また、初期~中期にかけてのパンク路線や、中期のオルタナ~エモ路線の楽曲は、どのように配置するのでしょうか?
「まだツアーでどんな感じの視覚効果を取り入れようかは、全然決められていないんだ。セットリストについても、僕たちのこれまでのアルバムのいろんな曲を違和感なくまとめるとなると、ものすごく難しくなるんじゃないかな。とはいえ、なんとかいい感じにする方法を考えてもいるよ」

――日本でも、そのツアーの仕掛け等が観られる日が早く来るといいのですが…
「僕たちも日本が恋しいよ!渡航費がこんなに高くなければ、いつだって飛んで行きたいさ。日本では思い出深いことがたくさんあったからね。2001年にSICK OF IT ALLと日本をツアーしたとき、ニューヨークで起こった9.11の同時多発テロを、ホテルのTVで知ったんだ。あのときはものすごくショックだった。ほかにも2003年にサマーソニックに出たときは、ライヴの途中で僕のギターが吹っ飛んで、壊れちゃったんだよね(笑)。その日のヘッドライナーがRADIOHEADで、あのとんでもないセットのライヴが見られたのも懐かしいよ。ほかにも、何千人ものお客さんの前で、氷室京介といっしょに“Miss Murder”もやったし(2009年)…だから、長いこと日本に行けていないことを、みんなに謝りたい。また日本に行けるように頑張るから、近い将来会おう!」

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