明けました。というわけで2025年最初の記事は恒例、年間ベストアルバムです。今回もパッと思いついた10枚をまとめてみました。
選出にあたり、勝手に定めたレギュレーションは以下の3点。基本的には昨年と同じですがプラスアルファしています。
・2023年12月~2024年11月にリリースされたアルバムを選出しています(年末付近にリリースされたアルバムは聴ける回数が少なくなり、明らかにフェアでないため)
・月イチのレビューで取り上げたかは問いません(インタビュー等でレビューができないタイミングだったケースもあるため)
・音源リリースに伴ってインタビューをしたかどうかも問いません
・選出したアルバム内でランク付けはしていません。思いついたもしくは書き出した順番です
各作品の話の後、2ページ目にちょろっと振り返りみたいな雑記を書きましたが、特に大切なことは含まれてないので、別に読まなくても大丈夫ですw
というわけでいってみましょう。
■IMMINENCE『THE BLACK』
スウェーデンのメタルコアバンドの5作目。過去作はヴォーカリストがバイオリンも弾くという面白みはあれど、まぁモダンなメタルコアだな…くらいの印象でしたが、今回はもともとあった憂いのある音が格段に暗く、重苦しいものに変化。全編でバイオリンが優美な格式を付与しつつも、安易にゴシック的アプローチを取らないのも特徴で、メタルコアの攻撃性を残しつつ、感触的にはポスト・メタル的なスタイルに近づいています。乱暴に言ってしまえばARCHITECTSとTHE OCEANのいいとこ取りな感じですが、どっちつかずにならず高次元で成立させた、意外と比類する作品がないアルバムでした。
■G-FREAK FACTORY『HAZE』
出身地である群馬を背負い続けるバンドの9作目。レゲエ×ハードコア・パンクを出発点にしながらも、キャリアとともにジャズやブルース他と雑多に飲み込んで音楽性を拡張させていましたが、今作は大らかで味わい深く、それでいて緩みを見せないという、ここ数作で示していたスタイルの集大成といったところ。ドラマー交代を経てリズム面をさらに強化しつつ、打ち込みを含めた各パートの絡みや歌のメロディも抜かりなく練り上げており、改めて曲作りのセンスとテクニックを感じさせます。どこまでも優しくも、今でも聴くたびに背筋を正される気がするアルバムです。
■ULCERATE『CUTTING THE THROAT OF GOD』
ニュージーランドのプログレシヴ/アヴァンギャルド・メタルバンドの7作目。入り組んだリズムとねじ曲がった不協和音を何層にも絡ませた、禍々しく重苦しいスタイルは相変わらず…どころかさらに磨きがかかっており、最初は「すごいのはわかるが…」という感じだったのが正直なところ。でも何度も聴くうちに少しずつ耳が追い付いていくような感覚で、淀みつつも繊細で美しいメロディや細かいアレンジほか、いくらでも発見がある作品でした。「微に入り細を穿つ」「神は細部に宿る」とはまさにこのことでしょう。どうしてもサブスクの恩恵で数を求めがちななか「1枚を繰り返し聴くことで理解を深めていく」を、じっくりやれた気がします。
■SYLOSIS『THE PATH』
UK産エクストリーム・メタルバンドのEP。2023年にアルバムを出していた(それもベストに入れてました)のに、ツアーもやりながら1年程度でこのEPをリリースと、だいぶ勢いに乗っていることがわかります。内容としてはアルバムの延長線上で、PANTERA以降のグルーヴをEU、USを問わない各地のスラッシュ~初期デスメタルのブルータルさでビルドアップ。ハードコアは参考程度にとどめ、甘さにつながる要素を排除することで、勇壮かつ強靭な音に仕上げています。定評あるテクニックもいかんなく詰め込みながらも、こねくり回さず潔さを感じさせるアレンジも好印象。トレンドではないぶん、時代を越えて愛されるEPになるかもですね。
■spike shoes『OWN』
日本は仙台のパンクバンドの7作目。レゲエ×ハードコア・パンクという意味では、同じくベストに選んだG-FREAK FACTORYと通じる部分がありながら、spike shoesはよりハードコアにこだわることで、レイドバックせず苛烈さをキープしているのが大きな違いですね。場面によってクラストや激情を思わせるパートを挿入することで、ヒリついた切迫感とドラマ性を際立たせており、ひとクセもふたクセもある独自の世界観を演出。30年超のキャリアを誇りつつも、アップデートすべきところとすべきでないところをしっかり見極めた、いい意味でベテランらしさを感じさせない1枚です。
■JUTES『SLEEPYHEAD』
カナダのソングライターによる(おそらく)3枚目のアルバム。エモラップ界隈から登場しつつ、オルタナ/グランジに寄った曲をリリースしてきた完成形として、DEFTONESの影響色濃いニューメタル作となりました。ただヒップホップらしく各サウンドを素材として割り切ることで、メタルコアのような熱量を抑えた、淡々とした作風になっているのが特徴です。DEFTONESのヘヴィな側面だけでなく、DJやサンプリング等による空気感作りにも重きを置くというは、メタルコアやハードコア界隈にはなかった視点。DEFTONESの影響力が再評価されるようになってしばらく経ちますが、次の段階への布石になるかもしれないですね。
■IN FOR THE KILL『Branded To Kill』
日本のエクストリーム・メタルバンドの2作目。スラッシュメタルをさらに研ぎ澄ませた切れ味にPANTERA経由の肉厚グルーヴを搭載した、とにかく聴いていて爽快なアルバムでした。「速さ」にこだわりつつも、ただ速さに頼るだけではなく、持ち前の演奏力で各音の粒立ちをハッキリさせつつ、展開や微妙なテンポチェンジで、実際のBMP以上の体感速度と殺傷力が強調されています。ヴォーカルも四方八方に無差別にケンカを売るのではなく、矛先が明確になっているので、超怒っていることがわかるけれど、ポジティブなエネルギーを感じさせる仕上がり。とりあえずメタル好きなら聴くだけ得な、海外のトップバンドにも引けを取らない1枚でした。
■J MASCIS『WHAT DO WE DO NOW』
DINOSAUR JR.のJ・マスシス(vo,g)のソロ4枚目。正直DINOSAUR JR.もJのソロも波長が合ったことがなかったんですが、なんかこれはやたらと響きました。何がよいって、アコースティックギターを基軸に作っただけある牧歌的な雰囲気に包まれており、メロディもポップで柔らか。あれこれ言葉を並べて評論っぽいことをするのがアホらしくなるほどです。特にこれまでと作風に違いがあるわけじゃないんですけどね。ファズでひしゃげつつも弾きまくりなギターソロ含め、どこを切っても優しさが染みてきます。どんなテンションのときにも聴けるというか、いつだって聴きたいアルバムがまた1枚増えました。これをきっかけに、長らく距離を取っていたDINOSAUR JR.にもハマれるかも。
■NIGHT VERSES『EVERY SOUND HAS A COLOR IN THE VALLEY OF NIGHT』
アメリカのポスト・ハードコアバンドのアルバム。2年連続でリリースした前後編のアルバムを1枚にまとめたものになります。数曲でゲストヴォーカルを招いている以外は基本的にインストで、細かなフレーズを飛ばすプログレをマスロック~ポスト・ハードコアに融合させつつ、メタリックな質感で固めた質感。同時に幻想的で、たゆたうような空気感もたっぷりで、全体のボリュームのわりに疲れず何度も聴けました。CAVE INなんかもそうですが、豊かなバックグラウンドからくる多彩な手の内を、出し惜しみせず&違和感なく見せてくれるバンドにはいつも嬉しくさせられます。
■FEEDER『BLACK/RED』
UK産オルタナバンドの12作目。いつも安心のFEEDER節が、2枚組分18曲堪能できます。人懐こいメロディを主軸に、速すぎず遅すぎず、うるさすぎず静かすぎず、ポップだけど重心が安定しておりブレは皆無。シンセ等バンド外の音の取り入れ方もうまく、どの曲もきれいにまとまっています。ポピュラリティの高い普遍的なロックという意味ではFOO GIGHTERSにも引けを取らないものの、なんだかんだハードコア出身らしい武骨さのあるFOO GIGHTERSに対し、FEEDERってもう少し文系で素朴なんですよね。かといって陰キャでもなく、バランス感覚に優れているので、何を聴こうか迷ったら選ぶのがFEEDER。これからもお世話になります。
<LINK>
IMMINENCE:https://imminenceswe.com/
G-FREAK FACTORY:https://g-freakfactory.com/
ULCERATE:https://www.ulcerate-official.com/
SYLOSIS:https://www.sylosis-band.com/
spike shoes:https://spikeshoes.net/
JUTES:https://linktr.ee/jutesmusic
IN FOR THE KILL:https://www.iftkjp.com/
J MASCIS:https://www.jmascis.com/
NIGHT VERSES:https://nightverses.com/
FEEDER:https://feederweb.com/